18歳ラドゥカヌの快進撃は止まらず、予選からUSオープン準決勝進出はオープン化以降で初の快挙「私はここで記録を追いかけている訳じゃない」

写真はエマ・ラドゥカヌ(イギリス)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の大会10日目は、トップハーフ(ドローの上半分)の男女シングルス準々決勝などが行われた。

 世界ランク150位のエマ・ラドゥカヌ(イギリス)が予選を勝ち抜き2度目のグランドスラム大会本戦出場を目指してフラッシングメドウにやって来たとき、彼女は特に長い滞在を予定していなかった。

 しかし今、彼女を見てみるといい。彼女はこの冒険を初めてもう2週間になる。18歳のラドゥカヌはプロ化以降の時代で、予選から勝ち上がってUSオープン準決勝に進出した初のプレーヤーとなった。さらに彼女は、今大会でまだ1セットも落としていない。

「帰りのフライトは予選が終わったあとの日付で予約していたの。これはうれしい誤算よ」とラドゥカヌはクスクス笑いながら言った。

 より経験豊富な選手であるかのような落ちつきとショットの数々を披露したラドゥカヌは東京オリンピック金メダリストで第11シードのベリンダ・ベンチッチ(スイス)を6-3 6-4で下し、今大会でシングルスのベスト4に駒を進めた2人目の10代選手となった。

 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックもあったが、両親が高校を卒業することを望んだこともあって1年半以上試合をしなかった選手にしてはまったく悪くない。6月時点での彼女のランキングは、350位以下だった。

「私はここで記録を追いかけている訳じゃないわ。自分がその瞬間に何ができるのかを考えているだけよ」とラドゥカヌはコメントした。

 ニューヨークで予選3試合を含む8試合をプレーしたラドゥカヌは、ここまで16セットを連続で取っている。彼女はトップ100圏外ながらUSオープンでここまで勝ち進んだ史上3人目の女子プレーヤーであり、1968年に始まったプロ化以降の時代においてグランドスラム大会で準決勝にまで進出した史上4人目の予選勝者となった。

 ラドゥカヌは木曜日の準決勝で、第4シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)を6-4 6-4で破って勝ち上がった第17シードのマリア・サカーリ(ギリシャ)と対戦する。今年のフレンチ・オープンでも4強入りしていたサカーリは試合中のある時間帯にサービスからのポイントを22回連続で取り、2019年チャンピオンで第6シードのビアンカ・アンドレスク(カナダ)を前のラウンドで倒した勢いを裏付けた。

 オンコートインタビューで22ポイント連取について伝えられると、彼女は微笑みを浮かべて「それは凄いわね。私は自分のサービスを信頼していたけど、今後はさらに信じることにするわ」と語った。

 ワイルドカード(主催者推薦枠)を得てグランドスラム本戦デビューを飾った今年のウインブルドンで4回戦に進出したラドゥカヌは、そこで呼吸困難に陥って試合途中で棄権を余儀なくされた。その大会で存在を世界に知られるようになった彼女は、ポイントの早い段階で正確さを犠牲にすることなく攻撃することができるきびきびとした軽快なそのプレースタイルで人々に鮮烈な印象を与えた。

 2019年USオープン準決勝進出者のベンチッチに対する試合を通し、ラドゥカヌは12本のアンフォーストエラーの倍近い23本のウィナーを決めた。彼女は第1セットで1-3とされながら続く5ゲームを連取したとき、また第2セット終盤に勝利に向けた最後のサービスゲームで2度続けて0-30とされながら巻き返したときに勇気とガッツも見せた。

「明らかに、彼女はとても堅実なプレーヤーよ。彼女は最後までタフであり続け、ただ自分のテニスをして私を試合の中に戻らせなかったわ」と水曜日まで今大会で1セットも落としていなかったベンチッチは勝者を称えた。

 ダブルフォールトを犯してブレークされて第2セットで2-3とリードされたとき、ベンチッチは可能な限りゆっくり歩いてタオルを取るためにコートの隅に向かった。そしてコートサイドのベンチにたどり着くと彼女はラケットでバッグを叩き、それから身を屈めて今度はラケットを地面に叩きつけた。

 一方のラドゥカヌは、観客からの喝采と応援を浴びながら小走りでベンチに向かった。前日の午後と同じく、アーサー・アッシュ・スタジアムの観客たちはまだそれほど名前を知られておらず大舞台に慣れていないティーンエイジャーのほうを応援した。

 火曜日には前日に19歳になったばかりのレイラ・フェルナンデス(カナダ)が第5シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)に6-3 3-6 7-6(5)で競り勝ち、マリア・シャラポワ(ロシア)以降でもっとも若いUSオープン準決勝進出者となっていた。ラドゥカヌや他の仲間たちは、彼女の誕生日にロッカールームでカップケーキを分け合っていた。

 そして迎えた水曜日は、さらに若いラドゥカヌの番だった。

 ルーマニア人の父と中国人の母のもとにカナダのトロントで生まれたラドゥカヌは、彼女が2歳のときにイギリスに移住した。彼女の両親は今回ニューヨークには来ておらず、彼らは早熟な娘とあまり頻繁にコンタクトを取っている訳ではないようだ。

「実は、しばらく両親に電話してないの。しばらく会ってないから、“元気にしている?”くらいしか聞かれないの。昨日だってその前日と同じで、彼らは私に連絡をしてくれないのよ」とラドゥカヌは内気そうな笑みを浮かべ、目をくるりと回しながら話した。

 もうひとつの準決勝では、前日に勝ち上がりを決めていた第2シードのアーニャ・サバレンカ(ベラルーシ)とフェルナンデスが顔を合わせる。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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