遊川大和、早坂来麗愛、ITFジュニア初戴冠の2人が目指す、世界への道のり [2023リポビタン国際ジュニア in 久留米]
これは、元世界4位の伊達公子が、「世界を見つめて戦うジュニアに育ってほしい」という思いのもと、国内でITFジュニアのポイントが獲得できる大会として創設した国際大会で、昨年、第1回大会を開催。今年は2年目となる。
「この時期、久留米は良い気候だと聞きましたが、昨年に続き、今年も良い気候、そしてハードコートという環境下で大会ができることは、本当にありがたいことです」
大会ゼネラルプロデューサーの伊達が語るように、温暖な気候の中で、ジュニアたちは熱戦を繰り広げた。
3月は高校テニスでは全国選抜高校テニス大会、他にも都道府県ジュニア大会が開催される時期で、選手たちは新年度を迎えるにあたり、高いモチベーションを持って今大会に臨んでいる。
男子シングルスは、関西高校の遊川大和が、鈴木琉斗(TC コスパ かわち)をストレートで倒し、ITF初優勝を果たした。
遊川は、昨年12月、西岡良仁が主催する「Yoshi’s cup」において、3位という好成績を残し、遠征費の支援が受けられる「西岡賞」を獲得した選手だ。彼にとって、この大会参戦は大きな影響を与え、さらにモチベーションが高まったことを伺わせる。
遊川大和
「西岡選手や、添田(豪)監督に、自分のプレーの良さや、もっと伸ばした方がいいところをアドバイスしていただきました。今回は、前へ入ってボレーで決めたり、パッシングが得意なので、そういう場面を作ったり、フォアのミスを減らすなど、そういうプレーができるようにしたことが結果に繋がったので、とても嬉しい」
遊川は大学への進学を考えているが、その後プロへ進みたいという。現在は大学卒業後にプロ入りする選手は珍しくない。将来を見据えて大学生活を送れば、またそれも充実したものとなるだろう。
準優勝の鈴木は、昨年の山梨に続き、2度目のITFジュニア決勝進出。初優勝とはならなかったが、現在15歳という年齢からすれば、今後の成長が期待できる結果だったといえる。
鈴木琉斗
この大会に出場するジュニアたちに伊達が望んでいることは、「世界で戦えるような、打たれ強く、タフで、勝負強いジュニアに育ってほしい」ということだ。プロとして世界を回るようになれば、各国から優勝を目指す強者たちと戦い続けることになる。毎週続くツアーの中で、自分の足りないもの、伸ばすべきものを考えながら、試合を続けていくことが仕事の全て。だからこそ、選手たちがどういう思いで、今大会に臨んでいるのかということが、大切になってくる。
女子優勝の早坂来麗愛(ウイニングショット)は、その中で、もがきつつ、一つの光を見出した。
早坂来麗愛
決勝で対戦した市岡梓奈(グリーンテニスクラブ)は、昨年岐阜のITFジュニアで初優勝を飾り、ランキングを上げてきている選手だ。粘り強さを生み出す無尽蔵の体力は、準決勝の稲場らん(あじさいMTCアカデミー)と4時間5分のマラソンマッチを制して勝ち上がってきたことからも証明されている。
市岡梓奈
早坂はそれまで対市岡に0勝5敗という対戦成績だった。強いサービス、体を大きく使って打ち込むフォアが大きな武器だが、市岡の粘りを前に、相手よりも早くミスしてしまい、勝つことができなかった。
しかし、今大会では「自分のやるべきこと」を明確にして練習に取り組み、その成果を発揮した。
まずはサービスのさらなる強化。1日1時間の練習で、その確率と精度を上げた。そしてストロークでは、打ちすぎてミスをすることを減らし、本当に打てる場面まで待つことができるようになった。
そしてメンタル面では、ポイントを落としたとしても前向きな精神状態を作ること。ミスを引きずらないことで、連続してポイントを失うことがなくなったという。
そうして迎えた初の決勝で、一貫したそのプレーをやり遂げた結果、6-1 6-2のスコアで優勝を収めた。
今年5月に15歳の誕生日を迎える早坂にとって、待望のタイトル獲得は、今後の活動において、大きな自信をもたらした。
伊達は「自分のやりたいこと、試合でやらなければいけないことを考え、取り組んだことが優勝という結果として出たと思う。昨年からITFの大会に出始め、1年でこれだけ成長したことは、純粋に評価できる」と太鼓判を押す。
早坂の成長を喜ぶ伊達公子
「グレードの高い大会にも出場し、ランキングをもっともっと上げていきたい」という早坂。1000位台だったランキングは、この勝利で834位へと上がっている。彼女がどのような歩みで選手として成長していくのか、注目したい。
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