5時間超の大逆転勝利のあと、錦織はジョコビッチに挑む [オーストラリアン・オープン]
「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月14~27日/ハードコート)の大会8日目、男子シングルス4回戦。
5セット5時間の戦いに一つの議論を醸すポイントが、パブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)を主審に向かって喚かせ、錦織圭(日清食品)に準々決勝への切符を勝ち取るために必要としていた“流れの転換”を与えた。
勝利まであと2ポイントに迫ったあと、カレーニョ ブスタは5ポイントを連続で落とした。その中には最終セットのタイブレークでリプレーにしなかったことについて、彼が審判を怒鳴りつけた1ポイントもあった。
そのポイントが、ある意味でタイブレークの流れをわずかに変え、錦織は6-7(8) 4-6 7-6(4) 6-4 7-6(10-8)で勝って、準々決勝に駒を進めることになったのである。
2014年USオープン準優勝者の錦織が2セットダウンから巻き返したのは、この大会2度目だった。そして、彼が今年からメルボルンパークで導入された第5セットの10ポイントのスーパータイブレークを戦ったのも、これが2度目だったのだ。
「あれは重要なポイントだった。でも、僕がいかにして2セットダウンからカムバックしたかについて尋ねるべきだよ」と錦織はコメントした。
「あれはたったの1ポイント。もしかしたら彼に(悪い)影響を及ぼしたかもしれないけど…でも、僕に影響を及ぼしたかもしれない」
もしかするとカレーニョ ブスタに影響を及ぼした? 27歳のカレーニョ ブスタは、自制心を失った。試合後の彼は、錦織を抱擁するためごく短い時間、足を止めたが、それからバッグをコートに投げつけ、マーガレット・コート・アリーナから足早に立ち去りながら、ふたたび主審に向かって喚き立てた。
「最後のポイントのあと、可能な限りすぐにコートから出ていったんだ。そうしなかったら爆発してしまうとわかっていたから」とカレーニョ ブスタはスペイン語で言った。
「あのコートからの去り方については、お詫びするよ」
その問題となったタイブレーク14ポイント目は、次のようなものだった。カレーニョ ブスタのショットは、ネットコードに当たって上に跳ねてから左のサイドラインの上でバウンドした。錦織は素早く体勢を整えると、これをバックハンドでストレートに叩き、簡単にウィナーを決めた。
錦織がボールを叩きにいったとき、線審が(その前のカレーニョ ブスタのコードボールが落ちた場所に対し)「アウト」とコールし、逆方向に走っていたカレーニョ ブスタは、錦織の決め球に触れるほどボールの近くにいなかった。
それでもカレーニョ ブスタは判定にチャレンジ(自動ライン判定)を求め、ホークアイカメラの映像は、彼のボールがラインに乗っていたことを示して見せた。
しかしながら主審のトーマス・スウィーニーは、そのポイントではどちらの選手もコールに妨害されてはいなかったと判断したため、ポイントは変わらず錦織のもののままとなったのである。
それはタイブレークでカレーニョ ブスタが8-5リードとあとのポイントで、このポイントを錦織が取ったためスコアは8-6となり、その時点でもまだカレーニョ ブスタはリードしていた。
しかしそのあと、カレーニョ ブスタは1ポイントも取れず、錦織はサービスエースで試合を締めくくった。
第8シードの錦織は、次のラウンドでオーストラリアン・オープン優勝歴6回のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦する。
一方、カレーニョ ブスタは大会から去ることになった。
「僕にとって、こんなふうにオーストラリアン・オープンから去るというのは、非常につらいことだ。なぜって、僕は素晴らしい試合をプレーしたと思うから」と第23シードのカレーニョ ブスタは心境を語った。
「ケイもまた、本当にいいプレーをしていた。こんなふうに大会から去るなんて、悲しいことだ」
錦織は、第5セット5-4から自分のサービスゲームで試合を終わらせるチャンスを手にしていたが、カレーニョ ブスタはブレークバックに成功し、勝負をふたたびタイブレークに持ち込んだ。
「挽回できて本当にうれしい。どうやってカムバックしたのか、自分でもわからないほどだよ」と、ここまでの4ラウンドで14時間近くをコート上で過ごしている錦織は振り返った。
「多くの厳しい瞬間があった」
4回戦の最後の試合では、第1シードのジョコビッチが数回の転倒とエネルギーを消耗する一連の長いラリーを克服し――あるラリーは実に42ショット続いた――第15シードのダニール・メドベデフ(ロシア)を6-4 6-7(5) 6-2 6-3で下し、2016年以来となるオーストラリアン・オープンの準々決勝に戻ってきた。
ジョコビッチは試合後のオンコートインタビューで、「僕の次の対戦相手が見ているだろうから…僕は素晴らしい感じを覚えているよ! 人生を通し、今より活力を感じたことはない!」とジョークを言った。
少しあとに、彼はちょっとした痛みはあり、「最後の20分にはあまり素晴らしい気分じゃなかった」と白状した。
「明日、身体がどのような反応をするか見てみよう。(でも)きっと回復し、次の試合に向け準備を整えることができるということに、自信を持っている」
インタビュアーのジム・クーリエ(アメリカ)に、錦織の試合がいかに長く、体力を消耗させる5セットマッチだったかを聞かされたジョコビッチは、「いいニュースをありがとう!」とも言った。
ドロー(トップハーフ)のもうひとつの準々決勝では、第11シードのボルナ・チョリッチ(クロアチア)を6-7(4) 6-4 7-5 7-6(2)で破った第28シードのルカ・プイユ(フランス)と、第16シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)が顔を合わせることになった。
第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)は、ラオニッチに1-6 1-6 6-7(5)のストレートで敗れた。ラオニッチが一貫して叩き出したウィナーはズベレフにフラストレーションを感じさせ、彼は怒りのあまりラケットを叩き折って、審判から警告を受けたほどだった。
ビッグサーブが武器のラオニッチは最初のゲームでサービスをブレークされたが、最終的にズベレフがついにサービスをキープするまで、続く8ゲームを連取することでこれに答えた。
第2セットで1-4とリードを奪われたズベレフは、コートサイドの椅子にドスンと腰を下ろすとラケットをコートに8回叩きつけ、それを脇に投げ捨てた。
しかしこの怒りの爆発は、ラオニッチの優位性を際立たせる役に立っただけだった。
「今日、僕はすばらしいプレーをした」と2016年ウインブルドン準優勝者のラオニッチは胸を張った。
「多くのことを非常にうまくやった。そのことを誇りに思う」
一方のズベレフは、グランドスラム大会でトップ20の選手に勝てないという悪いジンクスを破ることにふたたび失敗したあと、お詫びを言った。
「僕はすごく怒っていた。だから怒りを外に放出させたんだ」
「僕はまずいプレーをしていた。特に最初の2セットには、本当にひどいプレーをした」と認めたズベレフは、それからこう続けた。
「原因をひとつだけ挙げるのは難しい。サービスもよくなかったし、ベースラインからもいいプレーができていなかった。彼のような質の高い選手を相手に、そのような状態からカムバックするのは難しいよ」(C)AP(テニスマガジン)
※写真は錦織圭(日清食品)(撮影◎小山真司 / SHINJI OYAMA)
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