シフィオンテクが圧巻の勝利で2度目の優勝「ここに至るために多くの努力を積み、すべてのピースがついに噛み合った」 [フレンチ・オープン]

写真は2年ぶりに女王の座に返り咲いたイガ・シフィオンテク(ポーランド)(Getty Images)


 今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月22日~6月5日/クレーコート)の女子シングルス決勝で、第1シードのイガ・シフィオンテク(ポーランド)が第18シードのコリ・ガウフ(アメリカ)を6-1 6-3で下して2年ぶりに女王の座に返り咲いた。

 2月末のドーハから6大会連続優勝を飾ったシフィオンテクはキャリア最長の連勝を「35」に伸ばし、2000年に記録したビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)に並んだ。

 決勝でのシフィオンテクのプレーは、これまで以上に圧巻だった。最初のゲームをブレークしたシフィオンテクは次のゲームで相手の反撃を抑え込むと、そのあとはガウフにとって1ゲームを取ることすらが困難になった。

 何とか1ゲームを取るのがやっとだったガウフは、非常に堅固であると同時にアグレッシブな姿勢を崩さないシフィオンテクを苦しめることができないまま第1セットを1-6で落とした。

 コートサイドから試合を見守った元フレンチ・オープン優勝者のメアリー・ピアス(フランス)は、「何より印象的だったのはイガのフットワーク。ボールをしっかり打てる場所に入るためのフットワークと読みがいいから、簡単に打っているように見える」と試合後に感嘆していた。

 この試合でシフィオンテクが唯一少し揺らいだのは、第2セットの第1ゲームだった。畳みかけようとし過ぎたせいか、やや時期尚早に強打したシフィオンテクは急にミスが早くなり、ここで初のブレークを献上したのだ。次のゲームをキープしたガウフはこの試合で初めてリードしたが、この0-2から見せたシフィオンテクの修正能力がまた見事だった。

 無理して強打するのを止め、ショットの組み立てとコースの巧みさでウィナーを奪い始めたシフィオンテクを前にガウフはふたたび劣勢に立たされ、最終的に数え切れないほどのノータッチエースを奪われた。優位を取り戻したシフィオンテクは、そこからはいっさい崩れなかった。まったく集中力を緩めず岩のように堅固なシフィオンテクと比べてガウフのミスは早く、その後の彼女はあと1ゲームを取るのがやっとだった。

 強いられたものも含めてガウフが3本連続のミスを犯して試合に終止符が打たれた瞬間、シフィオンテクは微笑んで両腕を上げ、ガウフは涙を流した。

 表彰式で涙をこぼすガウフを慰めたあと、国家吹奏の間に自らも涙を拭ったシフィオンテクは、そのあと現地テレビのインタビューで「国歌を聴くといつも心を動かされる。そういう経験はあまり多くないから。会場の雰囲気は本当に素晴らしかった」と語った。

「1回目の優勝と2回目の優勝はまったく違った。今回は何が起きるか大体わかっているから、準備ができていた。最初のときはかなり混乱していて、優勝できたのは幸運でもあったと思う。でも今年は、私はこのために本当に懸命に多くの努力を積んだ。ここに至るためにできる限りのことをして、多くの障害や大きなプレッシャー、ストレスを乗り越えた。だからここでふたたび優勝するチャンスを得たというのは本当に素晴らしいことだわ」

 更にシフィオンテクはその後の記者会見で、「すべてのピースがついに噛み合って形をなしたことをうれしく思う」と充実感を表現した。

 同じく現地テレビのインタビューに応じたシフィオンテクに帯同するスポーツ精神分析医のダリア・アブラモビッチ氏は、「テニス選手はコートの上ではひとりだけど、メンタルトレーニングを含む準備のすべてはチームの仕事。私たちは皆でやってのけた仕事と彼女の成功をとても誇りに思っている」話した。

 決勝を通して非常に冷静だったシフィオンテクだが、優勝候補としてのプレッシャーは膨大だったはずだ。

「今日の彼女は落着いており、何かあっても迅速に回復する能力も見せた。その意味でこれは、今後も彼女の中に残る大事な瞬間だったはず」と振り返ったアブラモビッチ氏はそれを実現するためどのような対策を取ったのかと尋ねられ、「第一に、見ないふりをするのではなくプレッシャーが存在することを認め、その上で自分がコントロールできることだけに気持ちを集中させること。それが私たちがここ2週間にやったことだった。グランドスラム大会は試合の間に1日のオフ日があり、考える時間があるからより難しいの。でも彼女はうまく対処することに成功したわ」と説明した。

 一方のガウフはほぼ1ショットも無駄にしない激しさで畳みかけてくるシフィオンテクを前に状況を逆転させることのできなかったこの試合のあと、「ふたたび多くのグランドスラム大会決勝に戻ってこれるよう願うわ。今日の私は多くの感情を経験し、幸せであると同時に悲しかった。だから泣いたの」と心情を吐露した。

「今日の彼女(シフィオンテク)は非常にいいプレーをし、私はそれに対処できなかった。直ぐに練習に戻り、より強くなって戻ってくるつもりよ。試合前も試合中も自分の力を信じていたし、今も自信はある。より強くなるために何をすべきかはわかっているわ」

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写真◎Getty Images

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