メディアの監視組織が、セレナの風刺画は基準に違反していないと裁決
オーストラリア・プレス協議会は、昨年9月にメルボルンの新聞であるヘラルド・サンに掲載されたあと世界各地で非難の声を呼び起こしたセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の風刺画について、基準に違反する要素はないという裁決を下した。
風刺画家のマーク・ナイツ氏によるセレナの描写は、グランドスラム大会を23度制した女王がUSオープン決勝で大坂なおみ(日清食品)に敗れた試合中に、怒りにかられている様子をモチーフにしていた。
絵の中で、セレナは口を大きく開け、拳を握りしめ、壊れたテニスラケットと赤ん坊のおしゃぶりの上で飛び跳ねている。そしてその横で審判が、日本人の母とハイチ人の父を持つ大坂を意味しているらしいブロンドのスリムな女性に、「彼女(セレナ)を勝たせるわけにはいかないのか?」と尋ねているというものだ。
月曜日に下された判決の中で、オーストラリア・プレス協議会は、「ある読者がその風刺画を不快であるととらえたことは知っているが、世界的に有名なプレーヤーの振るまいに対するコメントには、十分な世間の関心が寄せられていた」と述べた。
ナイツ氏の風刺画を批判した者たちは、セレナを、壊れたラケットの上で飛び跳ねている怒った不格好な大口の黒人女性として描いていることが、黒人女性に付いて回る固定観念の明瞭な例であると主張していた。
プレス協議会は、この風刺画は人種差別的かつ男尊女卑的であると信じる人々から苦情を受け取ったことを明かした。
「特に重大視された点は、その風刺画がセレナさんを、大きな唇、幅が広く平たい鼻、試合中にセレナさんがやっていたのとは違う、ワイルドなアフロ・スタイルのポニーテール、粗暴なサルのようなポーズで描かれていたことだった」と協議会は声明文の中で説明した。
「協議会は、この風刺画が意見を表現するために誇張と滑稽さを使ったことを考慮しはしたが、それはセレナさんを粗暴なサルのように描いたのではなく、ほとんどのオーストラリアの読者に親しまれてきた人種差別的でない風刺、“おしゃぶりを吐き出している”彼女として見せたのだ、という出版社の主張を受け入れた」
“おしゃぶりを吐き出す“というのは、オーストラリアの表現で“癇癪を起こす”ことを意味する。
アメリカの新聞、ワシントン・ポストはそれが掲載された当時、その風刺画を「19世紀と20世紀に非常に一般的だった、人間性を奪うような性質を持ったジム・クロウの風刺画を反映している」と言って批判した。
それに対してヘラルド・サンは、世論の関心を集めた出来事を表現するため、この風刺画は、皮肉、風刺、誇張、そしてユーモアを使ったのだと返答した。
ナイツ氏は月曜日にオーストラリアのABCテレビに対し、協議会の裁決に非常に満足しているとコメントした。
「私は、風刺画の描き方を変えるつもりはない。なぜなら私は、自分が非常に自由で公平な風刺画家だと思っており、それらの真価に応じて問題を受け入れ、価値観に基づいて描いているからだ」と彼は語った。
プレス協議会は、この風刺画は、試合中のセレナのよくない振るまいに対する答えだ、という新聞の主張を受け入れたと述べた。
同紙は、「この風刺画は、ある人種や性別を否定的に描くことを意図してはおらず、この風刺画家が何十年にもわたって描いてきたやり方で描かれていた。ただ、同新聞の地元読者層のための、スポーツにかかわる風刺画であることのみを意図している」とプレス協議会は答申の中で説明した。
大坂に対するUSオープン決勝の間、セレナはサイドラインの客席にいたコーチからコーチングを受けたことで警告を受けた。セレナは、自分は不正行為などしていないと主張し、断固として自己弁護をした。
その少しあと、彼女はフラストレーションからラケットを叩き折り、2度目の警告の罰則として1ポイントをはく奪されると、彼女はさらに抗議して主審に謝罪を要求。主審は今度は彼女から1ゲームをはく奪したのだった。
セレナはオーストラリアン・オープンで7度優勝し、1998年以来、シーズン最初のグランドスラム大会でプレーするたびにメルボルンパークの観客の人気者だった。彼女は先月、オーストラリアン・オープンに帰還したが、準々決勝で敗れていた。(C)AP(テニスマガジン)
※写真はセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)、昨年9月のUSオープンで撮影
2018 US Open Tennis Tournament- Day Thirteen. Serena Williams of the United States awaits the presentations after her controversial loss to Naomi Osaka of Japan in the Women's Singles Final on Arthur Ashe Stadium at the 2018 US Open Tennis Tournament at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on September 8th, 2018 in Flushing, Queens, New York City. (Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)
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