アンドレスクが盟友マリノとともにグランドスラム復帰戦に勝利「決して諦めなかった」 [オーストラリアン・オープン]

写真はビアンカ・アンドレスク(カナダ)(Getty Images)

今年最初のグランドスラム大会となる「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦2月8~21日/ハードコート)が開幕し、初日は男女シングルス1回戦が行われた。

 メルボルン・パークのほとんど空のスタジアムに、ビアンカ・アンドレスク(カナダ)の「レッツゴー」「カモン!」という叫び声が響いた。これは彼女にとって、15ヵ月ぶりの大会だった。

 2019年USオープン女王がテニスシーンに戻ってきたという事実の明確な印は、月曜日の勝負を分ける場面で彼女が見せたカギとなるショットだった。彼女はラッキールーザーで本戦入りしたミハエラ・ブザネスク(ルーマニア)に対する1回戦の第3セット3-3からの、自分のサーブで0-40と劣勢に立たされていた。そのピンチと呼べる場面でアンドレスクはフォアハンドで2本のウィナーを決め、それからバックハンドのウィナーを決めて5ポイント連取でキープに成功したのだ。彼女はそこから3ゲームを連取し、6-3 4-6 6-3のスコアで試合をものにした。

 試合が終わったとき、アンドレスクは目を閉じて両手で顔を覆った。それからコートサイドの椅子に座って目を潤ませ、頭を下げて少しの間考え込んだ。

「あそこのあの瞬間、私は(積んできた努力の)すべてがどれほど価値あることだったかに気付き、噛みしめていたの」とアンドレスクは明かした。「私は決して諦めなかったわ」。

 彼女は今、ワクワクしているはずだ。そしてそれは、テニス界もそうに違いない。第8シードのアンドレスクがどれほど長くドローの中にとどまるかに関わらず、一番重要なのは“テニス界でもっとも将来を嘱望される才能のひとりが戻ってきた”ということだ。

 月曜日にアンドレスクはパワフルなストロークとガッツ溢れるプレーぶり、そして彼女をグランドスラム制覇へと導いたインテリジェンス(試合の知性)を見せつけた。彼女は10代だった2019年9月のUSオープン決勝でその賢い試合運びを披露してセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を倒し、グランドスラム初タイトルを獲得したのだ。その1ヵ月後、アンドレスクは左膝の半月板の損傷でツアーから遠ざかることになった。

「彼女には輝かしい未来がある。彼女はまだ本当に若いのに、信じられないほど成熟している。私はこれまでもいつも、彼女の灯は明るく輝いていると思うと言ってきた」とセレナはアンドレスクを評価した。「彼女はグランドスラムでもっと多くのタイトルを獲り続けることのできる素晴らしいテニスをしているわ」。

 2021年グランドスラム・シーズンが始まった中、祝福すべき復帰がほかにもあった。アンドレスクの同胞であり頻繁に練習パートナーを務め、オーストラリアでは夕食ともにする仲のレベッカ・マリノ(カナダ)もその中に含まれている。

 元トップ40のマリノは鬱病のために5年近くツアーを離れ、復帰後は深刻な足のケガに苦しめられていた。同日に彼女は8年ぶりのグランドスラム大会をプレーし、ワイルドカード(主催者推薦枠)で出場したキンバリー・ビレル(オーストラリア)を6-0 7-6(9)で倒した。

「楽ではない人生を歩んだ人々について話すなら、彼女はそのうちのひとりだ」とアンドレスクのコーチを務めるシルバン・ブルノー氏は語った。

 どんなスポーツや仕事でも長い不在の理由は様々だが、アンドレスクとマリノはともにかつていた場所に戻ろうという称賛に値する意欲を象徴する存在だった。彼女たちが分かち合うもうひとつのものは、新しいチャンスへの感謝の気持ちだ。

「私が他の人々に言いたいのは、人生のその時期は永遠ではないということです。そしてもしよい精神状態を保つために正しいことをするなら、ただ話をするだけでもメンタルヘルスのいろんなステップを踏むことでも、それはとても重要なことです。もし自分がそれをやっていなかったなら、今の私はいなかっただろうと感じています」と30歳のマリノは自身の経験も交えて話した。

 現在世界ランク300位圏外にいるマリノは予選3試合に勝って本戦出場権を手に入れ、そのあとメルボルン・パークで前哨戦1試合をプレーした。それに対してアンドレスクは、今大会にぶっつけ本番で臨む道を選んでいた。

「大きな大会の前に何試合かプレーしたほうが彼女にとっていいことなのは間違いないよ。緊張をほぐし、ただ音楽とプレッシャーと向き合う。それはとても残念な状況だった」とブルノー氏はコメントした。ブルノー氏はメルボルン入りした際の検査で陽性と診断され、アンドレスクも検疫期間中は練習のためにホテルを離れることを許されなかった。

 ロックダウンの間にアンドレスクは『コール・オブ・デューティ』というビデオゲームをプレーし、2019年からの自分の試合映像を見て過ごした。それは彼女を競技に向かうためのムードと精神姿勢に置き、戦闘モードに入っていくために役立った。月曜日の様子を見た限りでは、功を奏したように見える。

「今日の試合はまったく簡単ではなかったわ。自分が戦い抜いたことについて、本当にこの上なくうれしく思っているわ」とアンドレスクは振り返った。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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