「もし優勝したらモティベーションを失っていた」準優勝のキリオス [ウインブルドン]

決勝後、クラブハウスで一人ビールを飲むニック・キリオス(オーストラリア)(Getty Images)


 今年3つ目のグランドスラム大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/本戦6月27日~7月10日/グラスコート)の男子シングルス決勝で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)に6-4 3-6 4-6 6-7(3)で敗れたニック・キリオス(オーストラリア)が試合を振り返った。

「とても残念だ。決勝でどんなプレーをするか、そこにいるだけの価値が自分にあるのか不安もあった。でも、今日の試合ではトロフィーを勝ち獲るチャンスは十分にあった。素晴らしい第1セットだった。試合を支配できるポジションにいた。彼はとにかく落ち着いていた。不思議なことに、彼が今日の試合で何か特筆すべきことをしたとは思わない。彼のリターンは元々素晴らしいが、いつも通りにリターンして、とにかく落ち着いていた。大事な場面で集中していて、混乱することがなかった。それが彼の強さの源かもしれない。慌てない、常に自分のことに集中して、アグレッシブ過ぎることもない。完全に脱帽だ。素晴らしい試合だった。俺のサービスはよかったと思う。勝つチャンスがあるところまでいったが、勝負を分けるポイントが取れなかった」

――今日の試合で君のモティベーション、自信はどう影響される?

「もし今日勝っていたら、モティベーションを保つのが難しかったと思う。これまで生きてきてずっと、ウインブルドンで優勝することは究極の目標だと自分に言い聞かせてきた。俺はもうヤニク・シナー(イタリア)やカルロス・アルカラス(スペイン)のような若手じゃなくて、ツアーを10年も周って、ようやくグランドスラム優勝まであと一歩のところまできた。もし優勝していたら、モティベーションを失っていたと思う。他の大会を戦う意味を見出せなかっただろう。ATP250レベルの大会を戦うモティベーションが保てなかったに違いない。でも、自分のテニスは今いい状態にある。ノバクが他の選手たちを倒したのを観るのは、気分がいいものじゃない。でも、グランドスラム大会の決勝をグレーテスト・オブ・オール・タイムの一人と戦うことができた。そしていい勝負をした。大きな自信になるよ。人々は今日の試合で何かが起きるのを期待していた。俺は第1セットを取って、自分のほうが多くの決勝を戦ってきた選手だと感じた。そしてプレッシャーにもうまく対処できた」

――ノバクと対戦したのは5年前(2戦ともキリオスが勝利)だった。そのときと何が違った?

「ベスト・オブ5セットだということ。2度の対戦はどちらも3セットマッチ。そのときは第1セットを落としたときにもうあとがなく、一息つくこともできないからプレッシャーが大きい。ノバクやラファエル・ナダル(スペイン)、ロジャー・フェデラー(スイス)を相手に5セットマッチを戦うとき、第1セットを取ったとしても、まだそこからエベレストを登らなければ勝てないようなもの。彼に2勝した3セットマッチでは第1セットを奪って、完全にノバクを凌駕していた。そこから相手を押し続けた。第4セットのタイブレークでもう少し安定したプレーをして第5セットに持ち込めていたら、どちらが勝ってもおかしくなかったはず。あの時間帯は、フィジカルの状態が凄くよくなっていたのに。彼はとにかく落ち着いていた。慌てるところがまったくない。彼のセカンドサーブを叩こうと思った。そして自分のサービス自体もよかった。なのに、かなり多くコートに返されてしまった」

――これまで対戦した中でもっとも強い相手だった?

「そうとは言えない。さっきも言ったように、自分が勝つチャンスも十分にあった。ノバクは、フェデラーのように、凄く悪い気分に陥らせることがなかった。ビッグ3の中で、フェデラーは相手をかなり悪い気分にさせる。コートから出ていきたい気持ちにさせられるんだ。コートが物凄く狭く感じる。ナダルやノバクが相手だと、もう少しベースラインからボールを返すことができるんだ。フェデラーは簡単にしかも早く、こちらを打ち負かすことができる。タフな状況ではあった。ウインブルドンの決勝という不安もあり、1日丸ごとオフがあることで大きな不安もあった。昨夜もよく寝られなかった。準決勝を戦わなかったことで、ずっと決勝のことを考えていた。でも、それも経験で何とかした。うまく対処して今日の決勝に臨んだ。戦術的にやるべきことをやって、チャンスもあった。それでも足りなかっただけだ」

――ジョコビッチの落ち着き、君のウインブルドンでまた戦いたいという意欲。これらは今後自分のテニスの中で向上させたい部分?

「今大会に出場した他の126選手は、誰もが自分の落ち着きを改善できるはずだ。実は試合中少し怒っていた。もしこの試合に勝ったら、自分がテニスの不滅の存在になってしまう。皆が人生を懸けて戦う場所、それだけ大きなチャンスだった。第1セットを取り、それでも彼は安定していて、少しずつ自分は揺らぎ始めた。第4セットを取っていたらどうなったか、誰にもわからない。落ち着きだけでなく、自分のテニスで改善できる点はかなり多い。これまでもかなり練習してきたが、フォアハンドのリターンは改善が必要だ。いつだってより強くなれるし、フィジカル面でもよくなれる。今大会に出ている選手は誰でもまだまだ成長できる」

――ウインブルドン決勝でナーバスになっていると言ったが、初めての経験でどんなことを楽しめた?

「あの舞台に自分が相応しいと感じた。コートに立って、彼の最初のサービスゲームを攻めた。いい試合への入りで助けになった。クリスチャン・ガリン(チリ)との準々決勝では9ポイント連続で落とす場面があったんだ。あと、ノバクに2勝している事実も大きな助けだった。勝ったときのいい経験を呼び戻すことができた。これまでもATPマスターズ1000大会の決勝など、決勝戦の経験は多く、その成績もいい。決勝でいい選手とたくさん対戦してきた。でも、ノバクには戦いながら生かすことができる過去の経験が本当に豊富にある。ウインブルドン4連覇だ。それだけ優勝して、勝つ経験をしているのは凄い力になる。過去に何度も経験した舞台だから、自信を持って自分を信じられる。それは何度も達成することでしか得られないものだ。どれだけいつも自信を持っているのか。特にウインブルドンではね。でも、今日の決勝のおかげで自分も大きな経験を積んだ。自分はあの場に相応しいと思った。自分のレベルもそこに達している。この数週間は、それらをうまくまとめることができて、いい結果が出ていたと思う」

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写真◎Getty Images

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