敗れても未来を見据える19歳シンネル、シャポバロフが深夜の激闘を制す [オーストラリアン・オープン]
時間は午前1時に近づき、19歳のヤニク・シンネル(イタリア)の顔には疲労の色が滲み始めていた。
ラファエル・ナダル(スペイン)と2週間に渡って練習し、ATPツアーで2大会連続となる優勝の過程も含めて10連勝中だったことは、この若きイタリア人にいい影響を与えていた。しかし第11シードで21歳のデニス・シャポバロフ(カナダ)に対するオーストラリアン・オープン1回戦の前日にタイトルを獲るというのは、体力的に負担がやや大きすぎたようだ。
サービスゲームを落として第4セットを奪われたあと、シャポバロフは左肩に治療を受けるためにメディカルタイムアウトを取った。彼はその前に、トイレ休憩について主審と長く活発なやり取りをしていた。
試合が再開されるとシャポバロフはすぐさまブレークに成功し、それからキープし続けて3-6 6-3 6-2 4-6 6-4で勝利をもぎ取った。最後のゲームはブレークバックされるピンチもあったが、2本目のマッチポイントをものにした。マーガレット・コート・アリーナで行われた3時間55分を要するこのマラソンマッチは、現地時間の午前0時49分に幕を閉じた。
それは双方の選手と情熱的なテニスファンの記憶にずっと残り続けるであろう、2021年最初のグランドスラム大会初日の最後の試合だった。
「間違いなく今日、僕らはお互いに素晴らしいテニスをしていたと思う。正直に言うけど、ヤニクはものすごい才能に恵まれているよ。彼は驚くべきプレーヤーだ。彼は素晴らしい人間でもあり、凄い努力家だ。彼は近いうちに、非常に厳しい対戦相手になると僕は確信しているよ」とシャポバロフは相手を称えた。
それはシンネルにとってオーストラリアでの波の多かった1ヵ月と、自身5度目のグランドスラム大会の早期終焉だった。彼にはもう1ゲームをプレーするチャンスがあった。マッチポイントを凌いだあと、デュースサイドからのシャポバロフのダブルフォールトでブレークポイントを手にしたのだ。しかし彼が放ったパッシングショットはわずかにサイドラインを割り、そのチャンスをものにすることができなかった。
昨年のフレンチ・オープン準々決勝でナダルに敗れたあと、シンネルは年を跨いで2つのツアー大会を連続で制した。それは2005年のナダル以降では最年少での快挙であり、彼への期待はますます高まることになった。
日曜日に2時間を要したグレートオーシャンロード・オープン決勝で同胞のステファノ・トラバグリア(イタリア)を7-6(4) 6-4で破ったあと、シンネルは勝つこと以外にもよい経験になることがあると語った。
「ときには大事な試合で負けることもあるけど、勝ったときよりも成長できることがあるんだ。若いときには特にそうなんじゃないかな」
シンネルは先月、多くのことを学んだ。その期間には14日間のホテルでの検疫と、詰め込まれた日程のために1日2試合プレーすることを強いられた上に準決勝でマッチポイントを凌がなければならなかった前哨戦も含まれていた。
シャポバロフに敗れたあと、シンネルは慎重な姿勢を取った。彼は多忙だった週について、「正直、それが僕にダメージを与えているとは思わない。もちろん途中で少し疲れを感じ始めはしたけど、僕はそれから多くを学べると思っているよ。僕はすでに次の大会にむけて、正しいメンタリティでプレーすることを楽しみにしているんだ」と話し、言い訳をしなかった。
またこの1ヵ月ほどの間にオーストラリアでグランドスラム大会で20回の優勝を誇るナダルと過ごしたことは、長期的な視野で考えても大きな収穫だった。
「それは僕にとって、本当に大きなレッスンだったよ。僕たちがここに来た理由は、2週間に渡ってラファと練習することだったんだ。何故ならコートで正しいメンタリティを維持する方法について、彼から多くのことを学べると僕は思っているからね」と彼はコメントした。「今日のことに関してもそうさ。僕にとってここで第5セットで負けるというのは精神的に辛いことだけど、それもまたレッスンになるんだ」。
21歳とプロツアーの中では年上の立場になる機会が少ないシャポバロフは、経験の差が勝敗を分けるポイントになったということを認めた。
「僕はここ数日休むことができたけど、彼はいくつかの難しい非常に競った試合をプレーしなければならなかった。彼は昨日、文字通り決勝をプレーしたんだ。グランドスラム大会の前に、それは間違いなく容易なことじゃない。確かにその事実は僕の頭の中にあり、そのおかげで少しは自信を持って試合に臨めたよ。つまり僕は、自分のほうが恐らく元気な状態なんだと感じていたんだ」とシャポバロフは明かした。
2回戦で彼が経験豊富なバーナード・トミック(オーストラリア)と対戦するときには、状況は逆転しているかもしれない。予選勝者のトミックは第3セット途中に日本の杉田祐一(三菱電機)が故障でリタイアしたため、あまりエネルギーを消耗せずに試合を終えていた。(APライター◎ジョン・パイ/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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