パリで完璧なナダルがジョコビッチを圧倒、グランドスラム優勝回数でフェデラーとタイに [フレンチ・オープン]
48分で終わった第1セットは、ナダルによる独壇場だった。彼は驚くほどシャープに試合を始めてその強いスピンのかかったフォアハンドを自分の望むところに打ち込み、守備から攻撃に転じる類まれな能力を使ってスライドして体を伸ばしながらボールをアグレッシブに打ち返した。
「僕は自分の最高レベルでプレーする必要があるときに、最高レベルでプレーした」とナダルは振り返った。
やや諦めた様子に見えたジョコビッチは四苦八苦しているときに頻繁にそうであるように――たとえば先月のUSオープンでカッとなって打ったボールを線審にぶつけて失格処分になったときのように――、感情を露わにしてはいなかった。
反対にジョコビッチは頬を膨らませたり目をぐるりと回したりして恐らく自分に憤慨してはいたが、ネットの向こう側にいる相手にどう対抗したらいいかの答えを見つけることができないでいた。彼はあるラリーのあと、「僕はここで何をしたらいんだ」とでも言いたげに手の平を上に向けた。
キャリアにおけるグランドスラム大会での341試合の中で、ジョコビッチが0-6でセットを落としたのは4度目に過ぎない。彼がコートサイドのベンチに座ってその完封劇を頭の中で整理しているとき、ジョコビッチを応援する白い野球帽を被って青いジャージを着た4人のサポーターがスタンドで歌い、彼らのコーラスは開閉式の屋根を打つ小雨の軽い音をかき消した。
テニス界のふたりの巨人の間の待ちわびられた対決は、フィリップ・シャトリエ・コートの新設の屋根が閉じた状態で戦われた初の男子シングルス決勝だった。VIPセクションのスタンドでは、男子シングルス優勝者に贈られるマスケティアーズカップが照明の光を浴びて輝いていた。
これは大会が5~6月から9~10月に延期された理由でもある新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのため、マスクを着用してコートに入っていく選手たちによって戦われた初のフレンチ・オープンでもあった。やはりパンデミックのために観客は上限1000人に制限され、最終日に観戦する幸運に授かった観客たちはあまりソーシャルディスタンスを守らずに前から20列目までに集まっていた。
「もちろん、これは僕にとって重要な日だ」とナダルは試合後に語った。「でも、僕は愚かではない。世界情勢は変わらずとても悲しいものだ」。
開催の季節が変わったことで気候は通常より寒くて雨が多くなり、それがバウンドをより低く遅くするなどクレーコートがショットに与える効果にも影響を及ぼした。ナダルを含む何人かは、大会がボールを幾分重いものに変えたことと合わせてそれが自分のプレーに影響を与えることを不安視していた。ナダルは、「今年は恐らく、かなり難しくなるかもしれない」などと発言していたのだ。
しかし終わってみれば、そんな心配は無用だった。
今大会でジョコビッチが多用していたドロップショットにナダルは予測力とスピードを使ってこれ以前の他のどの対戦相手たちよりも上手く対応し、ジョコビッチの戦略の成功率を落とすことに成功していた。
「今日はあまりうまく機能しなかった」とジョコビッチは認めた。
試合開始直後からナダルはジョコビッチのサービスゲーム6回のうち5ゲームを取り、最終的に7度のブレークに成功した。ナダルは試合を通して5度ブレークポイントに直面したが、そのうち4本をセーブした。
決勝が始まって2時間以上が過ぎた頃、ジョコビッチはバックハンドのウィナーを決めて最初で最後のブレークを果たし、第3セットで3-3と追いついた。その瞬間にジョコビッチは叫び声を上げ、両手を振って観客からの声援を煽った。しかし抵抗はあまりにわずかで、あまりに遅すぎた。それから30分も経たないうちに、すべては終わっていた。
「ラファは皆が間違っていたことを証明して見せた」とジョコビッチは言った。「だからこそ、彼は偉大なチャンピオンなんだ」。(APライター◎ハワード・フェンドリック&ジョン・レスター/構成◎テニスマガジン)
※写真はラファエル・ナダル(スペイン)
PARIS, FRANCE - OCTOBER 11: Rafael Nadal of Spain hugs the winners trophy following victory in his Men's Singles Final against Novak Djokovic of Serbia on day fifteen of the 2020 French Open at Roland Garros on October 11, 2020 in Paris, France. (Photo by Shaun Botterill/Getty Images)
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