[浜松三ケ日国際女子] 出場選手紹介⑧ルー・ジアジン(大会提供レポート)

 1日でシングルス準々決勝と準決勝の2試合、ダブルスでも準決勝の計3試合を戦い、しかもそのいずれもがフルセットにーー。獅子奮迅の戦いを見せるファイターは、厳しいスケジュールにも関わらず、明るい笑顔と礼儀正しい挨拶を周囲に振りまいている。

 ルー・ジアジン(中国)の今大会は、その始まりからして、波乱と不思議な縁に満ちていた。浜松三ケ日国際の前週、彼女は香港のWTAツアーに単複で参戦し、ダブルスで決勝進出を果たす。ところが、香港を襲った台風のため試合開始が遅れ、ダブルス決勝を終えたのは夜の11時近く。単複の表彰式を終え会場にあとにしたときには、すでに日付は変わっていた。

 しかも翌日も悪天は続き、予定していた飛行機の離陸は遅れに遅れる。月曜日の午後に香港を飛び立った飛行機が、中部国際空港に着いたのは午後6時頃。そこから電車を乗り継いで、会場の最寄り駅に着いたときには、すでに10時頃だった。周囲は暗く、タクシーが来る気配もない。不安を抱え、微かな明かりを頼りに助けを求め近くの店に飛び込むと、なんとそこで大会スタッフたちが食事をとっていた。かくして、香港でダブルス決勝を戦い終えた約20時間後、彼女は三ケ日のホテルに辿り着いたのだった。

単複で決勝進出を果たしたルー・ジアジン(中国)(写真提供◎大会実行委員会、撮影◎てらおよしのぶ)

 波乱に満ちた足跡ということで言えば、現在27歳の彼女のキャリアにも、種々の苦難と周囲の助力が散りばめられているという。双子の妹もプロ選手だったルーは、4年前までは出身地の遼寧省のサポートを受け、ダブルスを中心に国内外でプレーしてきた。しかし2013年に省からの支援が途切れると、3ヵ月間で遠征費用は底をつく。そのとき、ルーにツアープレーヤーとしての夢を追うことを勧めたのは、苦楽をともにしてきた妹だった。自らは、ジュニア選手たちを教えるコーチ業でお金を稼ぎ、その一部を費用として姉に回す。

「彼女は、私のために多くを犠牲にしてくれているわ」

 少し寂しそうに、双子の姉は微笑んだ。

 台風接近に伴う天候不順のため、彼女は日曜日(10月22日)にも、単複決勝の2試合を戦うことを強いられる。それでも「可能な限り早く、ランキング200位内に入りたい」との目標を見据える彼女は、笑顔で大会最終日を迎える。

レポート◎内田暁(大会オフィシャルライター)

※10月21日(土)に行われる予定だった単複決勝は雨天により中止となり、22日(日)に順延となった。

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