「なおみは憧れから互角に戦える相手に変わった」シフィオンテクが語る大坂と新コーチ [マイアミ・オープン]
WTAツアー公式戦の「マイアミ・オープン」(WTA1000/アメリカ・フロリダ州マイアミ/3月22日~4月3日/賞金総額836万9455ドル/ハードコート)の女子シングルス決勝で、第2シードのイガ・シフィオンテク(ポーランド)が日本の大坂なおみ(フリー)を6-4 6-0で下した。
インディアンウェルズとマイアミを連続で制する『サンシャイン・ダブル』の偉業は、1994年と96年のシュテフィ・グラフ(ドイツ)、2005年のキム・クライシュテルス(ベルギー)、2016年のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)に続く女子史上4人目で、最年少での快挙達成だった。
「偉大な選手たちに並ぶことができて光栄に思う。数年前はまったく考えもしなかったこと。この2大会を連続で戦うだけでも大変だから。でも、やっているうちに他の大会と変わらないことがわかり、1試合ずつ集中して戦っていった。それで優勝できた」
オーストラリアン・オープンの前から新しいコーチのトマシュ・ウィクトロフスキー氏と取り組んでどんなところが改善された?
「プレーに幅が広がったと思う。アプローチからネットに出るプレーの形をいくつも練習したりした。それによって主導権を握り、相手にプレッシャーを掛けられるようになった。昨年は相手にプレッシャーを掛けられて、自分はベースラインに留まるしかなかった。今はどちらでもプレーできるから、選手としての完成度が上がっている」
今日のコート上での調子はどうだった?
「よく集中できていた。自分のやるべきことがわかっていたから落ち着いていた。決勝ではあったけど、他の試合と同じように臨んだ。自分に余計なプレッシャーを掛けたくなかったから、それが最良の方法だった」
第2セットはどんどん調子を上げてゾーンに入っているように見えたが、どんな感じだったのか? また優勝を決めた瞬間の気持ちは?
「私はいつもゾーンに入りたいと思っていて、調子がいいときはスコアを気にせずにどのポイントも同じように集中してプレーできる。いろんな考えが頭を過ぎったし、セット間には優勝できるんだと意識もしたけど、余計なことを考えずにプレーに集中した。第2セットではそれがうまくできた。ゾーンに入っていたし、満足している。主導権を握って自分から崩れないように意識した。終わった瞬間は、解放感があった。これだけ多くの試合を連続してうまくプレーできたことに驚きもした。この大会を通していろいろな考えを頭の中を駆け巡ったから。大変なことを成し遂げたと思う」
セカンドサーブのとき、なおみがかなり中に入ってきていたけど、それは意識していた?
「もちろん、彼女が前目にポジションを取っているのを見た。過去に何度もそのような状況でプレーが悪くなったことがある。今回はそうならないように意識して、前に出て攻めていった。私のセカンドサーブも悪くないし、キックサーブは今日のような遅いコートでは特によく弾んで効果的。自分の持っている技術を生かすことができた。相手にミスをするチャンスを増やしたかったから、ダブルフォールトは絶対に避けたかった。セカンドサーブからポイントを取れてもミスをしても、ラリーに持ち込むことが大事だった」
今、朝起きて鏡を覗き込んだとき、そこに世界ナンバーワン選手が見える?
「朝起きて鏡を覗くと、基本的にグチャグチャだから…。世界ナンバーワンになっても私は変わらない、同じイガのまま。そうありたい。私の憧れの選手もそうだった。成功してネガティブな方向に変化したくない。でも(世界ナンバーワンは)大きな自信になるし、満足感は大きい」
2018年になおみがUSオープン優勝したのを観たと言ったが、どこで観たのか? なおみとのライバル関係がここから始まるのか。彼女をどう見ている?
「ライバル関係になると自分が言うときは、今後お互いを刺激し合って、ともに成長していくというポジティブな意味になる。なおみは優しくて謙虚。ライバルになると言って、今後ロッカールームで口論をするとか、そういう意味ではない。なおみとそんな関係になる訳ないから。2018年のUSオープン決勝でなおみがセレナ・ウィリアムズ(アメリカ)を倒した試合はよく憶えている。私はモントリオールで16Kの大会に出ていた。友人の家で観た記憶がある。私もこの大会で優勝したけど、自分が目指している舞台にはまだまだ遠かった。もっと上の舞台に立ちたいと思っていた。でも当時はまだ17歳。なおみがプレッシャーにどう対処したのか、コートで起きたことには胸を打たれた。彼女は私の憧れで尊敬している。2019年に初めて対戦したときから、気持ちがだいぶ変わっていった。憧れから、実際に互角に戦える選手だという意識が芽生えていった」
大学でテニスを続けることを選択肢に考えていたという噂があった。
「大学でテニスをする選択はまったく考えてなかった。最初からプロを考えていた。ヨーロッパの大学で勉強はできるけど、アメリカのような大学テニスはないから、プレーできない。元々プロになるつもりだった。ランキング50位くらいになって、もしトップ20位に入れば、そのあとに高校を卒業してすぐにプロになれると思っていた。今それを実現している。フレンチ・オープンで優勝したあとに大学に通う選択肢はなかった。まだ若いから大学で学ぶ時間はあると思う。でも、例えば科学を深く掘り下げて勉強するような情熱はない。すべての教科が好きだけど、そこまで打ち込みたいと思うものがない。数学は好きだけど、時間が必要だからテニスと両立はできない」
スタンドに多くのポーランド国旗がはためいていた。
「どの大会でもよく見られるのはうれしい。ホームで戦う選手を相手にしているときでも、応援されていることを感じられてうれしい。私は常々公言してきたように、いつも国のためにも戦っている。子供たちのためにロールモデルになりたいと思っている。応援されるのは心が温まる。皆に感謝の気落ちを伝えたい」
ゆっくりお祝いできるのではないか。
「ドーハ、インディアンウェルズのあとは優勝を祝う時間がなかったから、今は少し休んで体のメンテナンスをして、お祝いもしたい。継続してプレーしていると、すべてをこなすのが難しくなる。お祝いの時間を楽しみにしている」
憧れのなおみへの勝利はどんな意味を持つ?
「非現実的な部分もあるけど、自分がいるべき場所にいるとも感じているし、そのためにずっと練習してきた。表現するのが難しい。なおみと決勝で戦うのはエキサイティングなことで、世界中が注目している。いい試合だし、自分の最高のプレーを見せたかった。満足してくれたと思う。あのレベルの選手に対して自分があれだけできるのはとてもうれしい」
なおみはどんな存在?
「彼女は素晴らしい選手。詳しくは知らないけど、メンタルをケアするためにいろんなことを試し、ふたたびトップレベルに戻ってきたのはうれしい。彼女は常に最高レベルで戦うべき選手。いい試合ができてうれしい。今後も彼女とたくさん対戦することになると思う」
今大会は物凄く調子がよさそうに見えた。
「このようなテニスは昨年の練習ではできていたし、披露できると思っていた。でも、昨年はそのプレーを本番の試合でなかなか出せなかった。今年になってそれがうまく出せるようになった。私は自分ができると信じてきたから、この結果は驚きではない。今年のアデレードではまだ自分のポテンシャルをフルに発揮できなかったけど、今はそれができている。これから自分の最近のプレー動画をチェックしたい。画面で観て、また違った評価ができると思う」
今後の課題は?
「今、練習と試合でのプレーが段々近づいてきている。以前は練習のほうが、恐れ知らずに思い切りできていた。自分のフルポテンシャルがどこにあるのか、まだわからない。どこまで伸びるのかもわからない。もちろん課題はたくさんある。詳細を教えることはできないけど。コーチには私のためのプランがある。改善すべきショットがある。今後も練習を続ける。テニスは常に向上していかなければならないもの。選手は常に努力している。また、テニスはサーフェスが変わっていくから、そのときにもっとうまく対応できるようにしたい。クレーコートは簡単だけど、グラスコートや球足の速いハードコートにはまだ慣れるための時間が必要だと思う」
写真◎Getty Images
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