20歳の川村茉那が本戦初出場で頂点に、男子は清水悠太と今井慎太郎が決勝へ [第96回全日本テニス選手権]
公益財団法人日本テニス協会(JTA)が主催する「大正製薬リポビタン全日本テニス選手権96th」(JTT-4/賞金総額2762万円/本戦10月30日~11月7日/兵庫県三木市・ブルボンビーンズドーム/室内ハードコート)の本戦8日目は女子シングルス決勝と男子シングルス準決勝2試合が行われ、女子シングルスで第7シードの川村茉那(フジキン)が光崎楓奈(h2エリートテニスアカデミー)を6-1 3-6 6-4で下して初優勝を果たした。
男子準決勝の1試合目は第1シードの清水悠太(三菱電機)が第6シードの山﨑純平(日清紡ホールディングス)に6-2 6-3で快勝し、続いて第3シードの今井慎太郎(イカイ)が片山翔(伊予銀行)を6-2 6-7(2) 7-5の接戦の末に振りきり最終日の決勝に駒を進めた。
6年前に全日本ジュニアの14歳以下で優勝してからジュニア時代も含めて国内の全国レベルのタイトルがひとつもなかった川村が、国内でもっとも大きなタイトルを掴んだ。
「国内の一番大きな大会で実力試しができればという気持ちだったので、優勝できてちょっとびっくりしています」
決勝の相手となった光崎は同い年で、初対戦は小学6年生という古いライバルでありダブルスを頻繁に組む仲良しでもある。今年は7月から9月にかけての2ヵ月間のヨーロッパ遠征もずっと一緒だった。その間は毎回ダブルスでペアを組み、優勝、準優勝といった結果を残した。今大会のダブルスでも第2シードとして順当に勝ち上がり、最終日の決勝進出を決めている。
手のうちも知り尽くすふたりの決勝戦で、好スタートを見せたのは川村だった。立ち上がりのゲームこそ2度のブレークポイントを握られるがそこをしのぐと次のゲームでブレークに成功し、しなやかなフォームから安定感のあるショットを正確に組み立て第1セットを6-1で奪った。
しかし第2セットになると、小柄な体からダイナミックに打ち込むフォアハンドが印象的な光崎が反撃に出て6-3でセットを奪った。最終セットはブレーク合戦となり、第8ゲームまで両者リターンゲームを奪い合ったあとに第9ゲームでようやく川村がキープしてムードが変わった。
第10ゲームの光崎のサービスでは「思いきって勝負に出た」と川村。フォアボレーで1ポイント目を奪うとバックハンドのダウン・ザ・ラインへのウィナーを決めて優位に立ち、ラブゲームでのブレークで締めくくった。最後は光崎のダブルフォールト。しかし、「最後は相手が引かずに打ってきてさすがだと思った。こっちは体的にもきつかった」と光崎は悔やむよりも川村を称えた。
32ドローで開催された昨年、川村はランキングがおよばず出場できなかった。予選も実施されなかった。力を試す場がないことは不安だったという。コロナ禍でも無理をすれば海外の大会に出られたが、「実力をつけないと勝てないと思っていたので、練習に専念しました。そのときやっていたことは間違いじゃなかったと思います」と今回得た自信を語った。
これまで全日本を制した多くの選手が「これは通過点」だと言った。そのとき、その視線の先には世界の華やかな舞台が見えていただろう。ただ、思い描いたところに到達した選手はそう多くないかもしれない。川村はどうだろうか。
「普段から先を見据えて練習しているので、今回も通過点だと思って思いきりやれた」とやはりこの大会を「通過点」と位置付けた20歳は、いま描く未来の夢にどこまで近づけるだろうか。月並みな言い方だが、勝負はここからだ。(ライター◎山口奈緒美/構成◎テニスマガジン)
撮影◎太田裕史 / YASUSHI OHTA
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