森田皐介(柳川2年)が決勝のジンクス破る全国初栄冠、躍進の中西康輔(岡山理大附2年)を決勝で退ける [2022高校センバツ]
公益財団法人全国高等学校体育連盟などが主催する「大正製薬リポビタン第44回全国選抜高校テニス大会」(3月20~26日/団体戦:3月21~25日◎福岡県福岡市・博多の森テニス競技場、個人戦:3月23~26日◎福岡県福岡市・博多の森テニス競技場博多の森テニス競技場&福岡県春日市・春日公園テニスコート/砂入り人工芝コート)は最終日を迎え、男女の個人戦準決勝と決勝が行われた。
男子決勝は森田皐介(柳川2年)が中西康輔(岡山理大附2年)を6-3 6-4で退け、全国初タイトルを獲得した。
全国大会の決勝で敗れること、過去に3回。ダブルスも入れれば4回。17歳の森田はまだ全国タイトルを手にしたことがなかった。決勝で0-6 0-6の完敗を喫したこともあれば、悔しい逆転負けもあった。
先々週に「リポビタン国際ジュニア in 久留米」(ITFグレード5/福岡県久留米市・久留米総合スポーツセンターテニスコート/ハードコート)の準決勝で3セットの末に敗れた相手である三城貴雅(相生学院1年)に同じく準決勝で今度は逆転勝利でリベンジし、全国大会では2019年の全日本ジュニア以来となる久々の決勝進出を決めたが、「正直、怖い気持ちもありました」と決勝前の心境を振り返る。
相手は伏兵・中西。昨年まで全国レベルの大会はほとんど経験がなく、出場しても1回戦で敗退した。しかし今年1月に『全国私学テニス選手権』で優勝すると、今大会も団体戦で中西自身は2試合負けなしで、個人戦でも各校エースを次々と倒してきた。
昨年まで全国レベルの大会はほとんど経験がなかった中西康輔(岡山理大附2年)が個人戦で決勝進出と大躍進(撮影◎上野弘明)
なお、団体戦出場48校のシングルス1のみが出場できるこの大会の個人戦のドローは変則的で、まず団体戦の1、2回戦で負けたチームのエースが予選を戦い、3回戦以降に進んだチームのエースは本戦からだが、その敗退ラウンドによって個人戦スタートのラウンドが変わる。団体戦の優勝チームと準優勝チームのエースは最終日の準決勝にいきなり登場するという“スーパーシード”扱いだ。
この形式の下で森田は本戦2回戦から勝ち上がり、中西のほうは本戦1回戦から戦って準決勝では団体戦で準優勝だった大分舞鶴の髙妻蘭丸(2年)を6-3 6-0と撃破。「前よりも、ちゃんと考えてテニスができるようになってきた」と自身の成長を自負している。それは攻守のメリハリにも表れていただろうか。
森田は中西のことを知らなかったというが、ここまでの勝ち上がりや準決勝で隣のコートから伝わってきた雰囲気、6-3 6-0という一方的なスコアなどから難敵だと覚悟していた。その上で、一切のネガティブな気持ちを振り払うことに努めてコートに入った。
第1セット、森田は第4ゲームをブレーク。第9ゲームで3度ブレークポイントを握られたが、準決勝でもそうだったように勝負どころでサーブ力を発揮してセット先取に成功した。
ピンチのときは「柳川らしい我慢のテニスを心がけた」という。第2セットもワンブレークを生かし、最後はラブゲームのサービスキープで危なげなく締めくくった。ついに掴んだ全国タイトルだ。それだけで十分に満たされるものだったはずだが、優勝者にはUSオープン・ジュニアの予選ワイルドカード(主催者推薦枠)という大きなおまけもついてくる。
「そのことは考えないようにしていました。これ以上のプレッシャーは感じたくなかったので。勝ったらとか負けたらとか結果は何も考えずに、1ポイント1ポイント集中していくことを考えていました」
森田皐介(柳川2年)はUSオープン・ジュニアの予選ワイルドカードを獲得(撮影◎上野弘明)
かつてここで優勝し、与えられたワイルドカードで本戦2回戦まで勝ち進んだ伊藤竜馬(橋本総業ホールディングス)がゲストとして表彰式でスピーチをした。
「僕にはインターハイや全日本ジュニアなど夏のビッグタイトルはありません。ですが、あのときグランドスラムの雰囲気を体で感じて、プロになることを決めました。そして今、プロ16年目を迎えます」
掴んだチャンスを生かしきった生身の成功者のメッセージは、森田の夢をまた膨らませたに違いない。
「ひとつでも多く勝てるように、外国の選手のパワーに負けない技とかフットワークをもっと磨いていきたい」
大きな決意を抱いて埼玉から柳川にやって来たものの、長く結果が出せていなかったという森田。いま靄は晴れ、夏の終わりまでの時間は大いに輝き始めたことだろう。(ライター◎山口奈緒美)
撮影◎上野弘明
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