世界1位バーティが唐突に現役引退を発表「私はテニスにできるすべてを捧げた」
女子テニス世界ランク1位のアシュリー・バーティ(オーストラリア)が3月23日に自身のインスタグラムを通して唐突に現役引退を発表し、テニス界を驚愕させた。
「私は肉体的な原動力、感情的な渇望、最高レベルで挑戦するために必要なそういったすべてをもはや持っていません」と彼女はインスタグラムに投稿したビデオの中で、親しい友人であり元ダブルスパートナーのケーシー・デラクア(オーストラリア)に語った。
「私はただ、自分が絶対的に力尽きたのだとわかっています。私には肉体的にもう与えられるものはなく、私にとってそれは成功です。私はこの美しいテニスというスポーツに、自分ができるすべてを捧げました。そしてそのことをうれしく思っています」
「人々は理解しないかもしれないけれど、私はそれでも構いません」とバーティは話し、「私は本当に幸せで、本当に準備はできています。人間としての私にとって、これは正しいことなのだと心の中でわかっています」と言い添えた。
まだ18歳だった2014年USオープンのあとにもバーティは一度テニスから離れてクリケット選手となっていたが、2016年にテニスの世界に戻ってきた。しかし彼女は、「以前にもやりましたが、これは非常に違った感覚です」と明言した。
「私はテニスが与えてくれたすべてに心から感謝しています。テニスは私にすべての夢を、それ以上のものを与えてくれました。でも今が私にとってそこから離れ、ラケットを置いて別の夢を追うのに相応しい時期だとわかっています」
4月に26歳になるバーティは、グランドスラム大会のシングルスで獲得した3つのタイトルとともにキャリアを終えることになる。彼女は2019年フレンチ・オープンと2021年ウインブルドン、そして今年のオーストラリアン・オープンで栄冠に輝いた。彼女は114週連続を含め、合計121週間を世界1位で過ごした。
2019年にはWTAファイナルズでも優勝したバーティは、キャリアを通してツアー大会でシングルス15勝とダブルス12勝を挙げた。女子ダブルスではグランドスラム大会で6度決勝に進出し、ココ・バンダウェイ(アメリカ)とのペアで臨んだ2018年USオープンでチャンピオンに輝いた。
「私は多くの信じられないような瞬間を経験しました。昨年のウインブルドン優勝は、私を人間としてもアスリートとしても大きく変えました」とバーティは明かした。
「ひとつのゴール――ウインブルドン優勝――のため、人生を通して本当に厳しい努力を積む。ウインブルドン優勝は、正に私がテニスで求めていたひとつの夢でした。それは私の観点を本当に大きく変えたのです。ウインブルドンのあと、私は心の奥底で直感的に“それ”を感じたのですが、完全に満足していない、完全に満たされていない部分が私の中に少しだけ残っていました」
その残っていた『少し』は、母国オーストラリアのグランドスラム大会でトロフィーを掲げることだったとバーティは示唆した。
「それから、オーストラリアン・オープンでのチャレンジがやってきました。それは素晴らしかった私のテニスキャリアを祝うのに完璧な方法だと感じられたのです」
言い換えれば、それがキャリアからの幕引きを飾るのに相応しい形だったということなのだろう。オーストラリアの先住民アボリジニの血を引く彼女は、同じくアボリジニの名選手であるイボンヌ・グーラゴング(オーストラリア)をアイドルとして育った。そして彼女は今年のメルボルンで、1970年代のグーラゴング以降で母国のグランドスラム大会を制した初のオーストラリア人女子プレーヤーとなり、グーラゴング自身から優勝杯を受け取ったのである。
「第2のキャリア(復帰した2016年以降)において展望が変わり、私の幸福はテニスの成績次第ではなくなっていました。私にとっての成功は、できるすべてを完全に捧げ尽くしたと実感することなのです。自分からベストを引き出すのに、どれほどの努力が必要かはわかっています。私のチームに何度も言いましたが、私の中にはもはやそれ(をやる力)がないのです」
「私はテニスを愛し続けます。でも今はアスリートとしてのアッシュ・バーティではなく、アッシュ・バーティという人間として人生の次の段階を楽しむことが重要だと思っています。私にとって、アッシュ・アッシュ・バーティは必ずしも世界中を転戦し、家族や自分がいたい場所である故郷と遠く離れることなく追いかけたい多くの夢を持つ人間なのです」
写真◎Getty Images
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