10時間のドライブが報われ、トゥルンヘリッティが初戦突破 [フレンチ・オープン]
「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月27日~6月10日/クレーコート)の男子シングルス1回戦で、ラッキールーザーのマルコ・トゥルンヘリッティ(アルゼンチン)が予選勝者のバーナード・トミック(オーストラリア)を6-4 5-7 6-4 6-4で下し、初戦を突破した。その試合の裏で面白いストーリーがあった。
先週、フレンチ・オープンの予選決勝で敗退したランキング190位のトゥルンヘリッティは、バルセロナの自宅へ戻り、アルゼンチンから訪れていた88歳の祖母、母、弟とビーチで過ごす予定だった。そこで突然、朗報が入った。負傷のために棄権した選手に代わって、8人目の“ラッキー・ルーザー”として本戦入りが決まったのだ。だが、本戦でプレーするには、月曜日朝の「サインイン・デッドライン」までにフランスに戻らなければならなかった。
「祖母がシャワーを浴びていたところだった。でも、彼女に“さあ、パリに戻るよ!”と伝えたんだ」とトゥルンヘリッティは振り返る。
トゥルンヘリッティの荷物はまだスーツケースの中だったが、ほかの3人は大急ぎでスーツケースに着替えを詰め直し、親戚のレンタカーに飛び乗った。北へ1000km、およそ10時間のドライブが始まった。そして、パリには日曜日の夜11時頃に到着した。
長いドライブは報われた。トゥルンヘリッティは本戦出場を果たしただけでなく、トミックを下して2回戦進出。これで少なくとも、7万9000ユーロの賞金が手に入ることになった。
「いつもと同じように、普通の試合だと思ってプレーしようとした」とトゥルンヘリッティ。しかし、彼のストーリーに“普通”のことなどない。女子で第13シードのマディソン・キーズ(アメリカ)は「今大会で一番の話題じゃない?」と語った。
このような形でチャンスを生かした選手を、批判する人などいるだろうか?
「グランドスラムの本戦に出場するのに…自分で運転して来るなんて、あり得ない!」とコメントしたのは、2014年大会でベスト4に進出したエルネスツ・グルビス(ラトビア)だ。
28歳のトゥルンヘリッティは先週木曜日に予選決勝で敗れ、金曜日までパリを観光してから、その日のうちに妻と暮らすスペインに戻った。2日後の日曜日に、コーチから第21シードのニック・キリオス(オーストラリア)が棄権し、出場枠がひとつ空いたと連絡があった。トゥルンヘリッティよりも優先で出られる選手もいたが、すでにイタリアでの下部大会にエントリーしていたという幸運もあった。
「行ってみる価値はあるのか?」5分だけ悩んでから、すぐにパリへ戻ることにした。しかし、いくつかの問題があった。バルセロナ-パリ便のフライトがいくつか欠航となり、フランス国内の列車はストライキのためにダイヤが大幅に乱れていた。「車で行くのが一番いい」と即断した。
4人家族は日曜日の午後1時頃にバルセロナを出発。2時間後にコーヒーブレイク、午後9時に夕食を済ませた。トゥルンヘリッティも数時間は運転したが、基本的には弟がハンドルを握った。車での長旅は、アルゼンチンでは普通のことだという。
「ブエノスアイレス以外の街に住んでいれば、1000kmなんてどうってことない。1000km進んでも街が出てこないことだってある」とトゥルンヘリッティは話し、母国の高速道路は危険だらけだという。
「高速道路を2時間も走れば、そのあと生きていられるかどうかわからないよ」
月曜日に9番コートに立ったとき、プレッシャーはまったく感じられず、リラックスできた。黒の長いショーツを履き、上は白いノーマルなTシャツ。黒い帽子からは、茶色い縮れた髪の毛が飛び出している。ツアーレベルで今季3試合目、キャリア通算16試合目だった。試合後は突然有名人になったかのように、記者会見場が満席になっていた。
大きな舞台が好きなようだ。トミックを倒したことで、グランドスラムでの通算成績は4勝3敗となった。トミックは元トップ20選手で、2011年ウインブルドンではベスト8に進出。今大会はランキング206位で予選を勝ち抜いての出場だった。
トゥルンヘリッティがグランドスラムで1回戦を勝ち抜いたとき、必ず2回戦で敗れている。2年前のロラン・ギャロスではマリン・チリッチ(クロアチア)を倒す大番狂わせを演じながら2回戦で敗退した。今回は、水曜日に2回戦でランキング72位のマルコ・チェッキナート(イタリア)と対戦することが決まっている。
「大きなチャンスだということはわかっているよ」とトゥルンヘリッティは笑顔を見せた。(C)AP(テニスマガジン)
※写真はマルコ・トゥルンヘリッティ(アルゼンチン)
PARIS, FRANCE - MAY 28: Marco Trungelliti of Argentina plays a forehand during the mens singles first round match against Bernard Tomic of Australia during day two of the 2018 French Open at Roland Garros on May 28, 2018 in Paris, France. (Photo by Matthew Stockman/Getty Images)
Pick up
-
2024-12-12
サービス第二弾!テニス丸ごと一冊サービス [技術の修正](堀内昌一 著)12月25日(水) 書籍&電子書籍同時発売
テニス丸ごと一冊サービス [技術の修正](堀内昌一 著)20
-
2024-12-12
テニスマガジン今後の予定(部活および新刊情報)
CHECK1テニスマガジンONLINEテニス界の最新情報を毎
-
2024-10-08
テニス丸ごと一冊サービス[増補版] QRコード(動画)付(堀内昌一 著)書籍&電子書籍
「テニスマガジン」のサービス特集をきっかけに、MOOK「テニ
-
2024-05-03
『テニスフィジバト道場』(横山正吾 著)テニスプレーヤーのための最新フィジカルトレーニング
Tennis Magazine extraシリーズテニスプレ
-
2024-02-05
子どもが主体的に動き出すために大人はどうかかわればよいのか(荒木尚子/著)
子どもが主体的に動き出すために大人はどうかかわればよいのか(
-
2023-04-03
『テニスの心理学~“心”技体を鍛えてメンタルタフになれ!』(佐藤雅幸著)
Tennis Magazine extraシリーズの最新刊『
Pick up
-
2024-12-12
サービス第二弾!テニス丸ごと一冊サービス [技術の修正](堀内昌一 著)12月25日(水) 書籍&電子書籍同時発売
テニス丸ごと一冊サービス [技術の修正](堀内昌一 著)20
-
2024-12-12
テニスマガジン今後の予定(部活および新刊情報)
CHECK1テニスマガジンONLINEテニス界の最新情報を毎
-
2024-10-08
テニス丸ごと一冊サービス[増補版] QRコード(動画)付(堀内昌一 著)書籍&電子書籍
「テニスマガジン」のサービス特集をきっかけに、MOOK「テニ
-
2024-05-03
『テニスフィジバト道場』(横山正吾 著)テニスプレーヤーのための最新フィジカルトレーニング
Tennis Magazine extraシリーズテニスプレ
-
2024-02-05
子どもが主体的に動き出すために大人はどうかかわればよいのか(荒木尚子/著)
子どもが主体的に動き出すために大人はどうかかわればよいのか(
-
2023-04-03
『テニスの心理学~“心”技体を鍛えてメンタルタフになれ!』(佐藤雅幸著)
Tennis Magazine extraシリーズの最新刊『