ジョコビッチのグランドスラム連勝はパリでストップ、決勝はティーム対ナダルに [フレンチ・オープン]
今年ふたつ目のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月26日~6月9日/クレーコート)の男子シングルス準決勝で、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)のグランドスラム大会連勝記録が「26」で終りを告げた。
それは彼が奇妙な戦略を選んだからでもあり、荒れた天候が彼を邪魔したからでもあり、主審が彼をいらだたせたからでもあった。
しかしながらそのほとんどは、第4シードのドミニク・ティーム(オーストリア)がジョコビッチ自身の商標でもある『ディフェンスから転じて攻撃』のプレー、『スピード&パワー』のベースラインゲームで相手より勝っていたからだったのだ。
ティームは風になぶられ、雨に中断させられながら、2日に渡って4時間以上をかけて戦われた劇的な6-2 3-6 7-5 5-7 7-5の勝利で、ジョコビッチのグランドスラム4大会連続優勝の夢にも終止符を打ったのである。
「この負けについて何か理由を指摘したり、言い訳を探したりはしたくない」と第1シードのジョコビッチは試合後にコメントした。ジョコビッチはこの試合に先立つ10回の5セットマッチのうち9試合に勝っており、総じて29勝9敗とフルセットでの勝負強さを誇っていた選手でもある。
「彼(ティーム)が取ったんだ。彼が自ら勝ちをもぎ取ったんだよ。彼はよくやった」
それは容易なことではなかった。ジョコビッチに対し、簡単であるはずがない。例えこの日のジョコビッチが、自分で穴を掘ってはまた這い上がるという行為を続けていたとしても。
第5セット5-3から自分のサービスゲームを迎えたティームは、アンフォーストエラーによってふたつのマッチポイントを無駄にしてしまった。しかし彼は3度目のチャンスは逃さず、最後のゲームでフォアハンドを叩き込み、ジョコビッチのサービスゲームをブレークして試合を締めくくった。
「勇壮な試合だった。多くのアップダウンがあり、それに雨でロッカールームに戻ったり、またコートに出たり、波乱万丈だった。どういう訳か、僕は自分が試合を通してリードしているという感じを抱いていたのだが、最後にきて非常に厳しくなってしまった」とティームは長かった試合を振り返った。
「僕らのどちらが勝ってもおかしくない試合だった。そして幸運にも、最後には僕が勝つことになった」
ジョコビッチは昨年7月のウインブルドンに始まり、ハードコートのUSオープンとオーストラリアン・オープンと続いたグランドスラム大会での進撃を、4大会連続優勝まであと2勝というところで止められてしまった。
反対に今、ロランギャロスのレッドクレーで初のグランドスラム・タイトルを勝ち獲るチャンスを手に入れたのが世界ランク4位のティームなのだ。
彼は日曜日の決勝で、フレンチ・オープンで11度優勝している前年度覇者のラファエル・ナダル(スペイン)と対戦する。これはまた、昨年の決勝のリマッチでもある。
クレーコートでナダルを倒したことのある数少ない選手のひとりであるティームだが、昨年の決勝で勝者となったのはナダルであり、その試合を含めてナダルはティームとの対戦成績で8勝4敗とリードしている。
「いつもそうだ。誰かがここで決勝に至ったなら、それはラファに対する試合なんだよ」とティームは笑いながら言った。
第2シードのナダルは火曜日に準々決勝を、金曜日に第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)を6-3 6-4 6-2で下した準決勝をプレーし、しっかり体を休めていた。しかし対照的にティームにとっては、雨による中断や延期のせいで4日連続のプレーとなる。
もしふたたびティームを倒せば、ナダルのグランドスラム大会でのタイトル数は「18」となり、男子最多優勝者であるフェデラーの記録まであとふたつと迫ることになる。
金曜日の準決勝の第3セットで雨のため試合が中断されたとき、ティームはジョコビッチのサービスゲームをブレークして3-1とリードを奪ったところだった。試合はその18時間半後、雨はないが風のあるコンディションで再開した。
金曜日の風はあまりに強く、コート上からさび色の土を舞い上げて砂嵐のようなものを生み出していたが、土曜日の風はより対処し得る範囲のものだった。それはプレーヤーのシャツをはためかせたが、前日のようにサービスのトスやショットに大損害を及ぼすことはなかった。
「これまで僕自身がプレーした中で、最悪のコンディションのひとつだったよ」とジョコビッチは金曜日のコンディションについて不満を口にした。
「言えるのは、ただそれだけだ」
彼らは繰り返し、10本、20本と続く、長く見ごたえあるラリーを交し合った。彼らは予測力と見事なコートカバリングの能力を使い、互いのショットを追いかけ合った。彼らはあらゆるアングルからボールを叩き打った。
このように長くなったラリーでは――差は大きくはないが――ジョコビッチのものとなる傾向があった。彼は9本以上続いた61回のラリーのうち37ポイントを取っていたのだ。
理由は何であれ、ジョコビッチは通常の彼の戦略にそぐなわいことに、頻繁にポイントを短くしなければならないと感じていたようだった。その事実は、カギとなる統計につながっている。
彼はネットに出た71ポイントのうち、35本しか取っていない。反対にティームは、より思慮深く選び抜いた機会に試みた20回のネットダッシュのうち18ポイントを奪っていた。
第3セット5-6、自らのサービスゲームの15-15の際に、ジョコビッチはサーブクロックの時間を使い切ったとして主審のジャウマ・カンピストールから警告を受けたことにより、気持を乱した様子を見せた。ジョコビッチはやや過剰にこだわり、文句を言い続けたためにスポーツマンらしからぬ行為であると言い渡された。
この集中力の乱れは、ティームにセットを与えたサーブ&ボレーを含めて彼のプレーにも影響を与えた。
勝負を第5セットに持ち込んだあとにジョコビッチはふたたび躓き、ボレーミスで先にブレークを許して1-3とリードされてしまう。ティームが次のゲームをキープして4-1としたが、それからまたも雨が降り始めた。
5-3とリードしたティームが40-15からサービスに入ったとき、ジョコビッチは敗戦まであと1ポイントのところにいた。しかしティームはそこで試合にケリをつけることができなかった。彼はバックハンドをネットにかけ、もうひとつバックハンドをサイドに外した。それからフォアハンドをアウトし、バックハンドをふたたびネットに打ち込んだ。
このような崩壊から立ち直るのは難しいものだが、ティームは体勢を立て直した。最後にたじろぎ、敗れたのはジョコビッチの方だったのだ。それは彼が2018年フレンチ・オープン準々決勝以来、グランドスラムの舞台ではやっていなかったことだった。(C)AP(テニスマガジン)
※写真は準決勝で対戦したノバク・ジョコビッチ(セルビア/左)とドミニク・ティーム(オーストリア/右)
撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU
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