“第二の秘密兵器?”ロマン・サフィウリンがロシアの救世主に [ATPカップ]
2020年に創設された男子テニス国別対抗戦「ATPカップ」(オーストラリア・ニューサウスウェールズ州シドニー/1月1~9日/賞金総額1000万ドル/ハードコート)の大会4日目は、グループBとグループCのラウンドロビン(グループ内総当たり戦)第2戦が行われた。
クドス・バンク・アリーナで行われたグループBでは前年優勝国のロシアが開催国オーストラリアを3勝0敗を下し、2連勝を飾って決勝トーナメント進出にまた一歩近づいた。
同グループではイタリアとオーストラリアがともに1勝1敗であるため勝ち上がりの行方はグループ最終戦に持ち込まれたが、現在ロシアが単独首位につけている。ロシアは木曜日にイタリアと、オーストラリアはすでに敗退が決まっているフランスと対戦する。
ラウンドロビン第1戦のフランス戦で世界ランク2位のダニール・メドベージェフ(ロシア)は第2セットの終わりに脚にケイレンを起こしてユーゴ・アンベール(フランス)に7-6(5) 5-7 6-7(2)で敗れたが、この日はアレックス・デミノー(オーストラリア)を6-4 6-2で問題なく撃退した。
第1試合でロマン・サフィウリン(ロシア)がジェームズ・ダックワース(オーストラリア)を7-6(6) 6-4で破っていたためシングルスで決着がついたが、メドベージェフ/サフィウリンがジョン・ピアース/ルーク・サビル(オーストラリア)を7-6(7) 3-6 [10-6]で下して3戦全勝でロシアの勝利となった。
そしてこの大会で密かな注目を集めているのが、エースのメドベージェフが躓いた第1戦でロシアを苦境から救った世界167位のサフィウリンだ。
フランス戦でのサフィウリンは第1試合で世界58位のアルトゥール・リンデルネック(フランス)を2-6 7-5 6-3で退け、メドベージェフと組んだダブルスでも6-4 6-4で勝ってロシアの救世主となった。彼はこの日のオーストラリア戦でも活躍し、ロシアに2勝をもたらした。
ベストメンバーが揃えば恐らく代表戦では最強のロシアだが、今回はナンバー2のアンドレイ・ルブレフ(ロシア)が年末に新型コロナウイルス(COVID-19)の検査で陽性と診断されたためチームを離脱した。
ルブレフは当時、「僕は現在バルセロナにいますが、不運なことにCOVID-19陽性と判定されました。現在は医師の観察下で隔離しています。ご存じのように僕はすでにワクチン接種を完了しており、ATPカップとオーストラリアン・オープンのため準備を進めていました。しかし今は回復に努め、皆にとって安全になった場合にメルボルンに行くことになると思います」とSNSを通して説明していた。
続いて昨年の発見であり優勝の立役者のひとりだったアスラン・カラツェフ(ロシア)とダブルス要員のエフゲニー・ドンスコイ(ロシア)もチームから外れ(ロシアのメディアによるとコロナ感染が原因)、サフィウリンにシングルスをプレーするチャンスが巡ってきた。
今でこそ167位のサフィウリンだが、彼は2015年オーストラリアン・オープンではジュニアの部を制しており、ジュニア時代には頻繁にメドベージェフやルブレフを倒していた。
昨年は無名だったカラツェフがATPカップを足掛かりにその真価を発揮し始め、オーストラリアン・オープンで躍進したことはまだ記憶に新しい。カラツェフはそのままトップレベルに駆け上がり、2021年度の『もっとも上達した選手』としてATPから表彰された。そしてフランス戦後には昨年のカラツェフの飛躍になぞらえて記者会見で「サフィウリンは『ロシアの第二の秘密兵器』か」と質問が飛ぶと、メドベージェフは「100%そうだ」と答えた。
メドベージェフはサフィウリンに何度も負けたジュニア時代を思い出し、「ジュニア時代の彼は、倒すのが非常に難しい相手だった。プロになってからは対戦していないと思うけど、ジュニア時代は自分の出る大会でドローにロマンの名前を見つけると震え上がっていたものだったよ」と笑いながら振り返った。
サフィウリンは全豪ジュニアで優勝してジュニア世界2位となった18歳でプロに転向したが、メドベージェフやルブレフらの旧友たちが躍進していく中で一度も100位以内に入ったことがない。
「ジュニアテニスとシニアのテニスは少し違う。僕にとってもっとも難しいのは、メンタル面を鍛えることなんだ。フィジカル面では大いに鍛えたよ。メンタルのトレーニングも始めたけど、現時点ではメンタルがもっとも厄介な部分となっている。僕が集中力をなくすと、それが試合にはっきり反映されるんだ」とサフィウリンは語った。
昨年に27歳でカラツェフがやってのけたように、24歳のサフィウリンは今年ブレイクを果たすことができるだろうか? 彼はトップ50プレーヤーのダックワースに対するこの日の試合でも、第1セットの大部分で劣勢に立たされながらも巻き返して勝利をもぎ取る気骨を見せた。
「僕にとって、凄くいい試合だった。やはりよかった前の試合と同じような出だしだったけど、今回は第1セットのうちに挽回することができた」と声を弾ませたサフィウリンは今、明らかにいい波に乗っている。
そして体調不良にも関わらず今回もダブルスまでプレーし、「国のためにプレーするときには最後のポイントまで戦い続ける。試合前にあまり気分がよくなかったから、痛み止めを飲んでからコートに出た」と明かしたメドベージェフは旧友の活躍を大いに喜んでいる。
「ロマンが活躍していることは本当にうれしいよ。彼はここまでプレーしたすべての試合で勝っているからね。僕らは10歳のときから知り合う仲で、彼は凄く強いジュニア選手だったけど、ケガに見舞われてここまで不運だったんだ」とメドベージェフは話した。(テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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