今大会最長の3時間36分、デル ポトロがドラマチックな勝利で2年連続の8強進出 [USオープンDAY8]
「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月28日~9月10日/ハードコート)は第8日、男女シングルスのトップハーフの4回戦が行われた。前日の結果と合わせてベスト8が出揃った。
男子は“大物”がトップハーフに集中。ドローが決まったときから準決勝での対決が期待されている第1シードのラファエル・ナダル(スペイン)と第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)はいずれもベスト8に駒を進めた。それぞれ次に対戦する相手は、第9シードのダビド・ゴファン(ベルギー)を7-5 7-6(5) 6-3で破った19歳のアンドレイ・ルブレフ(ロシア)と、第6シードのドミニク・ティーム(オーストリア)を1-6 2-6 6-1 7-6(1) 6-4の大逆転で下したファン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)だ。
◇ ◇ ◇
今日ばかりは、主役はナダルでもフェデラーでもなくこの人、デル ポトロだっただろう。
対ティームは一年前の4回戦と同じカード。このときはティームが右膝を痛めて第2セット途中で棄権し、デル ポトロは2013年のウインブルドンでベスト4に進出して以来、グランドスラムで最高成績となるベスト8入りを決めた。2009年に20歳でグランドスラム初制覇を果たしたUSオープンは、デル ポトロにとって特別な場所だ。
トッププレーヤーが相次ぐ欠場となった今大会では屈指といえる好カードは、その期待を裏切らないエキサイティングな試合になった。まさか、そうなるとは最初の2セットからは予想もできなかったのだが……。
前半はティームの一方的な試合運び。2セットで3ゲームしか奪えなかったデル ポトロは明らかにコンディション不良で、ベンチでは苦しそうな表情で咳をしたり、タオルで頭をすっぽり覆ったりしている。疲労感で体が動かなかったという。
しかし第3セットを3-0で滑り出したデル ポトロが、このセットを6-1で奪い返す。世界中のどこへ行っても人気者だが、特にアルゼンチン出身者が多く、過去にチャンピオンにもなったこのニューヨークで受けるサポートは絶大だ。
その声援にあと押しされて生還したかに見えたデル ポトロだが、第4セットはティームが5-3でサービング・フォー・ザ・マッチを迎える。ところが、デル ポトロが土壇場でブレークに成功。さらにサービスキープで5-5に追いつき、5-6でのサービスゲームで15-40とダブルでマッチポイントを握られるが、そこから渾身の2本連続のエースを叩き込み、タイブレークに持ち込んだ。
タイブレークはデル ポトロが1ポイントしか与えずものにして、勝負は最終セットへ。28歳は若かりし日に世界を驚かせた強力なグラウンドストロークの変わらぬ威力を見せつけ、メジャー制覇に挑む24歳ティームも持てるスピードと力の限りでそれに応じた。
両者サービスキープでゲームを重ねたが、第10ゲームでついに均衡が崩れる。それは同時に決着のときを意味した。一つマッチポイントをしのいだティームだが、2度目のデュースのあとフォアハンドがサイドに逸れ、デルポトロにふたたびのマッチポイント。ファーストサービスをフォルートしたティームがセカンドサービスでエースを取ったかに見えたが、デル ポトロがチャレンジを要求した。コンピュータは非情な判定—-ダブルフォールトでのゲームセットを告げた。
長い両腕を広げて天を仰いだデルポトロ。
「実はセカンドセットで棄権しようとさえ思っていた。でも、ファンからエネルギーをもらった」
“アウェー”で戦ったティームも、それを敗戦の言い訳にはしなかった。
「応援が彼寄りになるのはわかっていた。でもあんな雰囲気でプレーする機会はそんなにないし、僕は楽しんでいたよ」
だからこそ……の激しくもさわやかなバトルだった。試合時間は今大会最長の3時間36分。
デル ポトロのUSオープン制覇からの年月は、ほとんどが手首のケガとの戦いだった。3度目の手術のあとの復活から20ヵ月が経つが、その間、まだグランドスラムで準々決勝の壁は越えていない。今回、その壁に立ちはだかるのは、2009年の決勝の相手でもあったフェデラーである。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)
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