「やっと自分から正しい情報を発信できる」昨年12月の行動を弁明するジョコビッチ

セルビアのベオグラードにあるビルの壁に描かれたジョコビッチ(Getty Images)


 オーストラリアン・オープンへの出場が叶わず、セルビアへ強制送還されたノバク・ジョコビッチ(セルビア)が沈黙を破った。セルビアの首都ベオグラードにある『ノバク・テニス・センター』でBBCのインタビューに応じた。

ここまで沈黙していた理由は?

「他の選手たち、オーストラリアン・オープンの邪魔をしたくなかった。それに、自分自身物凄く気持ちのアップダウンがあったから、落ち着いてすべてを振り返る時間が欲しかった」

この数週間、間違った情報が流れ、正しく理解されていないと感じる?

「多くの間違った情報、決定があったと思う。そしてオーストラリアで起きたことの結果にはとても悲しいし、残念だった。この4、5週間メディアで自分について書かれていることを見るのが辛かった。ここで自分の側から発信できることをうれしく思っている」

一般のオーストラリア人は2年間厳しいロックダウンを経験してきた。彼らはニュースから得た情報では、君が法律を越えた存在でほかの人々が従うルールに従う必要がないと思っているようだ。

「このパンデミックになってから、オーストラリアは世界でももっとも厳しいロックダウンを経験してきた。人々がどれほど苦しんだのかは想像することしかできない。同情する。それから多くのオーストラリア人が自分に対して、この状況の全体やそれに対する対処法すべてに対してフラストレーションを溜めていたことは理解している。ニュースを読んでいれば、そういう結論に達するのはわかる。だけどここではっきりさせたいのは、僕はいつもルールを守ってきたということだ」

スコット・モリソン首相はノバク・ジョコビッチに対する特別措置はあり得ないと語った。それに同意する?

「もちろん、特別措置はないことに同意する。今回の件で、自分の地位などを利用して力づくでオーストラリアに入国しようとしたことはない。他のすべての人たちと同じ扱いを受けた。医療免除の可能性があったときは、申請してそれを利用しようとした。PCR検査の結果と、自分の体内にある抗体の数値を提出した。それを2つのオーストラリアの医療機関に承認された。20~25の医療免除の項目があり、承認されたんだ」

では、大会前の経緯を整理しよう。セルビアで昨年12月16日にPCR検査を受けた。バスケットボールの試合を観戦した2日後になる。陽性結果が7時間後には出たが、翌日になって初めて知らされた?

「ああ、そうだ。正しい」

12月17日の朝、ジュニア選手たちへのトロフィーの授与式に出席する前に簡易検査を受けたが結果は陰性。マスクをせずに子供たちに会ったとき、自分が陽性だとは知らなかった?

「その通りだ」

12月17日の午後、PCR結果が陽性だったと知らされてから、自分が陽性だったことをジュニア選手たちやその家族に伝えようとした?

「ああ、したよ。検査結果を受け取ってからすぐ関係者に伝えるように連絡した」

新型コロナウイルス(COVID-19)で陽性なのに子供たちとマスクなしで写っている写真が世界中に出回り、怒りの種となった。PCR検査の結果を受け取る前に、この式典に参加したのは無責任だという意見に対して何と言う?

「この件についてすべて理解している。僕と子供たちが写った写真が出回ったこともね。その前夜にPCR検査結果が送付されたが、その時点でまだ届いておらず見ていなかった。だからこそ、その日の朝に簡易検査を受けた。結果は陰性だった。子供たちのために、その場にいたかった。それが彼らにとってどんな意味があるのかわかっているから。それしか言えない。授与式の数時間後にPCR検査の陽性結果を見たんだ」

陽性とわかっていたら、出席しなかった?

「式の前に検査結果を見ていなかった。もし陽性とわかっていたら、当然出席しなかった。しかし、このようなことになって人々が怒っているのは理解できる。怒るのは当然だ」

その翌日の12月18日にレキップ紙のインタビューと撮影に臨んだ。その時点ではコロナに感染していることはわかっていた?

「ああ、わかっていた。そしてその判断が間違っていた。もし許されるなら、その日に戻って対面インタビューを行わないようにしたい」

では、何故そのとき感染していることがわかっているのに応じたんだ?

「いくつか理由はある。レキップ紙は世界でも権威のあるスポーツ紙でリスペクトしている。インタビュアーのフランクは、何年も前から知っている仲で素晴らしい関係にある。彼を失望させたくなかった。もっと注意深く行動すべきだったか? 彼に感染していることを伝えるべきだったか? 答えは当然イエスだ。時間を戻したい。あれは自分の大きな間違いだった。本当に申し訳ないと思っている」

少し前のコロナ感染によって抗体が体内にでき、オーストラリア入国の医療免除が得られることは知っていたのか?

「はっきりと憶えていないが、12月の第2週だったと思う。メールが届いたんだ。少し前のコロナ感染で医療免除を申請できるという内容だった」

君への批判の最大のものは、この時期にコロナウイルスに感染したことが、オーストラリアン・オープンに出場する唯一の方法で、とても好都合だったことだ。

「僕は誰よりもコロナウイルスを警戒している。PCR検査も定期的に受けてきた。自分の名前を利用して恩恵を受けることはオーストラリアでも、他の国でもやったことがない。パンデミックになってから何百回とPCR検査を受けた。テニス選手という仕事を続けるため、移動するために必要だったからね。たくさんの批判があるのはわかっている。客観的に見たら、感染したことがどれだけ好都合だったかもわかる。でも、コロナウイルスに感染してラッキー、好都合な人など誰もいない。僕がオーストラリアへ行くために、自分の都合のために陽性の検査結果を手にしたと思われるのは受け入れがたい。僕は2度コロナウイルスに感染しているんだ。2度目は無症状だったが、1年半前の一度目は症状があったし、苦しかった」

人々がオーストラリアで起きたすべてのこと、また君が(2020年6月に)開催したアドリア・ツアーで皆がマスク無しで行動してクラスターが起きたことで、君がコロナウイルスを甘く見ていると思っている人が多い。

「その考えは間違っている。僕はコロナウイルスには真剣に注意を払っている。アドリア・ツアーに関しては、当時のセルビアで定められたすべてのルールに従って開催した。あのときはマスク無しでイベントを開催することができた。もっと厳しいルールを課されている国から見たら、よくは見えなかったかもしれない。でも、すべての国がそれぞれ異なる方法でコロナウイルス対策を行っている」

君の代理人はオーストラリア入国の際、セルビア以外の国へ行っていないと申告したが、実際にはスペインに滞在していた。このようなことからも、今回の問題について詳しくない人も、君と君のチームがルールを守らないという印象を強めてしまっている。

「これらすべてのことを考慮すると、僕が正しくないこと、ズルをしたと思われるのは仕方ないと思う。でも僕は常に正しいことをしてきた。あのミスは自分のチームのスタッフによる人為的なミスで、それは今回強制送還されたこととは関係ない」

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写真◎Getty Images

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