Topic5|基本はスピンサービス|堀内昌一先生×鈴木貴男プロ×高田充コーチ_特集「本気でサービス2010」
本誌最強サービス指導陣の堀内昌一先生、鈴木貴男プロ、高田充コーチの3人がお届けするサービスレッスン。サービスにおいてもっとも多いと考えられる欠点弱点を7つのトピックとしてピックアップし、その問題点を話し合い、解決策を導いていただいた。今回は「 Topic5|基本はスピンサービス」だ。【2010年10月号掲載】
ひとつの打法で複数の球種をつくれる
3つの球種で3つの打法×
→ いちいち打ち方を変えたら打ち方で球種がばれてしまう!
Q 基本はナチュラルスピンサービス(自然な回転がかかったサービス)ということでアプローチをしてきましたが、どうしてそれをすすめてきたのか考えを聞かせてください。
僕は、テニスというスポーツは「時間と場所の奪い合い」だと思っていて、いつもそれが指導のベースにあります。
日本のプレーヤーは総じて小柄で、質量が小さい分、効率よくポイントを取ることを目指してきました。粘り強く戦ってポイントを取るテニスです。ところが道具が進化し、回転系のボールを誰もが打てるようになると、時間と場所を奪い合うという戦術が行なわれるようになってきました。そんな中、取り残された感があるのが「サービスの戦術」です。
相手から時間と場所を奪うために、サービスも回転(スピン)が必要です。それがゲーム内容を格段によくするでしょう。だから、ナチュラルスピンサービス(自然な回転がかかったサービス)をおすすめするのです。このサービスは打ち方を変えることなく、球種をアレンジできます。
球種をつくるということは、ボールの精度が変わるということですが、打ち方を変えないのは、レシーバーに読まれないように打つことはもちろん、同じ打法であることで精度を落とさずにプレーすることにもなります。いちいちスイングを変えていたら、精度が落ちますが、同じスイングで、ラケット面のボールへの当て方をほんのわずかに変えるだけで球種をつくれるなら、精度を高く保つことができます。
目指すサービスはまさにそれなのです。今のプロたちを見てください。彼らが球種をつくるときに、スイングをいじるという発想はまったくありません。だから目指すはしっかりとした打法を一つ覚えることです。
かつての指導は、フラット、スピン、スライスと3種類の回転に対して3つの打法を指導するものでした。ところが今は、ひとつの打法「スピンサービス」をベースに、何種類もの球種をつくるという指導です。フラット系、スライス系、スピン系という球種に、回転量と速度のアレンジを加えます。このサービスを目指しています。
例えば、ネットを取りたいときと相手を外に出したいときは、どういうサービスが必要か。それぞれの目的を達成するサービスを打つというのが、これまで行なってきたレッスンです。もっと曲げたい、もっと滑らせたい、もっと弾ませたいといったニーズに応えるサービスは、やはりスピンサービスだと思います。
今回、鈴木プロが見せたサービスは、本人はスライス系サービスと言い、もっとも基本となるサービスなのだそうです。ところが、ボール軌道を見ていくと、ネットの上のものすごく高い位置を通って、サービスボックスにズドンと落ちています。スライス系という言葉の響きからは、横回転をイメージしますが、間違いなく縦回転、いや斜め回転もかかっていました。
このように球種というのは、フラット、スライス、スピンというはっきり区切らなければいけないものではないのです。ひとつの打法でもボールに対するラケット面の当て方と、重心の移動を、ほんのわずかに変えることで球種をつくることができます。私はこれを「合成サービス」と呼んでいます。どういうサービスが必要か、それがインパクトに伝わるように感覚を磨いていきましょう。
僕は、サービスの打法はひとつで、スピードと回転の2つをアレンジしています。スピードとスピンを両方足したのがサービスで、全部で「10」あるとしたら――
●フラットサービスは、スピード8~9+回転1~2
●ボディへのスライスサービスは、スピード7+回転3
●セカンドサービスで回転量が欲しいときは、スピード6+回転4
●キックサービスは、スピード5+回転5
●キックサービスでも速めが欲しいときは、スピード6+回転4
というような感じです。まだまだサービスの種類はありますが、どういうサービスかということを説明するのが難しいから、こういう言い方にしてみました。ちなみに、スピード重視のフラットもあれば、回転重視のフラットもあります。そのときはスピードと回転の比率を変えます。
もし、何種類のサービスを持っているかと聞かれたら、答えられないくらい。フラット、スライス、スピンの3種類などという答えはないです。フラットもジャンプして高い打点で打つフラットもあれば、そんなにジャンプせずに低い打点で打つフラットもあります。
そんなことを考えていくと、倍の倍……数えられないのです。こういうアレンジはみなさんもきっとできますから、そのためにはひとつしっかりベースとなる打法を身につけて、それを常に基準にして、少しの変化をつけていくようにするとよいと思います。
レッスンは鈴木貴男が担当します!
僕の基本サービスはスライス系です。グリップはコンチネンタルで、スタンスはクローズドスタンス、体のひねり戻しを使って打ちます。そのとき動作方向は常に右斜め上です。この方向にラケットを加速させていき、腕が回る中にインパクトがあります。そうすると、ラケット面がボールに対して斜めに当たってスピンがかかります。その打球は放物線を描いてネットの上を高く越えていきます。
回転量を減らして速度を上げたり、回転量を増やして速度を抑えたりしますが、さらに球種をつくるときは、ほんのわずかな指先程度の感覚を変えるだけで、スイングは変えません。ボールに対するラケット面の当て方をほんのわずかに変える程度です。それだけでボールを曲げたり、滑らせたり、弾ませたりすることができます。この感覚を鍛えていくためには、まずしっかりとしたスイングをひとつ確立することが重要です。
1 ボールがネットを越える高さ
2 僕の基本サービス「スライス系サービス」
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