イズナーを下す番狂わせを演じたクライノビッチ「人生最良の日も大会はまだ終わっていない」 [ロレックス・パリ・マスターズ]
フランス・パリで開催されている「ロレックス・パリ・マスターズ」(ATP1000/10月30日~11月5日/賞金総額427万3775ユーロ/室内ハードコート)のシングルス準決勝で、予選から勝ち上がったフィリップ・クライノビッチ(セルビア)が第9シードのジョン・イズナー(アメリカ)を6-4 6-7(2) 7-6(5)で倒す番狂わせを演じ、決勝進出を決めた。
イズナーは、トップ8によるATPファイナルズ出場権をかけてプレーしたが、敗戦が決まった瞬間、その夢も終わってしまった。
最初のマッチポイントで勝利を決めたあと、クライノビッチは腕を挙げ、背中から倒れてすすり泣いた。それから彼は膝をついてかがむと、コートにキスをした。
「マッチポイントでサーブをしたとき、僕の手は振るえていた」とクライノビッチは言った。「感情をコントロールするのは難しかった。僕の人生で最良の日だが、大会はまだ終わっていない」。
彼はキャリア初タイトルをかけ、日曜日の決勝で、ジャック・ソック(アメリカ)と対戦する。ソックはこの日、地元選手のジュリアン・べネト―(フランス)を7-5 6-2で倒して勝ち上がった。ソックはこれまで一度もマスターズで優勝したことがなく、もしここでそれをやってのければ、ロンドンで行なわれるシーズン末のATPファイナルズ出場権を獲得することができる。
ソックは2度、自分のサービスゲームを落としたが、べネト―のサービスを5度ブレークした。ソックは今年3つ目、キャリアで4つ目のタイトルを目指して決勝に挑む。引退を予定しているべネト―にとって、これは最後のパリ・マスターズとなるが、引退の期日は2018年のいつかとされ、まだはっきりとは決まっていない。
「僕は自分のテニスをプレーすることができた。思いきって打っていくことが」とソックは言った。「明日も自分の最高のテニスをしなければならない。クライノビッチが非常に才能ある選手であることは、皆が知っており、彼はそのことをここで示して見せている」。
クライノビッチに敗れたイズナーは、失望を隠そうとはしなかった。
「僕はここで、かつて一度もやったことのなかった何か(ATPファイナルズ出場権獲得)をやってのけるチャンスを手にしていた」とイズナーは言った。彼は昨年のパリで準優勝しており、またも、手が届きそうで届かない初のマスターズ優勝に、一歩およばなかった。
「この負けは胸にこたえるだろう。なぜって、自分がこの準決勝でもっともランキングの高い選手だとわかっていたからだ」と彼は言った。
77位のクライノビッチは、2003年のアンドレイ・パベル(ルーマニア)に次いでランキングの低い、マスターズ決勝進出者だ。その年パリで決勝に進出したパベルは、191位だった。
25歳のクライノビッチは故障により挫折し、この大会前には、全キャリアを通し17試合にしか勝っていなかった。
彼はまた、やはりパリで2012年に決勝に至ったジャージー・ヤノビッチ(ポーランド)以来となる、予選から決勝までたどり着いたプレーヤーとなった。
しかしながら彼は、第1シードのラファエル・ナダル(スペイン)が右膝の故障で棄権したために、準々決勝をプレーしないで済んだことに助けられていた。ナダルは、11月12日から始まるATPファイナルズでプレーできるよう体調を取り戻せるか否かについては、明言を避けている。
この日の準決勝で、第1セットの最終ゲーム、自らのサービスゲームを迎えたクライノビッチは、ラブゲームでこれをキープした。
一方イズナーは、第2セットのタイブレークで相手を圧倒し、サービスエースによって試合をセットオールに持ち込んだ。
イズナーは第3セットの出だしにブレークポイントをつかんだが、フォアハンドのアンフォーストエラーによって、そのチャンスを逃してしまう。彼は、クライノビッチのサービスだった第9ゲームで得た、30-40からのもうひとつのチャンスをも、ふいにしてしまった。
「ほんの数インチ、ボールをミスしてしまった」とイズナーは言った。「今日、僕のサービスはよかったから、あれは本質的にマッチポイントも同然だった」。
緊迫した最後のタイブレークで、イズナーは最初3-0とリードしていたが、そこからクライノビッチが5-4と巻き返した。イズナーは31本目のエースで5-5のタイに持ち込んだが、クライノビッチは、次のポイントでイズナーの足元に刺さる素晴らしいリターンを放ち、自らのサービスでマッチポイントを迎えることになった。
将来を嘱望されたキャリアを故障によって妨げられた元トップ10ジュニアのクライノビッチにとって、この決勝進出は、とりわけ香しいものだった。彼は右手首に発見された骨の異常の治療を受けなければならず、2011年には故障した右肩に手術を受けていた。
「僕は本当に深刻な故障をしたけれど、落ち着きは保っていたんだ」と彼は言った。「いつの日か、すべては戻ってくるとわかっていたんだよ」。
彼は、故障に苦しんでいた期間に、同胞のノバク・ジョコビッチ(セルビア)から受けたサポートのことを忘れてはいなかった。
「僕らは親しい友人同士なんだ」と、クライノビッチは言った。「彼は、故障の直後に僕を助けてくれていたんだよ」。
クライノビッチはまた、苦境にいた自分をスポンサーたちが見捨てたことも忘れていなかった。
「僕は数年前にトップ100入りしたが、そこで突然、手首に通常はないはずの骨があることが発見された」と彼は振り返った。そして「どんどん年をとり、すべてのスポンサーに“ノー”と言われる状況は、精神的に非常に辛かったよ」。
コートのオープンスペースに叩き込んだフォアハンドのウィナーで、彼は勝利をものにした。その瞬間、クライノビッチのコーチ、ペタル・ポポビッチは、喜びにこぶしを突き上げ、熱狂的に勝利を祝った。
「僕らは4ヵ月前からいっしょに働き始めたんだが、信じられないほどいい具合にいっている」とクライノビッチは言った。「僕は10歳の頃から彼のことを知ってるんだよ」。(C)AP(テニスマガジン)
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