フェデラーが7つのマッチポイントをセーブし準決勝へ、次はジョコビッチ [オーストラリアン・オープン]

「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月20日~2月2日/ハードコート)」の大会9日目、男子シングルス準々決勝。
 
 マッチポイントの数がいかにおそろしいものだろうと――彼の対戦相手は7本手にした――38歳の脚がいかに痛もうと、そのサービスがいかに遅かろうと、彼のグラウンドストロークがいかに的を外していようと、ロジャー・フェデラー(スイス)は決しておとなしく去りはしない。

 フェデラーは変わらずこのような舞台への愛のためにプレーしている。変わらずトロフィを切望してもいる。自分より10歳若い選手に対し――この日の場合、世界ランク100位のテニス・サングレン(アメリカ)だったが――フェデラーは最後の一息まで戦って“記憶に残る挽回劇”をやってのけ、15回目のオーストラリアン・オープン準決勝進出を決めたのだった。

 試合の大部分で、いつもの自分ではないことを示すあらゆるサインを見せていたにも関わらず、フェデラーは非常に長い間、本当にもう終わりであるように見えていたアップダウンの激しいその火曜日の準々決勝で上腕二頭筋をひけらかすハードヒッターのサングレンを6-3 2-6 2-6 7-6(8) 6-3で倒したのである。

「ほとんどの時間、僕はもう終わったと思っていた。もちろん、もしかしたらそうではないかもしれないという小さな希望のきらめきはあった。それから『まだ終わってはいない』と感じた」とフェデラーは振り返った。彼はこれ以前に一度だけ、7つのマッチポイントを凌いで勝ったことがある。それは2003年以来の自己ベストのタイ記録だった。「たぶん、第4セットを取ったときに初めて、心から形勢を逆転できるかもしれないと思った」。

 彼は試合後、鼠径部の筋肉に問題が生じて次の試合までに完全に回復できるかわからないと告白した。次の試合とは、前年度覇者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)に対するものだ。第2シードのジョコビッチは第32シードでウインブルドン準優勝の実績を持つミロシュ・ラオニッチ(カナダ)を6-4 6-3 7-6(1) で圧倒し、ラオニッチに対する対戦成績を10勝0敗とした。

「彼はただ、強すぎた」とラオニッチは完敗を認めた。

 フェデラーとジョコビッチの対決は、これで50度目となる。フェデラーは20度グランドスラム大会で優勝した経験を持ち、ジョコビッチは16度で追っている。直接対決の戦績ではジョコビッチが26勝23敗でリードしており、グランドスラム大会でのここ5対戦もそこに含まれていた。

「ロジャーはロジャー。彼はどのサーフェスであれ、あれほどまでに高いレベルでプレーする」とジョコビッチは警戒した。「彼はこの手の試合をプレーするのが好きなんだ。大きなライバル関係、グランドスラム大会の準決勝、決勝が…」。

 ジョコビッチにとってキャリア37回目のグランドスラム準決勝進出を遅らせた唯一のものは、新しいコンタクトレンズを入れるために第3セット4-4で自身が頼んだメディカル・タイムアウトだった。

「あれはやらなければならないことだった」とジョコビッチは説明した。「数ゲームの間、本当によく見えなかったから」。

 水曜日には、残り2つの準々決勝が行われる。世界1位のラファエル・ナダル(スペイン)対第5シードのドミニク・ティーム(オーストリア)、第7シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)対第15シードのスタン・ワウリンカ(スイス)だ。

 これといった山場もなくすんなり終わったジョコビッチの試合とは対照的に、フェデラー対サングレンはこれ以上は無理というほど劇的だった。

「試合が進んでいくにつれ、ふたたび気分がよくなってきてプレッシャーが消え去った」と試合後に20度グランドスラム大会を制した男は明かした。「僕はこの試合に勝つに値しなかったかもしれないが、今、ここに立っている。そして言うまでもなく、本当にうれしいよ」。

 この試合でのフェデラーは、不敬な言葉について主審と口論をした。第3セットの出だしにメディカル・タイムアウトでコートを離れた彼は、のちにトレーナーを呼んで右脚にマッサージを受けた。そして何より、28歳のサングレンとの緊迫した戦いの中に身を置いていた。

 一度もグランドスラム大会の準決勝に進んだことがないサングレンは、1991年に114位でベスト4に至ったパトリック・マッケンロー(アメリカ/ジョン・マッケンローの弟)以降でもっともランキングの低い準決勝進出者になろうと努めているところだった。

 サングレンは劇的な番狂わせまで、どれほど迫っていたことか! そして長年低いレベルのツアーで苦労を重ねてきた末にフェデラーに対するこの舞台に立ったことに胸躍らせていた男にとって、どれほど辛い敗戦だったかは想像に難くない。

「史上最高の選手はもちろん、よい選手相手に挽回するための多くのチャンスを与えてはいけない」とサングレンは視線を落とし、低い声で言った。「隙を見せれば彼らは自分のテニスをみつけ、いいプレーをし始める。それが、今日起きたことであるように思える」。

 フェデラーのサービスの平均速度が時速180kmから169kmに落ち、アンフォーストエラーが30本におよぶ中、第2、第3セットを走り抜けたサングレンは第4セットでも5-4とリードしていた。フェデラーのサービスゲームで、サングレンはそこでことを終わらせキャリア最高の勝利を決める3つのチャンスを手にしたのだ。しかし最初のチャンスで彼はバックハンドをネットにかけ、2度目はフォアハンドをサイドアウトし、3度目のマッチポイントではまたもフォアハンドをネットにかけてしまった。

 勝負はタイブレークにもつれ込み、そこで3-3のエンドチェンジの際に走り抜けようとしたボールボーイがベンチ付近でかがんだサングレンのふくらはぎにぶつかってしまうという奇妙な一件も起きた。しかし続く3ポイントを取ってまたもマッチポイントをつかんだことから見て、これはサングレンを煩わせはしなかったようだ。

 こうしてまたも勝利まで1ポイントと迫ったサングレンだったが、彼は6-3からも、6-4からも、6-5からも、そして7-6からも、ケリをつけることができなかった。

「正直、人々が7本のマッチポイントと言ったとき、『え?』という感じだった。3本だと思っていたんだ」とフェデラーはのちに打ち明けた。

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