ジョコビッチが5セットでの強さを見せつけズベレフとの準決勝を制す「今大会一番の激しいバトルだった」 [USオープン]

写真はノバク・ジョコビッチ(セルビア/右)とアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の男子シングルス準決勝で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を4-6 6-2 6-4 4-6 6-2で振りきり2つの大記録達成に王手をかけた。

 2021年シーズンのジョコビッチはグランドスラム3大会連続優勝を飾っており、あと1試合に勝てば男子では1969年のロッド・レーバー(オーストラリア)以来となる『年間グランドスラム(同じ年に四大大会全制覇)』を成し遂げると同時に、男子の最多記録を分かち合っているロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)を追い抜く21回目のグランドスラム制覇を果たすことができる。

 ナイトセッションの準決勝が始まったとき、81歳のレーバーはベースラインの後ろに位置するアーサー・アッシュ・スタジアムのプレジデントボックスの中央前列に座っていた。

 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより観客の入場が禁止されていた1年前のニューヨークで、ズベレフはグランドスラム初タイトルまであと一歩のところまで迫っていた。ズベレフは最初の2セットを取って第3セットで優勝まであと2ポイントとしたが、そのチャンスを無駄して挽回を許すと第5セットのタイブレークでドミニク・ティーム(オーストリア)に敗れた。

 マッチ16連勝を引っ提げて金曜日に準決勝を迎えたズベレフは、金メダルを獲得した東京オリンピックの準決勝でジョコビッチを倒していた。しかしながらそれはベスト・オブ3セットの試合であり、相手がジョコビッチである場合はベスト・オブ5セットと3セットではまったく話が違ってくる。ジョコビッチの5セットでの戦績は、今や36勝10敗となった。
 
 ジョコビッチについて言えることがもうひとつある。ジョコビッチはときどき背中下部をさすったり脚をラケットで叩いたりしていたが、どんな仕草を見せていたとしても彼は決してストレスに押し潰されることなく相手が滑り落ちるのを待っているのだ。

「それは感情のハリケーンや竜巻のようなもので、1セットや1ポイントの間に通り抜けていくんだ。選手はコートでひとりだから、逃げることはできないんだ」とジョコビッチは説明した。

 彼は通常、それをやってのける。

 約3時間半の戦いに敗れたあと、「メンタル的に、僕はもっとも重要な瞬間には彼以外の誰かとプレーするほうがいいよ」とズベレフは話した。

 この準決勝で試合が盛り上がり始めたのは、素晴らしい24本のショットのラリーがあった開始後約20分の第6ゲームに入ったところだった。そのラリーでジョコビッチはドロップショットを試み、ズベレフはそれに追いつくと不可能に思える角度のショットで切り返した。さらにジョコビッチが靴底が軋むような音を立てながらダブルスコートのアレーに向けて猛ダッシュして返球し、それをズベレフがクロスコートにウィナーを決めた。

 観客は熱狂し、ズベレフは右手を上げて指を振って「もっと大声で!」と煽った。そのしばらくあとにジョコビッチがフレームショットでボールをスタンドのほうに飛ばし、セットはズベレフのものとなった。

 第1セットでのズベレフは6本しかアンフォーストエラーを犯さなかったが、第2セットではその数が13本に増えてセットカウントは1-1となった。第3セットではジョコビッチの少し締まりのないプレーのあとズベレフがバックハンドのパッシングショットでウィナーを決めて2つのブレークポイントを生まれたが、ジョコビッチはそのピンチを何とかしのいで3-2とした。

 ゲームポイントでジョコビッチがベースライン上に放ったフォアハンドがインと判定されたことに納得がいかないズベレフは腰に手を当てて不満げな表情を見せたが、今年のUSオープンではすべて「ホークアイ・ライブ」によるエレクトリック・ラインコールシステムが採用されており見直しは要求できない。文句をつけるための線審自体がいないのだ。

 線審がいた昨年、ジョコビッチはあるゲームを落としたあとにボールを打ってそれを誤って線審の喉に当ててしまったことで失格負けとなった。そしてパンデミックによる日程の変更でそのあとに行われたフレンチ・オープンの決勝で、ジョコビッチはナダルに敗れた。

 それ以降のジョコビッチは、グランドスラム大会で劣勢に立たされることはあっても一度も負けていない。

 他の誰よりも長い期間をATPランキング1位の座で過ごしたジョコビッチは、トップに立つには何が必要かを解明してそれを実行に移す。彼のここまでの4試合と今年のグランドスラム大会での計10試合でそうだったように、彼は1セットダウンの劣勢を覆して勝利を掴んだ。

「予想通りに今大会一番の激しいバトルだった。ズベレフのプレーは素晴らしかった。今夜ズベレフに勝つことは、途轍もないチャレンジになるとわかっていた」とジョコビッチは試合後にコメントした。

「テニスにとって素晴らしいことだよ。誰かがふたたびそれを達成するなんて誰も思っていなかったんだ。僕は彼がやってのけるだろうと信じているよ」とジョコビッチのグランドスラム探求についてズベレフは語った。

 大一番となる日曜日の決勝で、ジョコビッチは第12シードのフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)を6-4 7-5 6-2で破って勝ち上がった第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)と対戦する。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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