「私がテニスをプレーし始めた一番の理由が彼女なの」と大坂 [マイアミ・オープン]

 アメリカ・フロリダ州マイアミで開催されている「マイアミ・オープン」(WTAプレミア・マンダトリー/3月20~31日/賞金総額864万8508ドル/ハードコート)の女子シングルス1回戦。

 試合は、ネットの傍でセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が見せた苦笑いとともに幕を閉じた。彼女にとっては稀な1回戦負けを喫したその試合で、最悪のショットを最後までとっておき、そのひどさに笑わなければならなかったのだ。

 妊娠、出産のあとのツアー復帰で、まださび付いている様子のセレナは、マイアミの厳しい初戦のドローを克服することができず、日本の大坂なおみ(日清食品)に3-6 2-6で敗れた。

 最後のポイントでセレナは、目の高さの簡単な決め球を叩くために荒々しく前に出ていくと、ボールをベースラインの20cmほど外に叩き込み、内気な笑みを浮かべた。

 母になったことが、セレナを柔らかにしたわけではない。彼女は、メディアとは話さないまま去っていった。

 日曜日に、マイアミと同格のインディアンウェルズでキャリア初のタイトルを勝ち獲った20歳の大坂は、自分の憧れの選手と初めての試合をプレーし始めたとき、ナーバスになっていたと明かす。彼女は、目標はセレナが6-0 6-0で勝つのを阻むことだったとさえ言った。

「私がテニスをプレーし始めた一番の理由が、彼女なの」と大坂は言った。

「私はただ、試合のあとに、私が誰なのか彼女に知ってもらいたかった」

 そのミッションは果たされた。試合後に握手をしたとき、セレナは何と言ったのか?

「彼女は、『いい仕事だったわ(よくやったわね)』というようなことを言ってくれた」と大坂は言った。

「私は頭が真っ白になってしまっていたんだけど、彼女がよくやった、と言ってくれてよかったわ」

 アメリカと日本の二重国籍を持ち、フォートローダーデールに住んでいる大坂は、先週のタイトルへの進撃で脚光を浴びた。そして、彼女はここでも減速する様子は見せず、非常に不安定だったセレナを圧倒した。大坂はより強いサービスを打ち、ラリーでセレナをコートの端から端まで走らせて疲労させた。

 決勝に値するこの顔合わせが1回戦で起きたのは、選手の双方がノーシードだったからだ。大坂はキャリア最高の22位、一方のセレナのランキングは、1年以上の休養期間のあと、491位にまで落ちていたのだ。

 セレナが1回戦負けを喫したのは今回のほかに4回だけで、最近では2012年フレンチ・オープンでそれが起きている。最新の敗戦は、セレナが最多記録となる8度の優勝を遂げ、ホームタウンの大会とみなしている、ここマイアミ・オープンで起きた。

 この試合はセレナにとって、彼女が住むパームビーチ・ガーデンの145km南にあるキービスケーンでの最後のものとなった。大会は来年から、(セレナが月曜日に新築の起工式を手伝った)マイアミ・ドルフィンズ・スタジアムに移転するのだ。

 セレナは現在のランキングゆえワイルドカード(主催者推薦枠)で大会に出場し、最初はうまくいきそうに見えていた。彼女は、試合の最初の5ポイントを獲得するのに8ショットしか必要としなかったが、そのあと、ことはずっと難しくなってしまった。

 ツアー復帰以来4番目の試合をプレーしたセレナは、コーナーにくるボールに対して一歩遅く、頻繁に振り遅れていたし、自身のファーストサービスの半分も入れることができなかった。第2セットの序盤に、「カモン!」という独特の叫びに訴えたが、その感情の爆発をもっても流れを変えることはできなかった。

 大坂は、セレナが叫ぶことを自分が促したことに励まされていた。

「ときどき、彼女(セレナ)は、まったく『カモン!』と言わないで試合をプレーすることがある」と大坂は言った。

「それはちょっと悲しいわ。だって『彼女は勝とうと努めているのかしら?』と思うじゃない。だから私は彼女に一度、『カモン!』と言わせたかったの。そのあとは、彼女がトライし、奮闘しているのだとわかった」

 セレナはトライしてはいたが、その苦闘ぶりの典型は、最後のセットの中ほどにあったラリーだった。セレナはボールをすくい上げて返球するために急いで前に走っていき、戻ってぎこちないオーバーヘッドを打ち、それから、大坂のクロスのフォアハンドが空を切って通り過ぎてウィナーとなる様子を、立ちつくして力なく見送った。

 大坂のサービスはときに時速187kmに至り、一度もブレークを許さなかった。セレナがあるゲームで、彼女を3度デュースに追い込んだとき、大坂は連続のサービスエースでそのゲームを終わらせ、自分のヒーローであるセレナからインスピレーションを引き出したのだと言った。

「自分がサーブしているときに、また、非常に厳しい立場に立たされたとき、私は『セレナならどうするかしら』と考えるの」と大坂は言う。

 このアプローチは大坂の役に立った。

 今季14勝4敗の彼女は次のラウンドで、大会の新しい有力選手として、第4シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)と対戦する。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は大坂なおみ(日清食品)
KEY BISCAYNE, FL - MARCH 21: Naomi Osaka of Japan celebrates a point against Serena Williams during the Miami Open Presented by Itau at Crandon Park Tennis Center on March 21, 2018 in Key Biscayne, Florida. (Photo by Matthew Stockman/Getty Images)

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