ベルギーの次世代リーダー、メルテンス「私は普通の、静かな女の子」 [オーストラリアン・オープン]

 オーストラリア・メルボルンで開催されている「オーストラリアン・オープン」(1月15〜28日/ハードコート)。

 エリース・メルテンス(ベルギー)がベルギーの中世の町、ルーベンですくすくと育っていたとき、キム・クライシュテルス、ジュスティーヌ・エナンは、ベルギー・テニスを新しい高みにいざなっている最中だった。彼女は5歳だったとき、初めてクライシュテルスのプレーを見たことを思い出す。その年、クライシュテルスはフレンチ・オープンで決勝に進出した。

「彼女たちが成し遂げたことは、素晴らしいことだった。もちろん私は、彼女たちを尊敬していたわ」とメルテンスは言った。

 今、メルテンスは先輩たちの大きな足跡をたどっている。22歳の彼女は、第4シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)を6-4 6-0で下し、オーストラリアン・オープンの準決勝に進出した。ベルギー人女性がそれをやってのけたのは、クライシュテルスの最後の出場となった2012年大会以来のことである。

 ベルギーにあるクライシュテルスのテニス・アカデミーで、ここ3年トレーニングしてきたメルテンスは、今、グランドスラム大会で4度優勝した先輩に近づきつつある。クライシュテルスは今週のメルテンスの試合をすべて見て、彼女に励ましのテキストメッセージを送っていた。

「彼女(クライシュテルス)はまた、私のこの前の試合でストレスを感じていた」とメルテンスはスビトリーナを倒したあとのオンコート・インタビューで言った。「彼女は『ああ、もう、本当に神経がすり減ったわ』と言っていたわ」。

 メルテンスのテニスは、特に急速にランキングを上げた昨年、明らかにクライシュテルスの助言、そしてコーチでありボーイフレンドでもあるロベ・セイッサンスとの仕事から実りを得ていた。

 彼女の急速な上昇は、昨年1月のオーストラリア・ホバートでの小さな大会で始まった。それはオーストラリアン・オープン予選と同じ週に開催されるWTAの大会で、メルテンスと彼女の予選決勝(3回戦)の相手だったサーシャ・ヴィッカリー(アメリカ)は本戦の2回戦で顔を合わせた(ビッカリーは予選決勝で敗れたが、その後、ラッキールーザーで本戦出場)。ふたりは、ともにメルボルンの予選にエントリーしており、ホバートを棄権する必要性に迫られていたのだが、ビッカリーがこの対戦を途中棄権したのだ。このときメルテンスはホバートに残る選択をし、ほどなくして初のWTAタイトルを獲得し、この選択は報われたのだった。

 彼女はまた、フレンチ・オープンの3回戦にも進出し、2017年の終わりにはランキングが120位から35位にまで上昇した。それは安全に、今年のオーストラリアン・オープンの本戦に出場できる位置だ。そしてメルテンスは今年の初めにホバートに戻っていき、ふたたびタイトルを獲得した。

「ここ(メルボルン)では、あまり多くを期待してはいなかった」とメルテンスは言った。「私は1回戦で予選勝者と当たったから、その試合では勝つことを予想していた。常に簡単ではないけれど、でも1回戦、2回戦、と進んでいくうちに……私は準決勝に進むことなんて、本気で期待してはいなかった」。

 メルボルンでの驚くべきプレーで、今、メルテンスは、かなりの注目を集め始めている。これは本人が『普通の、静かな女の子』と表現する22歳の女性にとって新しい経験だった。

「彼女は、精神的に非常に強いように見える。動きもいいし、これといった弱点がないわ」と、選手時代に「18」のグランドスラム・タイトルを獲った偉人、マルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)は言った。

「キムも弱点を持たない選手だった、そうでしょう? (クライシュテルスは)どうやってプレーすべきかを知っているから、きっと彼女がエリースに何かいい助言を与えたのだと思う。チャンピオンの見解を聞くというのは、常に助けになるものよ」

 メルテンスはまた、女子テニス界の予想のつきにくさ、今までにない層の厚さの、生きた証拠でもある。この傾向ゆえに、昨年、エレナ・オスタペンコ(ラトビア)やスローン・スティーブンス(アメリカ)のような新参者が、どこからともなく現れてグランドスラム大会で優勝するということが起きた。また、ここ20のグランドスラム大会のうち19大会で、初の準決勝進出者が頭角を現していた。

 そのような現象を目にしたことが、自分もまたグランドスラム大会のタイトルを狙い得ると信じる手助けになった、とメルテンスは言う。

 今、彼女は初優勝まであと2勝と迫った。彼女の次の相手は、第2シードのカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)だ。ウォズニアッキは深夜1時半過ぎに終わった準々決勝で、カルラ・スアレス ナバロ(スペイン)をフルセットの戦いの末に下していた。

「私には失うものは何もない。それは間違いないわ」とメルテンスは言った。「私は今日と同じように、ちょっぴり“アンダードック”であるはず。準備はできているわ。私はただ全力を尽くし、それがどこで終わるか見てみるだけよ」。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はエリース・メルテンス(ベルギー)17日に撮影
Photo: MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 17: Elise Mertens of Belgium celebrates winning in her second round match against Daria Gavrilova of Australia on day three of the 2018 Australian Open at Melbourne Park on January 17, 2018 in Melbourne, Australia. (Photo by Michael Dodge/Getty Images)

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