田口涼太郎(近大)が白石光(早大)の大会連覇を阻止し、準決勝進出 [インカレ]
全日本学生テニス連盟が主催する学生テニス日本一を決める“インカレ”ーー「2021年度全日本学生テニス選手権大会(男子89回/女子65回)」(三重県四日市市・四日市テニスセンター/予選8月12日〜、本戦16~24日/ハードコート)は、本戦 7日目の22日、男女シングルス準々決勝(各4試合)、女子ダブルス3回戦(8試合)と男女ダブルス準々決勝(各4試合)が行われた。
男子シングルスで第5〜8シードの田口涼太郎(近畿大3年)が、前年度のインカレとインカレ・インドアのチャンピオンである第1シードの白石光(早稲田大3年)を7-6(5) 3-6 6-4で破り、白石に対する3度目の挑戦で初めて勝利を挙げて準決勝に勝ち進んだ。この試合は、この日行われた男女シングルス準々決勝の中でもっとも長い4時間の戦いとなった。
白石に対し、「ディフェンスをしていても崩せない。攻めて攻めて自分が崩すだけ」と、田口はビッグサーブに得意なストローク、そして豪快なネットプレーを組み合わせて白石に襲いかかった。「(白石は自分にそれを)やらせないのがうまい。途中でペースを変えてきたとき、またかと、引っかかったときもあったが、最終的には自分のペースにもっていけた」と田口。
田口涼太郎(近畿大3年)
勝敗を左右したゲームは第3セットの第3ゲームだと言い、「最初のサービスゲームをブレークされて0-2になったあと、引かずに、白石のサービスをブレークできた」。すぐにイーブンに戻し、自分のプレーを続けることに集中した。「相手は(前年に)優勝していて、シードでプレッシャーもかかっている。自分は思いきりいくだけだった」。田口は、自分がやりたいこととやるべきことがマッチし、“怖いもの知らず”の状態だった。
白石光(早稲田大3年)
大会が始まった当初、白石は、「勝たなきゃいけないという気持ちと、向かってくる相手と戦うことの葛藤がある」と言っていた。将来、プロとしてやっていくことを決めた覚悟から、「両方あっていいと思っている」「シードも気にならない」とも言っていた。
だが、準々決勝を終えて大きな重りを下ろしたあとは、「最初にああいうふうに言っていたんですけど、やっぱり大会を通して精神的によくなかった。勝たなきゃいけないと思うとテニスが小さくなり、もっといろいろなことをして攻めたり守ったりしたいのに、やりたいことと実際がマッチしなかった」と言った。「自分が相手のプレーをよくさせてしまった」とも。
丹下将太(早稲田大3年)
田口は次の準決勝で、小久保蓮との早稲田大3年対決を制して勝ち上がった第5〜8シードの丹下将太(早稲田大)と対戦する。丹下とは高校時代に、福島インターハイの個人戦準決勝で対戦し、田口が勝っている。「大学テニスでもまた対戦したいと思っていたので、楽しみ」と田口。そうは言っても気は緩めていない。「タイトルを獲りにきた。あと2試合」と大勝利は脇に置いて、次に向かう。
松田康希(関西大3年)
男子シングルスで最初にベスト4入りを決めたのは、第5シードの松田康希(関西大3年)だった。同じ関西勢、そして同じ名字の第13〜16シード、松田龍樹(近畿大4年)を6-3 6-2のストレートで倒した。インカレとインカレ・インドアでベスト8が最高成績だった松田は、自己ベストを塗り替え、さらに次に進む。「全体的によかった」とプレーを評価しつつ、「優勝を目指して臨んでいる。一歩近づけた」と感情はほとんど動かさない。
松田は4回戦で河野甲斐(近畿大3年)を6-1 5-7 [10-7]の接戦の末に破り、過去2回敗れていた相手に初めて勝って大きな自信を得た。そこで見つけた課題を修正して臨んだ準々決勝でもあった。
松田と準決勝で対戦するのは、ベスト4でただひとりの2年生、第9〜12シードの藤原智也(慶應義塾大)だ。藤原は、優勝候補のひとりと目された第3〜4シードの羽澤慎治(慶應義塾大4年)を倒して勝ち進んできた第13〜16シードの渡部将伍(早稲田大3年)を6-2 6-4のストレートで退けた。
「慶應のキャプテン(羽澤)を破った相手だったので敵を取る気持ちだった」と藤原。
藤原智也(慶應義塾大2年)
昨年、1年生で初めて出場したインカレは3回戦敗退。2年生の今年は準決勝まできた。「サーブもフォアもビッグショットがない。自分の形をつくって攻めていく」と、自分のプレースタイルを語る藤原だが、“ない”と言うのは違うように感じる。2年前の高校3年次にインターハイ、全日本ジュニア、JOCカップとビッグタイトルを総なめにして大学テニス界へ乗り込んできた実力者。ラリーをしながらカウンターでボールをとらえて仕留めにいくテニスは、試合が進む中でビッグショットを生み出していく。
松田が高3、藤原が高2のときに一度対戦して松田がフルセットで勝っている。大学テニスで実力を上げてきた今、対戦することに「ここまできたら実力は変わらない。やることも変わらない。自分のテニスをするだけ」と松田。「2年生は自分だけで、相手がどうこうではなくチャレンジャーの気持ちで戦う」と藤原は考えている。
シングルスの準決勝は、田口と丹下、藤原と松田、ダブルスの準決勝は、第1シードの羽澤慎治/藤原(慶應義塾大4年/2年)と松田/大植駿(関西大3年/3年)、第5〜8シードの田形諒平/中村元(筑波大4年/1年)と同じく第5〜8シードの河野甲斐/田口(近畿大3年/3年)の顔合わせとなった。
藤原、松田、田口には男子シングルスと合わせて2冠の可能性がある。またシングルスで上位シードをつけたが、昨年のインカレ成績を上回れずに敗れた羽澤(第3〜4シード/昨年ベスト4)と田形(第2シード/昨年準優勝)は、大学最後の個人戦への思いをこのダブルスにぶつけている。
大会8日目の23日(月)は、男女シングルス準決勝(各2試合)、男女ダブルス準決勝(各2試合)が9時から行われる予定。予選が始まった12日から降り続く雨で、スケジュール調整が繰り返されている大会は、予備日の23、24日を使ってようやく終盤の戦いへと進む。
試合形式は、男女シングルス準々決勝以降がベスト・オブ・3タイブレークセットセットマッチ、男女ダブルスはベスト・オブ・3タイブレークセット(第3セットは10ポイントマッチタイブレーク)、ノーアドバンテージ方式(40-40になったらレシーバーがサイドチョイスして1ポイント勝負)で行われる。
編集部◎青木和子 写真◎川口洋邦
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