「セレナはすぐにマーガレット・コートの記録を追い抜く」とクリス・エバート
母になったばかりのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は、もしかすると、今季にもグランドスラム・シングルス最多優勝数の記録「24」を凌ぐのではないかと、クリス・エバート(アメリカ)は予測している。
元世界1位のテニスプレーヤーだったエバートは、また、グランドスラム大会最多優勝数の現記録保持者、マーガレット・コート(オーストラリア)の名は、論議を勃発させた同性愛者の権利に関わる彼女の意見にも関わらず、オーストラリア・オープンのアリーナ(マーガレット・コート・アリーナ)の呼び名として残るべきだと言った。
「マーガレットと彼女の考えには同意できないけれど」と、現ESPNの解説者で、グランドスラム大会シングルスで18度優勝した元名選手のエバートは言った。「スタジアムの名は、彼女のテニスキャリアに敬意を表するものだと思う」。
セレナは来週のWTAツアー大会で、現在保持する「23」のグランドスラム・タイトルとともに、彼女のテニスキャリアを再スタートさせる。彼女は月曜日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでエキシビションマッチをプレーし、それから、1年以上ぶりとなるツアー大会のインディアンウェルズ(BNPパリバ・オープン/WTAプレミア・マンダトリー/3月7〜18日/ハードコート)に出場する。
セレナは昨年9月に初子を出産したあと、深刻な健康の問題に対処しなければならず、今年1月の今季最初のグランドスラム、オーストラリアン・オープンに出場することができなかった。
しかし36歳のセレナは、これまで、速やかにグランドスラム・タイトルを獲得し続けてきた。2015年のオーストラリアン・オープンで、エバートとマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)の記録「18」を追い越し、続く3年の間に、さらに4つのタイトルを獲得した。
エバートは、セレナは今季、少なくとも一つグランドスラム・タイトルを獲得できるだろうと考えている。
「できないというほうには賭けられないわ」と彼女は最近、AP通信の電話インタビューに答えた。
「もし彼女がグランドスラムの2大会で優勝したら、私は驚くわね。私は、彼女が1タイトルを獲ることに賭けるでしょう」
エバートは、記録についてはちょっとばかりわかっている人物と言える。
フロリダのテニス一家で育ち、父ジミーにテニスを教えられたエバートは、1972年、17歳のときにプロ転向し、その2年後、フレンチ・オープンとウインブルドンで優勝。そして、あっという間に世界1位となった。
彼女は記録である7度のフレンチ・オープン優勝を遂げ、出場したグランドスラムの56大会のうち52大会で、準決勝進出かそれ以上の成績を挙げた。のちにテニス名誉の殿堂入りした彼女は、ビリー ジーン・キング(アメリカ)の時代と、ナブラチロワ、シュテフィ・グラフ(ドイツ)の時代にまたがった18年のキャリアを通し、シングルスで172タイトル(グランドスラムのシングルス18タイトルを含む)、ダブルスで21タイトル(グランドスラムの女子ダブルス3タイトルを含む)を獲得した。
彼女のキャリアの勝率(90%)は、現世界1位のロジャー・フェデラー(スイス)のそれ(82%)よりも高い。この数字は、1968年にプロテニスの時代が始まってから、男女を通してもっとも高い勝率となっている。
ここに、現アメリカ・テニスマガジン編集者で、3人の成人した息子の母でもある、63歳のエバートの考えをさらにいくつかご紹介しよう。
セレナについて
エバートは、セレナがさらなるグランドスラム大会優勝を遂げるための最大のチャンスは、ウインブルドンのグラスコートの上にあると言う。
「このスターティング・ゲートから、彼女がどのように出るかは誰にもわからない」とエバートは言う。
「ウインブルドンは、パワーに有利に働き、パワーに実りを与え、ラリーが長くないという理由から、彼女が勝つチャンスがもっとも大きい大会でしょう。彼女はビッグサーブの持ち主だから。USオープンは、暑く、ハードコートだから、厳しいだろうと思う。(USオープンで活躍するには)動きがよくなければいけないし、非常にいいフィットネス・レベルでなくてはならないでしょうね」
ソーシャル・ニュース・ ウェブサイト、レディット(Reddit)の創設者のひとりであるアレクシス・オハニアンと結婚し、ベイビー・オリンピアを生んだセレナにとっては、テニスと家族をうまく両立させることが、新しい挑戦となる。彼は最近、「史上もっとも偉大な母」と読める4つの広告版をインディアンウェルズに向かう高速道路上に買った。
「子供ができると、それが今まで一度も経験したことのなかった感情的な構成要素となるの」とエバートは言う。
「私はこれまでもずっとこう言ってきた----誰かがセレナに疑念を抱いたときにはいつも、彼女は奮闘する。そういったことが、彼女により大きなモティベーションを与えるのよ。それが、より頑張ろうという刺激となり、彼女はいつも、ウィナーとして抜け出してきた」
マーガレット・コートについて
マーガレット・コートは、1960年から77年の間に、「24」のグランドスラム・タイトルを獲得した。そして、その24タイトルの中には、ほとんどの選手がオーストラリアまでわざわざ出向かなかった時代における、オーストラリアン・オープンの11タイトルも含まれいてる。一方、セレナは、シングルスとダブルスを合わせると、「64」ものグランドスラム・タイトルを獲得している。
コートは、1991年にキリスト教ペンテコステ派の聖職者となり、オーストラリアで、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)の権利と同性婚について、一貫して批判的姿勢を保ってきた。全国的国民投票のあと、オーストラリア政府は、12月、同性婚を合法化することを絶対的多数で可決していた。
コートは何年にもわたり、同性愛者のオーストラリア人プレーヤーと、エバートの友人でありライバルだった、同性愛者のナブラチロワを引き合いに出していた。昨年、トランスジェンダーの若者についてのコートの発言がキングの機嫌を損ね、キングは今年のオーストラリアン・オープンの際に、コートの名を会場のアリーナの名称から取り去るべきだと主張した。ナブラチロワは、オーストラリアのテニスの偉人、イボンヌ・グーラゴンの名に変えたらどうかと提案する公開状を書いた。
エバートは、コートの意見には同意できない、とすると同時に、言論の自由を信じる、と言う。
「彼女は聖書に則っており、その部分ですごく頑固で柔軟性がないのよ」
ロジャーとビーナスについて
36歳のフェデラーは、ごく最近オーストラリアン・オープンで優勝し、世界ランキング1位の座を取り戻した。エバートは、彼の気持ちの持ちようと、比較的故障の少ないキャリアに驚いている。
「彼はナダルのような、歯を食いしばって頑張るタイプじゃない。ロジャーはサービスから多くのフリーポイントを取り、ラリーも短く、ボールに向かって滑るように動き、力ずくで無理やりやるようなプレーは一切しない。彼の場合、すべてがタイミングと洗練された技術によるものなの」とエバートは言った。
「それに彼は、とても人に好かれているわ。彼が(勝利のあとに)泣くとき、世界中が彼といっしょに泣いていると思う。彼は感情を見せる…だからこそ人々は、ああも彼を愛しているのよ」
エバートはまた、セレナの姉、37歳のビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)がオーストラリアン・オープンで早期敗退した数人のアメリカ人女子に加わったことを、心配してはいないと言う。
「彼女は昨年、素晴らしい1年を送った。2つのグランドスラム大会で決勝に進出し、WTAファイナルズ(トップ8によるツアー最終戦)に出場した。なぜ彼女の体が迅速に回復しないかは、理解できることでしょう。それでも彼女は、変わらず素晴らしい年を送り得ると思う」
アカデミーのこと
エバートはフロリダ州ボカラトンの彼女のテニスアカデミーで、今でもほとんど毎日のようにボールを打っている。昨年USオープン決勝に進出したマディソン・キーズ(アメリカ)、オーストラリアン・オープンで世界1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)を相手に3つのマッチポイントを握ったローレン・デービス(アメリカ)は、彼女のアカデミーを通して輩出された。
エバートは、プロにならず、大学でテニスの奨学生となる子供たちの皆を、一人残らず誇りに思っている。
「これらの子供たちにとって、それはウインブルドンで優勝するようなことなのよ」と彼女は言った。
「それも素晴らしいゴールよ。そういった子供たちの指導者となり、彼らが自分たちのゴール、夢に至る手助けをするのは、本当に楽しいわ」
両手打ちバックハンド、ほとんどすべてのボールを打ち返す、安定したテニスで知られたエバートは、ごく最近、練習コート上で14歳の選手たちに負けずについていけるようにする手助けとするため、サプリメントの会社のオステオ・バイ-フレックス(Osteo Bi Flex)とパートナーシップを結んでいる。(C)AP(テニスマガジン)
※写真はクリス・エバート(アメリカ)、2017年10月のWTA最終戦にて撮影
SINGAPORE - OCTOBER 25: WTA Legend Ambassador Chris Evert of the United States talks during the WSJ+ Tennis Legends Series event on day 4 of the BNP Paribas WTA Finals Singapore presented by SC Global at the Conrad Hotel on October 25, 2017 in Singapore. (Photo by Julian Finney/Getty Images for WTA)
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