ナダルが13回目のロラン・ギャロス優勝まであと一歩 [フレンチ・オープン]

 フィリップ・シャトリエ・コートの午後の太陽はコート上に奇妙な影を落とし、まぶしさによって片側の視野を妨げていたためシュワルツマンは野球帽のつばが目を守るように向きを変えなければならなかった。

 これはナダルにとって34回目のグランドスラム大会準決勝であり、シュワルツマンにとっては初めての経験だった。加えてシュワルツマンは5セットにもつれ込んだ準々決勝で、USオープンを制したばかりでここ2年連続フレンチ・オープン準優勝だった第3シードのドミニク・ティーム(オーストリア)を倒すのに5時間8分の戦いを強いられていた。つまり彼はそこで、かなりのエネルギーを消耗していたのだ。

 身長170cmのシュワルツマンが相手が繰り出す高く跳ねる恐るべきトップスピンのフォアハンドを返すために両手打ちバックハンドを飛び上がって打たなければならなかった中、ナダルは序盤に長くて体力を消耗させるラリーに従事した。第1ゲームでは11分をかけてナダルが最終的にキープしたが、14ポイントのうち6回は少なくとも10本以上、最高で28本のラリーがあった。

「僕がラファに対してプレーする試合はひとつ残らず、出だしはいつもこんな具合なんだ。1-1になるのに25分かかるという感じだよ」とくすくす笑いながらシュワルツマンは話した。「そうなることを予想していたよ」。

 それはこのセットでどのように進むかを暗示し、プレーした69ポイントの中に10本以上のラリーが22回も含まれていた。そしてそのセットでは、ウィナー数で16対6で上回ったナダルが主導権を握った。その数字は試合が終わったとき、38対24になっていた。

 レシーブの際に通常よりずっと前方に当たるベースラインの上に立ってセカンドサーブにプレッシャーをかけたナダルは、シュワルツマンがファーストサーブを入れられなかった最初の5回の機会でそのポイントを取った。ナダルはまたネットでも優れたところを見せ、2セットを通して前に出た15回中13ポイントを獲得した。

 ナダルは第3セットで先にワンブレークしたあとに少しだけ揺らぎ、シュワルツマンが無抵抗のまま負けることを拒否する中で2度ブレークされた。シュワルツマンは第3セットの後半について、「僕の側から見たこの試合の最高の時間帯だった」と呼んだ。

 フランスで新規感染者が増えつつあることから観客は1日1000人しか許されていなかった中、まばらな観客たちは第3セットの後半にシュワルツマンのほうを応援していた。それは彼らがシュワルツマンの勝利に本気で肩入れしていたからというより、もう少し長くテニスを観たかったからなのだろう。

フレンチ・オープン2020|トーナメント表

 カギとなるゲームは、第3セット5-5で迎えた第11ゲームだった。そのゲームは10分以上かかり、シュワルツマンにはブレークするチャンスが3回あった。そのブレークポイントのどれかひとつでも取っていれば、彼はサービング・フォー・ザ・セットという優位な立場に立つことができていたはずだったのである。

 しかしナダルはそのピンチを、フォアハンドで決めた2本のウィナーとボレーのウィナーというアグレッシブなプレーによって帳消しにした。

「すべてのプロセスを通り抜けることは重要だ。苦しまなければならない。苦しむことなくロラン・ギャロスの決勝に行くことを要求することはできない。それがここで起きたことだ」とナダルは競った第3セットについて語った。「でも僕は道を見つけ出した。そうだろう?」(APライター◎ハワード・フェンドリック&ジェローム・パグマイア/構成◎テニスマガジン)

※写真はラファエル・ナダル(スペイン)
PARIS, FRANCE - OCTOBER 09: Rafael Nadal of Spain celebrates after winning match point during his Men's Singles semifinals match against Diego Schwartzman of Argentina on day thirteen of the 2020 French Open at Roland Garros on October 09, 2020 in Paris, France. (Photo by Shaun Botterill/Getty Images)

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