家族の証言〜母が語る「青山修子」
シリーズ「家族の証言」は、そのタイトル通り、選手の家族に選手の小さい頃の話や思い出を存分に語ってもらって構成したもの。家族だからこそ知る、話せる、貴重なエピソードの数々は非常に興味深い。今回は青山修子選手について、母・京子さんが語ってくれた。【2012年11月号掲載】
青山修子 ※プロフィールは当時のまま
1987年12月19日生まれ。東京都町田市出身。9歳でテニスを始め、日大三高を経て早大へ。卒業後にプロ転向。昨年はウインブルドン、USオ プンの複出場、ユニバーシアード複金メダルを獲得。2012年前期ナショナルBチーム。世界ランク単353位、複102位(9月10日付)。近藤乳業所属
「与えられたことは黙々とやる子。
みなさんがダブルスの相手をしてくれた」
ダブルスが好きな理由
姉、兄のいる末っ子です。3人とも仲が良く、それは今でもそうです。修子の小さい頃は、ほとんど外で遊んでいました。“公園の主”と言われるくらいに家に帰ってきませんでしたね。とても活発な子で、家よりも外で遊ふのが大好きでした。ローラーブレードが流行っていた時期がありましたが、どこに行くにもそれで、遠くへ行っていつも心配していました。
与えられたことは黙々とやる子でした。遊びはもちろんですが、勉強も何をするのでも、とにかく一所懸命にやる。周りからもそのように言われていましたし、私自身も、そんな姿を見ながら、よくそんなに一所懸命に、真面目にできるなと思っていました。
テニスを始めたのは小学4年生の頃です。私も好きでしたが、主人が大好きで、通っていたテニスクラブによく修子を連れていったんです。大人の方ばかりでしたけど、みなさんが本当によく相手をしてくださって、週末はそれこそ一日中、そのテニスクラブで過ごしていました。
主人が修子と組んでダブルスをするんです。みなさんからすれば遊んでくれる感覚だったと思いますが、修子にはそれが楽しかったのでしょう。今、シングルスよりもダブルスの戦績の方がいいのは、それが理由だと思っています。とにかく、大人の上手な方とダブルスの試合ばかりしていました。シングルスよりもダブルスの経験の方が圧倒的に多かったのです。特定のコーチに教えてもらうのではなく、みなさんに遊んでもらい、ダブルスをしてもらい、それで上達していきました。そういう意味で、修子はみなさんに育ててもらったと、本当に感謝しています。
外で遊ぶことよりもテニスに夢中になり始めましたが、勉強もしないといけませんので、小学5、6年生の頃は日能研(進学塾)に週4日は通っていました。それで自宅から近く、全中にも出場していた日大三中に進み、日大三高ヘ進学しました。高校では男子テニス部の顧間でした福家先生の配慮もあって、男子テニス部に一人だけ入れていただきました。中学、高校の部活で、すごく成長できたと思っています。テニススクールで鍛えられたことがありませんでしたので、早大に進学すると聞かされたときは、ついていけるのか心配でしたが、本人が選んだことですからね。
あまり相談されたことはありません。何でも自分で決めていきます。プロになるときも相談はなかったですね。大学4年生、最後の王座が終わるまでは(進路は)白紙というか、迷っていたと思います。実業団からも声を掛けていただいていたようですが、プロになると聞いたときは驚かなかったですね。「あ、そう」とそれだけで。(プロ生活が)続かなければ、そのとき考えればいいかなと、私もあまり真剣には考えなかったです(笑)。何よりも修子が決めたこと。修子の人生だから、私が口出しする必要はないという気持ちでした。主人も10年前に「好きなことをやる」と脱サラしてテニスクラブ(本厚木ローンテニスクラブ)をつくりましたから……。
「すぐ来てほしい」
子供の頃は試合に負けるとよく泣いていました。ああ見えて、負けん気は強くて。大学時代も泣いていたような気がします。プロになってからは、あまりそんな姿は見なくなりましたね。
試合はできる限り見たいので、見に行くようにしています。昨年のウインブルドンも見に行きました。もともと行く予定はなかったんです。(ダブルスの)予選を突破したあと、修子から電話があったんです。夜中の2時半頃でした。たぶん周りのみなさんから、初めてのグランドスラム大会出場なので、お母さんを呼ぶように言われたのでしょう。「すぐ来てほしい」と言うので、翌日にすぐに出掛けました。そこで修子が戦っている姿を見て、何だか不思議な気分になりました。
すごくポジティブな子で、あまり愚痴もこぼしませんし、私の方が見習うところが多いです。淡々としていて、もう少し甘えてもらえるとうれしいんですけど、性格ですかね。私の中ではテニス、テニスの生活をさせてきたつもりはなかったのですが、今になってみると、やっぱりそうだったのかなと思います。普通の子供の生活ではなかったかなと……。でも今はプロになって一所懸命にやっていますから、できるところまで続けてほしいというのが願い。これからも好きなテニスを楽しくやってくれるのが一番だと思っています。
※トップ写真は2019年10月チャイナ・オープンで撮影(Getty Images)
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