「奇跡」のクビトバと「勝利に憑りつかれた」ケニンが準決勝で対決 [フレンチ・オープン]
今年最後のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦9月27日~10月11日/クレーコート)の本戦12日目は、女子シングルスと男子ダブルスの準決勝などが行われる予定となっている。
ひとりは自分がプレーしていること自体が「奇跡」だと言い、もうひとりは勝利に憑りつかれていると言う。そして双方がこの新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの年に開催される最大の大会のひとつで、他の選手たちよりもうまく対処している。
ロラン・ギャロス準決勝で対戦することになったペトラ・クビトバ(チェコ)とソフィア・ケニン(アメリカ)は、それぞれのキャリアの非常に異なる時点にいるふたりのパワーヒッターだ。
すでに2度ウインブルドンで優勝しているクビトバは2016年12月にチェコの自宅で強盗にナイフで刺され、もはやかつてのようにハイレベルでプレーできないかもしれないと医者に告げられた。彼女のラケットを持つ手である左手のすべての指は傷つけられ、神経と腱は深刻なダメージを受けた。
ラウラ・シグムンド(ドイツ)に対する彼女の6-3 6-3の勝利は、2012年以来8年ぶりに準決勝に戻ってきた30歳のクビトバにとってトラウマから回復するための新たな一歩だった。
「これはもうひとつの奇跡だわ」とクビトバはコメントした。
彼女のコーチであるイリ・バネク(チェコ)は、手を修復するための手術後にクビトバが話した最初の言葉を思い出した。
「『皆、私は戻ってくる。プレーできるようになるため、できるすべてをやるわ』と彼女は宣言した。彼女は完全に焦点を定め、集中していた」と彼は当時を振り返った。
準々決勝の相手シグムンドも、それに気付かされた。
「彼女が波に乗り始めたら、さらに勢いを増して突き進んでいくわ」とシグムンドは脱帽した。
今大会でのクビトバは5試合プレーしてまだセットを落としておらず、反対にケニンは1試合を例外に他のすべての試合でフルセットを戦っている。
しかし同胞であるダニエル・コリンズ(アメリカ)に対する準々決勝での6-4 4-6 6-0の勝利は、今年のオーストラリアン・オープン優勝がいかにしてこの21歳の自信に素晴らしい効果をもたらしたかを示していた。これ以前にケニンがプレーしたグランドスラム準々決勝は、栄冠に輝いたメルボルン・パークだけだったのだ。
「オーストラリアでの経験が、間違いなく私に大きな促進力を与えてくれた」とケニンは語った。
もうひとつの女子決勝では、世界ランク54位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)が同131位のナディア・ポドロスカ(アルゼンチン)と対戦する。快進撃で勝ち上がってきたポドロスカは、フレンチ・オープンで女子シングルス準決勝に進出した初の予選勝者だ。
ウインブルドン中止を強いたパンデミックの年に3つのグランドスラム大会のすべてで4回戦以上に到達した女子プレーヤーは、ケニンとクビトバしかいない。
木曜日の準決勝について、大舞台での緊張感によりうまく対処できた者が勝者になるだろうとケニンは考えている。
「それが大きなカギになるでしょうね。彼女(クビトバ)は本当に背が高くてパワフルで、はビッグサーブやパワフルなショットを擁している。とにかく私は、自分のテニスのバランスをとる方法を見つけ出す必要があるわ。明らかに私は彼女を力でねじ伏せることなんてできないから、彼女を圧倒するつもりはないの。でも私には別の武器がある。バリエーションをつけて対抗するつもりよ」とケニンは準決勝を展望した。「私は勝つことが何よりも好きなの」。
7度目のグランドスラム準決勝に臨むクビトバは、昨年のオーストラリアン・オープンで準優勝していた。それは彼女が事件後に出場したグランドスラム大会での最高成績だ。これだけ場数を踏んできた彼女でさえも、ナーバスになることがあると明かした。
「話したくも食べたくもなくなったし、動きたくもなく出て行ってプレーしたくもなくなったわ。でもその反面、コートに足を踏み入れさえすればすべてはずっとよくなると分かってもいたの」(APライター◎ジョン・レスター&アンドリュー・ダンプ/構成◎テニスマガジン)
※写真はソフィア・ケニン(アメリカ/右)とペトラ・クビトバ(チェコ)(Getty Images)
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