「ロシアのプロパガンダが大嫌い! 最低!」フレンチ・オープン1回戦でシフィオンテクに敗れたツレンコ
今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月22日~6月5日/クレーコート)の女子シングルス1回戦で第1シードのイガ・シフィオンテク(ポーランド)に2-6 0-6で敗れた予選勝者のレシヤ・ツレンコ(ウクライナ)がウクライナへのサポート、ロシア人選手、ベラルーシ人選手へのテニス界の厳しい制裁を求めた。
「途轍もなくタフな相手だった。彼女は今、止められない。ほとんどのショットがライン近くにコントロールされるから、彼女を相手にこちらから仕掛けるのはとても難しい。彼女は今、すべての試合で勝っている。彼女のレベルが途轍もなく高く、男子のようなサービスを打ち込んでくるのを今日は肌で感じた」
グランドスラム2大会連続で世界ナンバーワンのアシュリー・バーティ(オーストラリア)、イガ・シフィオンテク(ポーランド)と対戦した。2人の対決は実現しなかったけど、2人と実際に対戦してみてどう?
「プレーが似ているけど、アシュのほうがバックハンドのスライスを多用する。スピードは似たようなもので、サービスのスピードと狙う位置はほとんど同じだと思う。ストロークはどちらもとても安定している。だからかなり似ている。だからこそ2人ともナンバーワンになれたのだと思う」
ウクライナの現状で、こうしてプレーすることはどれほど難しい? ウインブルドンの決定をどう思っている?
「正直、プレーしていていい気分ではない。すべてが始まったとき、最初に思ったのは自宅に帰ること。プレーを続けるべきか、ウクライナに帰って何らかの方法で人々を助けるか、長いこと自分の中で葛藤していた。助ける方法などわからないのにね」
「インディアンウェルズとマイアミでは物凄く影響があった。アンダルシアのチャレンジャーが終わったとき、次の予定がなく、そこでいろいろ考えた。どうしたらいいのかわからなかった。いろんな疑問が頭を駆け巡った。どこへ行く? どこで練習する? どこで生活する? プレーを続けるべき? 私はもう20歳の若手ではないから、世界で何が起きているのかある程度理解できる。ただのテニスの試合よりも重要なことがあることもわかっている」
「だから、今ここに居ること自体、とても難しい。プレーを続け、勝つ努力をして楽しもうと心に決めた。自分にプレッシャーを掛け過ぎないようにしたい。すべての試合をただ楽しみたい。それと同時に、あまり気にし過ぎないこと。いつも2つの間で揺れ動いている。コートに立って気にしないことと、気にすることの間でね。そのことが助けになるときもある。プレッシャーを感じずにプレーするだけ。でも、勝っても負けても、それほど重要ではないという気持ちも出てくる」
「ウクライナ人としては国のためのサポートをできる限り表したいから、ウインブルドンの決定はテニス界からのサポートを表すものだから、正しいと思う。もちろん、ポイント無しでプレーするのは嫌。選手たちの意識、テニス組織の意識で何かが変わってくれることを願っている。でも現状は現状。これ以上のことを残念ながら私にはできない」
テニスのコミュニティがウクライナのために何かして欲しいことはある? また現在どこを拠点に活動している?
「いくつか候補があった中にここパリも含まれている。そのあと、クレーコートシーズンに向けて屋外で天気のいいクレーコートを探さなければいけないと気付いた。友人のマルタ・コスチュク(ウクライナ)には感謝している。彼女が拠点にしているピアトラアカデミーを紹介してくれたの。イタリアにある素敵な場所。素晴らしい場所で皆が親切にしてくれるから、とても感謝している」
「テニス界について言うと、人々がもう少し人生について考えるべきだと思う。私と同じような考えを持って欲しい。戦争は酷いもので、世界で戦争より酷いものはないということ。自分の国が当事者じゃないと、どれほど酷いのか本当には理解できないと思う。関係ない人もいるし、私が観ている映像、画像やニュースを観ない人もいる。ロシアのプロパガンダがウクライナについて言っていることは最低! 本当に大嫌い! ウクライナについて嘘ばかりで本当に心が痛む」
「世界全体が、ウクライナが美しい国でウクライナ人が素晴らしいことを見て欲しい。選手にもっと気にして欲しいとは言えないかもしれないけど、男女のトッププレーヤーにはもっとサポートを見せて欲しいし、何が起きているのかもっと理解してほしい。ただの人生なんだけど、テニスの試合より重要なの。この気持ちを皆と分かち合いたい。でも、戦争が始まってもう3ヵ月も経っているから、今後大きく変わるとは思えないけど…」
イガがウクライナカラーのピンをつけていたのに気づいた?
「彼女はいつもつけてくれている」
他の選手と個人的にもっと深い話をしている?
「いいえ、それが問題なの。ここにいるのが何故これほど苦しいのかは、私の国に対するサポートの言葉をあまりかけてもらえないからなの。何もわかっていない人たちと一緒にいるのはしんどい。私はウクライナ人で、私の国で戦争が起きているから苦しいの。5人の選手と何人かのコーチは私に声をかけてくれた。もっとサポートが欲しいけど、自分からは何ができると言うの?」
「イガが見せるサポートの気持ちにはとても感謝している。ポーランドはウクライナのためにいろいろ助けてくれている。ポーランドの人々、大統領、政治家がウクライナ人のためにしてくれていることは本当に素晴らしい。両国の友情は素晴らしい物」
WTAがウインブルドンのポイントを加算しないと発表してから、誰かに何か主張した?
「もちろん、何度も何度も意見を言ったわ」
それに対してどんな答えが返ってきた?
「満足できる答えは何もなかった。多くの他のスポーツではロシア人がまったく出場できないのに、テニスはたった1大会出られないだけ。これでは痛くも痒くもない。この決定には不満。たった1大会では足りないの。彼らは仕事を失うと感じているのかもしれない。でも私はもっと悪いこと、酷いことを感じている。それに比べたら1大会出られないのは何でもない」
もしコートでロシア人と対戦することになったら、どう思う?
「ロシア人選手、ベラルーシ人選手と対戦は嫌。自分の国で起きていることを思い出してしまうから。プレーするべきか、棄権すべきか、自分の中でずっと答えを探していた。プレーしないほうがいいのか? 個人的にはプレーすることを選択した。私はもう20歳の選手じゃないから、自分があと何ヵ月、何年プレーできるかわからない。だからこそチャンスがあるなら、プレーしたい。この3年間はケガであまりプレーできなかったこともある。身の回りで多くのことが起きているけど、簡単に試合をギブアップはできない。でも、正直心苦しい。彼らとは対戦しないことをいつも願っている。多くの人に聞いてもらいたい。ウクライナ人としてツアーでプレーを続けるのは大変なこと。皆メンタルコーチをつけながら、母国のこと、家族のことを常に考えている。もし、ロシア人選手、ベラルーシ人選手と対戦することになったら、それ以上精神的にきついことはない」
写真◎Getty Images
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