「予選が終わった頃の日付で帰りの航空券を予約していた」準決勝進出のラドゥカヌ [USオープン]

準々決勝でベリンダ・ベンチッチ(スイス)を倒して思わず笑みがこぼれたエマ・ラドゥカヌ(イギリス)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の女子シングルス準々決勝で、予選から勝ち上がってきた18歳のエマ・ラドゥカヌ(イギリス)が第11シードのベリンダ・ベンチッチ(スイス)を6-3 6-4で倒してベスト4に進出した。

「勝ち抜けたことが本当にうれしい。ベリンダは素晴らしい相手でオリンピックの金メダリスト。スポーツ界最高の栄誉を手にした選手よ。素晴らしい選手なので物凄く難しい試合になるのはわかっていた。最初は彼女のボールスピード、アグレッシブさに慣れるのに時間がかかった。でも慣れてからは自分のプレーができた。勝つ方法を見つけられた。これほど高いレベルの相手は本当に難しかった」

  今大会、予選からまだ16セット連取でセットを一つも落としていない。

「1日ずつ集中してプレーしているだけ。大会に入ると、自分のルーティンに自動的に入る感じになる。ここまで勝ち抜けるとは思っていなかった。帰りの航空券は予選が終わったあとの日付で予約していたの。これはうれしい誤算。この経験をとても楽しんでいる。今日はコート上で“アーサー・アッシュ・スタジアムでプレーできるのは最後かもしれない”と思ってプレーした。とにかく勝利を目指してすべてを楽しんでいる」

  ここまでの道程を振り返って。

「凄く意味のあること。自分自身や結果を他の選手と比べるのは、つまらないこと。誰もが自分のやるべきことをやっている。私は18ヵ月大会に出ていなかったけど、今ここに到達できている。自分を信じれば、何だって可能よ」

 ここまできたら、優勝したいという意欲が芽生えているのではないか?

「自分の試合はひとつ残らずすべて勝ちたいと思っている。でも先のことは考えたくない。1日1日を大事にしたいから。自分ができることをしっかりコントロールすれば、最高のチャンスがあるはず。ここまで先を考えないことで上手くいっている。一つずつフォーカスしていくだけ。準決勝にきたからと言って、何も変えるつもりはない」

 ウインブルドンで4回戦進出のあと、少しレベルの劣る大会でUSオープンに備えてきた。

「いくつかのハードコートでの大会に出て、凄くいい準備ができた。グラスコートとまったく違うから、ハードコートに慣れるいい機会になった。4週間で自分のテニスは確実によくなってきた。トッププレーヤーが出るUSオープンまでにレベルを上げてきた。これらの大会で自信を深めることができた」

 イングランドにいる両親がここへ応援に来るチャンスはないのか?

「渡航のための証明書の入手に数週間かかるから無理だと思う」

 アンディ・マレー(イギリス)、ティム・ヘンマン(イギリス)のようなイギリスの先輩たちの存在について。

「彼らが成し遂げてきたことにインスパイアされてきた。自分にとってお手本になる選手がいたことはありがたい。彼らと接する機会はほとんどないけど、アンディとは何度か話して、実際に2度打ち合う機会もあった。彼のショットのスピードを体感できて、ミックスダブルスで対戦したこともある。お手本になるようなロールモデルがいるのは素晴らしいこと」

 毎試合同じウェアを着ているのは何か意味があるのか。

「一応はっきりさせておくと、同じものを着ている訳じゃないから! 赤が好きなの。いくつか選択肢がある中で一番好きなのを着ている。ここまできて他のデザインに替えることはないわ」

 レイラ・フェルナンデス(カナダ)について。

「レイラのことはジュニアの頃、U-12のときからよく知っている。一緒にオレンジボウルにも出た。ウインブルドン・ジュニアでも対戦した。小さい頃から知っている私たちがUSオープンの準決勝まで勝ち上がったのは素晴らしいこと。人間的にも素晴らしい。昨日、彼女にカップケーキをあげたの」

 落ち着いてプレーしており、メンタル面の強さはどこからきたものなのか。

「落ち着き、メンタルの強さは自分の育った環境のおかげ。両親はどちらも小さい頃からコート上でポジティブな姿勢を見せることの重要性を説いてきた。小さいときに悪い姿勢、態度を見せることは許されなかった。小さい頃から学んだことが今に繋がっている。USオープンの準々決勝で自分のサービスをキープすれば勝てるという状況を乗り越えるのは、間違いなく落ち着きが欠かせない。特にあのとき0-30だったから気持ちをリセットして、自分がコントロールできることにフォーカスする必要があった。どんなパターンでプレーするのか決めていた。先のことを考えず、その瞬間に集中できていた」

 コートの内外で落ち着いていていられるのは簡単なことなのか? また自身のスタッツや記録について知っているのか。

「記録については何も知らない。自分が予選から準決勝まで勝ち上がった初めての選手であると、さっき教えてもらった。私はここで記録を追いかけている訳じゃない。自分がその瞬間、試合でできることをしているだけ。次の試合についてもまだ考えていない。オフコートではリラックスして、あまりいろんなことにストレスを感じないタイプ。あるときトルネードの影響で渋滞に巻き込まれて“これで練習できなくても気にしないわ”と言ったら、コーチが“練習ができなかったらなんて、何を言っているんだ!”と怒っていた。私はいつもリラックスしているし、いつも自分を信じているし、最後に重要になるのはメンタルだと思う」


2019年2月、フェドカップのスロベニア戦に選ばれ、ケイティ・スワン(左)と一緒にケイティ・ブルターを応援するラドゥカヌ

 今大会を終えたらイギリス人選手ナンバーワンになる。どんな意味があるのか。

「わからない。でも素晴らしいことね。イギリスの女子選手は今みんな好調。みんな素晴らしい人たちで一緒に戦えるグループがあるのもいいこと。お互いに刺激し合って上昇できればいい」

 今大会の戦いでどの部分に一番満足しているのか? 特定のショット、動き、メンタル面?

「一つは動き。フィジカル面で今100%ではないけど、自分のスピード、ボールに追いつく能力には驚いている。最近、スライディングを始めたの。今まで自分にできるかわからなかったけど、偶然できた。いつもスライディングの仕方を知りたかったけど、今は自然にできるようになった。動きと運動能力に満足している。でもメンタル面の強さも。2日前は初めてアーサー・アッシュ・スタジアムでプレーしたけど、落ち着いていられたし、ブレークダウンの状況でも慌てなかった。今日も大舞台でベリンダに勝つことができた」

 レイラは父と戦術面の話をすると言ったが、君は父とどんな話をしている?

「実は、しばらく両親に電話してないの。しばらく会ってないから、“元気にしている?”くらいしか聞かれない。今は素晴らしいサポートチームが支えてくれている。心から信頼できる人たちが支えてくれて、皆でこの瞬間を楽しんでいる」

 ラドゥカヌは準決勝で第17シードのマリア・サカーリ(ギリシャ)と対戦する。(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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