ティームがナダルを“ナダル流”で圧倒 [オーストラリアン・オープン]

「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月20日~2月2日/ハードコート)」の大会10日目、男子シングルス準々決勝。
 
 第1シードのラファエル・ナダル(スペイン)は得意とするフィジカルで相手を圧倒するはずが、第5シードのドミニク・ティーム(オーストリア)に上回られ大苦戦を強いられた。2セットダウンから1セットを奪うのが精いっぱいだった。

 その瞬間、ナダルはベースライン上でしゃがみ込んでうさぎ跳びのように飛び上がり、勢いよく左腕で4回ガッツポーズをした。

 だが、すぐにまた劣勢に立たされてしまう。

 ロジャー・フェデラー(スイス)の持つグランドスラム優勝20回の記録に近づくための挑戦は、今大会では終わった。ナダルを右利きにして若くした選手とも形容できるティームに、準々決勝で敗れたのだった。

 ティームの7-6(3) 7-6(4) 4-6 7-6(6)の勝利は、しびれるような見ごたえのある長いラリーによって4時間10分の消耗戦になった。ティームは何度もサイドに振られたが、何とか返球してナダルがミスをするまで辛抱し続けた。

「彼はエネルギーに溢れていた。強い意志も感じられた。だから、彼を称えたい。正直言って、僕のプレーも悪くはなかったんだ」とナダルは脱帽した。

 この勝利でティームは、自身5度目となるグランドスラムの準決勝に勝ち進んだ。しかし、ナダルがいつも支配してきたフレンチ・オープン以外では初の準決勝になる。

 特筆すべきは、ナダルのグランドスラム連続ベスト4の最高記録を「7」で止めたことだ。そのうち、ナダルは3つのトロフィーを獲得している。

「彼のような歴代でも最高の選手の一人に勝ちたいなら、自分のプレーのすべてがうまく噛み合わないといけない」とティームは勝利後に語った。

 グランドスラムでナダルが最後にベスト4に残れなかったのは、2年前のオーストラリアン・オープンだった。昨年は決勝に進出したが、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れていた。ナダルにとってメルボルン・パークでの準優勝は4度目で、唯一決勝に勝利したのは2009年のことだった。彼はウインブルドンを2度、USオープンを4度、さらにフレンチ・オープンを12度制している。

 ティームに敗れた試合を振り返り、何を変えたいかと問われたナダルは、「どれでもいいからタイブレークを取りたかった」と答えた。

 この試合まで、ティームのグランドスラムでのナダルとの通算成績は5連敗だった。特にロラン・ギャロス(フレンチ・オープン)の直近の決勝2回は、いずれもナダルに敗れている。

 しかし、今回は違った。勝負を分けたと言えるスタッツは、9本以上のラリーの勝敗だ。ティームが24勝12敗と圧倒した。

「もう信じられない試合だった。どちらもハイレベルなプレーを披露した名勝負だと思う」とティームは興奮気味に言った。

 この試合でのティームはナダルとのベースライン上でのフィジカル勝負に負けず、何度も何度もストロークを返し、ネットに出るタイミングも完璧だった。

 違った表現をするなら、ティームはナダルを“ナダル流”で圧倒した。究極の研ぎ師が絶妙なポイントを逃さず、完璧な作品を作り上げたようなものだ。

「難しいポジションからでも彼は信じられないようなショットを返してきた」とナダルはティームのクイックネスとパワーを称えた。

撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU

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