オーストラリアン・メルボルンで開催されている「オーストラリアン・オープン」（1月15～28日／ハードコート）の男子シングルス4回戦で、優勝歴6回のノバク・ジョコビッチ（セルビア）がチョン・ヒョン（韓国）に驚かされ、ストレートセットでの敗北を喫した。それはテニス・サングレン（アメリカ）が第5シードのドミニク・ティーム（オーストリア）を相手に番狂わせを演じた少しあとに起きた。

　シーズン最初のグランドスラム大会は、予想がつきにくいものとなる傾向があるが、この日連続で起きた番狂わせの結果、準々決勝のカードのひとつがまったく予想外のものとなった。グランドスラム大会でベスト8に進出した初の韓国人、チョンと、先週まで一度もグランドスラム大会で試合に勝ったこともなければ、トップ10に勝ったこともなかったサングレンが、準決勝行きの切符を賭けて対決することになったのである。

　世界58位のチョンは、7-6(4) 7-5 7-6(3)で押しきったその勝ち試合の中で、故障の影響を受けている様子のジョコビッチを容赦なく攻撃した。

「今日の勝利は僕の母国のためのものだ」とチョンは言った。彼は、自分を勝利まであと2ポイントというところに推進させた、体を伸ばし、スライドしながら打ったフォアハンドを含め、47本のウィナーをもぎ取った。

　チョンは、ジョコビッチは自分にとってのインスピレーションの源なのだと明かしもした。

「もっと若かったとき、僕はノバクの真似をしようと努めていた。彼は僕の憧れの選手だった」とチョンは言った。「今夜起きたことが信じられない。今夜、夢が現実になった」。

　ジョコビッチは、試合を通し、特にバックハンドを打つため体を伸ばす際に、何度もしかめ面を見せた。彼は肘のための治療を再検討する必要がある、と言ったが、故障がチョンの勝利の価値を減ずるようなことは望んでいなかった。

「素晴らしい、驚くべきパフォーマンスだった」とジョコビッチは言った。ジョコビッチは、ツアーから離れている間にランキングを落とし、今回は第14シードとして大会に臨んでいた。

「感銘を受けた。困難な状況に追い込まれるたびに、彼は信じられないようなショットを生み出した。コートの後ろから…彼はまるで壁のようだった」

　チョンは、第4シードのアレクサンダー・ズベレフ（ドイツ）を倒したばかりのところだった。

　ジョコビッチはぎりぎりまで、オーストラリアン・オープンでプレーできるかわからないでいた。それからドナルド・ヤング（アメリカ）、ガエル・モンフィス（フランス）、第21シードのアルベルト・ラモス ビノラス（スペイン）に対するタフな3試合を潜り抜けた。

「ひとたび試合の中に入ったら、多くのことに対処することになる。過去にも似たような状況を経験した。試合中にちょっとした故障に苦しむことになったが、なんとか勝つことができたという…」とジョコビッチは言った。

「試合を止める必要があるほど、痛みのレベルは高くないと感じた。もちろんそれが、サービスを妥協させたとはいえね。それが人生だ。次のことに移らなくてはならない」

　それから、テニスがいた。テネシー出身の26歳は、先週まで一度もグランドスラム大会で試合に勝ったことがなかったのだ。97位のサングレンは、ティームを6-2 4-6 7-6(4) 6-7(7) 6-3を倒し、2014年オーストラリアン・オープン優勝者のスタン・ワウリンカ（スイス）に対する2回戦での勝利が、単なるまぐれでなかったところを示して見せた。

　オーストラリアン・オープン初出場で準々決勝にまで至った選手は、ここ20年で彼を含め、2人しかいない。サングレンは第4セットでマッチポイントを決め損ねたが、崩れずに踏ん張り、最終的にティームを振りきった。

「これが夢なのか否か、僕にはわからない。君たちがこうしてここに集まっているのだから、たぶん夢じゃないんだろう」と、サングレンは勝利のあとのオンコート・インタビューで言った。「僕は下着姿じゃないから、たぶん夢じゃないね」。

　彼はのちに、これはまさに『夢じゃないかどうか、つねってみてくれ』と言いたくなるような瞬間だ、と表現した。

　サングレンは手にした8度のブレークチャンスの半分をものにし、ティームに許した12のブレークポイントのうち、10ポイントをセーブした。彼は63本のウィナーを放ち、38本のアンフォーストエラーをおかした。

「この波に乗り続けるよう努めるよ」とサングレンは言った。彼は、曾爺さんを記念し、その名を頂いた。

　一方、前年度覇者のロジャー・フェデラー（スイス）は、14度目の準々決勝進出を遂げるのに、それほど苦労することはなかった。マートン・フクソービッチ（ハンガリー）を6-4 7-6(3) 6-2で下したフェデラーは、次のラウンドでトマーシュ・ベルディヒ（チェコ）と長年のライバル関係を復活させることになる。ベルディヒはファビオ・フォニーニ（イタリア）を6-1 6-4 6-4で下して勝ち上がった。

　フクソービッチに対する勝利は、2018年大会におけるフェデラーにとって初の日中での試合で起きた。彼は、ビーチのためにサングラスとタオルが必要だとジョークを飛ばしたあと、唯一の変化は、目覚まし時計を違う時間に合わせてセットすることだけだ、と言った。(C)AP（テニスマガジン）

※トップ写真はノバク・ジョコビッチ（セルビア）
Photo: MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 22: Novak Djokovic of Serbia looks dejected in his fourth round match against Hyeon Chung of South Korea on day eight of the 2018 Australian Open at Melbourne Park on January 22, 2018 in Melbourne, Australia. (Photo by Cameron Spencer/Getty Images)