アルゼンチンに愛され、ニューヨークに抱擁されたデル ポトロ [USオープン]
フアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)は、自らが持つ恐るべきフォアハンドを打つため力いっぱいスイングすることから疲れきり、膝に手を当てて立っていた。
ノバク・ジョコビッチ(セルビア)はボールを返し続け、それゆえデル ポトロはコートの角のどこかへ、彼がカバーしきれない場所を探そうと努めつつ、いっそう強く打たなければならなかった。
それが最終的にデル ポトロを消耗させ、ミスへと導いた。
彼は日曜日に、再び勝ちたいと熱望していた「USオープン」(8月27日〜9月9日/アメリカ・ニューヨーク/ハードコート)の男子シングルス決勝を戦い、ジョコビッチに3-6 6-7(4) 3-6で敗れた。
敗れたが彼はそこで、有頂天なアルゼンチン人ファンたちが、ポイント間に「Ole Ole!(オレ、オレ!)デルポ!」と歌うのを聞くだけでも、フラッシングメドウから、別の報酬を家に持ち帰ることができただろう。
「トロフィを勝ち獲ることもあれば、敗れることもあるが、観客からの愛は大会より大きなものだ」とデル ポトロは言った。
「それが僕が彼らからもらったものだ。僕の残りの人生を通し、それは心の中に残り続ける」
彼がその音をふたたび聞けるかどうかわからずにいたのは、それほど昔のことではない。2015年、4度の手首の手術のあとは、もう少しでテニスをやめるところだった。彼は故障と手術の繰り返しのせいで、ロジャー・フェデラー(スイス)を倒して2009年USオープン優勝を果たしたテニスを、一向に取り戻せないでいた。
本来パワフルなプレーヤーである彼が、フェデラーやジョコビッチ、ラファエル・ナダル(スペイン)らのテニス界の支配者はもとより、トッププレーヤーと呼ばれる者たちを脅かすほど強く打てていたバックハンドを打てなくなってしまっていた。
しかし、彼は頑張り抜いただけでなく、先月にキャリア最高の世界ランク3位にまで浮上したのだ。それはこの春のインディアンウェルズ決勝でのフェデラーに対する勝利と、フレンチ・オープンでの準決勝進出のおかげでもあった。
ジョコビッチは、デルポトロがふたたびグランドスラム・タイトルを獲ると信じていると言った。
「彼は手首の故障を克服し、カムバックし、変わらず自分を信じ続けてきた。いつの日かトッププレーヤーになれる、グランドスラム・タイトルを目指して戦えると」とジョコビッチは言った。
「僕は心から彼に幸運を祈る」
2度目のグランドスラム・タイトル獲得の探求の旅は、来年まで待たなければならない。しかし今月30歳になるデル ポトロは、ここ2週間は手首がうまく持ち応えたことを受け、自分の可能性にいい感触を覚えていた。
「あと数年の間はプレーし続けるだろう」と彼は言った。
「このキャリアで、僕の最後の大会がいつになるのかはわからないけど、こんなふうにプレーして自分を驚かせることにワクワクしている。グランドスラム大会のタイトルを獲ろうと努力し続けることに、非常に大きなモティベーションを感じているよ」
試合後、デル ポトロが涙を流し、表彰式を待ちながらコートサイドの椅子に座っているとき、ジョコビッチとジョン・マッケンロー(アメリカ)の双方が、彼を慰めるためにそばにやってきて、肩を優しく叩いた。
おそらくデル ポトロは、テニス界最高のディフェンダーであるジョコビッチの中に弱点を見つけようと努め続け、特に第2セットで試合のターニング・ポイントとなった「20分」と「22ポイント」を必要としたゲームを落としたあと、3時間16分の戦いによってエネルギーを絞り取られた。
もし相手がほかの選手だったら、デル ポトロは勝っていたかもしれない。過去何年かのフェデラーやナダルに対する敗戦のいくつかも、もし相手がほかの選手だったら勝っていただろうと感じられたように……。
この試合の2時間ほどあと、デル ポトロは彼のボックスから応援していた10人あまりの友人と、彼の母国からやってきたサポーターたちに会って挨拶するため、プレーヤーズ・ガーデンに出て行った。このファンたちのおかげで、故障して鬱に陥っていたどん底の時期に元気を保ち続けることができた、と彼は言う。
アルゼンチンで愛され、ニューヨークで抱擁された彼は、来年また、グランドスラム・タイトルを追い求めることを楽しみにしている。
デル ポトロの言葉だ。
「僕は子供たちの模範となり、人生においてゴールを達成するためには努力し続けなければならないということを彼らに教えようと、自分の義務を果たしているんだ」とデル ポトロは言った。
「僕は(トップ)選手たちを煩わし続けるよう努めるよ。次の大会でまたプレーする。どうなるか見てみようじゃないか」(C)AP(テニスマガジン)
※写真は手前がフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)、奥がノバク・ジョコビッチ(セルビア)(撮影◎毛受亮介)
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