西岡良仁×船水颯人(ソフトテニス)次世代エース対談 vol.2
垣根を超えたスペシャル対談が、ついに実現! 硬式テニスからは西岡良仁、ソフトテニスからは船水颯人。日本のテニス界を牽引する同世代のふたりがテニスに関する熱いトークを繰り広げてくれた。7月21日発売のテニスマガジン9月号に掲載された「硬軟織り交ぜたテニス論」を含む、大盛り上がりのトーク全文を公開。今回はvol.2の内容を紹介しよう。
小さい選手が勝つために、気持ちで負けない
――硬式の選手からヒントを得るソフトテニスのトップ選手もいます。例えば、船水選手はモンフィス(フランス)の試合からフットワークを学んだこともあるとか。
船水 楽天ジャパン・オープンを生で見て衝撃を受けました。ハードコートであんなに滑れるんだ、と。
西岡 彼は例外です。あんなに動ける選手はあまりいないし、いい選手です。
船水 スライディングをするのですが、あれは慣れですよね。
西岡 そうですね。
船水 自分もできるようになってきたのですが、ハードコートでプレーする機会自体が少ないので、試すチャンスが少ない。
西岡 スライドは慣れで、硬式ではだいたいの選手が滑れる。芝でもスライドできる人もいますし、逆にしなくても強い人もいる。自分はできないとコートカバーリングができない。フェデラーのような立ち位置が良くて、ボールへの入りが毎回最短でできる人は滑らなくてもいいでしょう。自分のようなタイプは、リーチも短いので、スライドしないと届かない。生命線でもあります。
――国内には170cmの選手はたくさんいますが、グランドスラムなど世界の舞台では驚かれるでしょう。
西岡 メディアが面白がります。イボ・カルロビッチ(クロアチア)のような2m11cmの選手とやって勝てば、そういうことは言われます。これだけの身長差で勝っている、となります。
――その身長で、グランドスラムで勝ちたいというのが出発点ですか。
西岡 そうですね。現に今年のフレンチ・オープンで170cmの選手がベスト8に入っているので、可能性はあると思います。
――その挑戦で何が必要でしたか。
西岡 小さい選手が勝っていくためには、気持ちがファイターでなければ無理と、ジュニアの頃から言われていました。エースを必ず取れるわけではないし、泥臭くテニスをするしか勝ち目がない。それを続けられる精神力がないと勝っていけません。それが最低限。そこから、フットワークや技術が出てくる。気持ちでどれだけ他の人に負けないか。自分はめちゃくちゃ負けず嫌いで、そこが人一倍強いと思っています。同じ170cmのディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)も負けず嫌いで、すごいファイター。毎ポイント頑張っています。そういう姿勢がチャンスを広げていき、逆に大きい選手たちからすると、すばしっこいので何度も何度もボールを返してくる。結果、ラリーが長くなり、相手からすれば嫌なのです。相手はエースを決めて、早く試合を終わらせたい。こちらからすれば、試合を長引かせるのはいい。向こうは嫌なので、どんどん嫌にさせる。これは大事かなと思い、試合前から心掛けています。
――船水選手はファイターの部分などは共感しますか。
船水 自分もシュワルツマンが好きで、気持ちが分かるというか。昨年楽天オープンでゴファンとやった試合を初めて見たのですが、前に出られて、拾って、返して、次決めてと、うまく戦っていたのを見て、通じるものがある、気持ちがよく分かりますね。
西岡 彼とはそんなに話したことはないですが、日本と違い、彼の国で170cmは相当低い身長なので、自分たちよりもタフな道程を歩んできたと思います。自分もアメリカに行った時、“170cmで世界は無理”とずっと言われましたから。“150位は超えられない”と。そういう中でやってきたので、彼もそういう部分を乗り越えてきたので強いかなと。自分としても尊敬しています。1回試合をしたいですね。どっちがちょっと大きいかを決めたくて(笑)。
短期集中と長期集中、競技特性の違い
――気持ち以外に、身体的、技術的にこういうところを成長してきたというのはありますか
西岡 15歳まで三重県でトレーニングしてきたのですが、年齢も低かったので、トレーニングの内容はランニングやフットワークの練習が中心でした。テニスの練習も1日2時間程度です。アメリカで本格的にトレーニングを始めましたが、ジュニアだったので、まだ何がいいか分からなかったですが、ケガもあり、今になってトレーニングは大切だったなと感じています。自分の生命線は動きで、フットワークと反応の良さ、1歩目の速さとか切り返しの良さです。そういう部分が大事で、もちろん筋肉面、ウエイトトレーニングも必要ですが、筋肉をつけ過ぎるのも良くないので、今は体重管理をしっかりしています。現在は栄養士さんについてもらい、自分のベストの64kgを維持するために、月に1回、身体組成を測り、体脂肪と筋肉量などを見ながら食事の内容を決めてもらいます。身体的に大事なのは動きの部分、トレーニングがどうテニスに生きるかを考えて、取り組んでいます。
船水 競技性がありますよね。硬式は試合時間が長く、自分たちは1試合が短い。
西岡 軟式の方が短期集中ですが、自分たちは長期。1時間半から長ければ4時間とかあります。だから、体力をどう維持していくか。集中して、抜く時間も必要で、それを繰り返しながら、どう配分するか。そう考えると軟式は短い。
船水 どんな強い選手でも最初取れないと終わりですね。最初の2ゲームは落とせない。取り返しがつかない。
西岡 短期集中、長期集中で、ちょっと違いますね。
船水 逆に硬式の選手が4ゲーム先取だとどういうメンタリティーで入るのでしょうか。
西岡 実はアンダー21のツアー最終戦で4ゲーム先取の5セットマッチがルールとして採用されました。テニス界はどれだけ時間を短縮できるかが課題でもあるのです。実際にも最初取れないと次のセットだという感じになる、違った展開で面白かったですが、実際の試合時間はそう変わらなかったですね。これを3セットまで短くすると緊張感は出ると思いました。
船水 硬式だと強い選手がほとんど勝ち上がりますよね。軟式の場合は差がないので、いくら強くても1回戦で負けることもあります。硬式の上位のメンバーはそんなに変わらない印象です。
西岡 ベスト4に残っているのは決まっている4人とか。時代もありますが、今は上が強すぎて、そこに若手が入ってきたという状況でしょう。
構成◎ソフトテニスマガジン編集部、テニスマガジン編集部
写真◎馬場高志
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