ジョコビッチとコーチが、ナダルとフェデラーのグランドスラム・タイトル総数を見つめる「できない理由はない」
ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、追跡に喜んで挑む準備ができている男であるように見える。すでに「15」のグランドスラム・タイトルを獲ったジョコビッチは、今やラファエル・ナダル(スペイン)の「17」まであとふたつ、ロジャー・フェデラー(スイス)の「20」まであと5つと迫っている。
オーストラリアン・オープン(1月14〜27日/オーストラリア・メルボルン/ハードコート)で3大会連続となるグランドスラム優勝を果たしたあと、ジョコビッチは彼らを追っているのかと尋ねられた。
これは、ナダルを含むアスリートたちが何年にも渡って繰り返し、控えめに扱うか、完全に目をそらすようなそぶりを見せてきた類いのことだった。
しかし、ジョコビッチは違った。彼はこれをはっきり認めているのだ。
「そうだな、僕がまだプレーしていて、グランドスラム大会で勝っているなら、僕がそれらの記録を追っていると結論付けるのは理にかなったことだ」と彼は答えた。
「僕は15のグランドスラム・タイトルを勝ち獲れたことをうれしく思う。最多グランドスラム・タイトル獲得数の歴史の中で、いま自分の前にふたりの男がいることは知っている。でも、僕にはまだ時間がある。急いではいないよ」
それは、彼のチームのテーマでもある。
先の日曜日の夜、メルボルンパークでジョコビッチのコーチであるマリアン・バイダは、決勝でジョコビッチがナダルに対して収めた6-3 6-2 6-3の信じがたいほど一方的な勝利と、それがもたらすより大きな意味を分析している間、微笑を止めることができなかった。
バイダは、7度目のオーストラリアン・オープン優勝には大きな意味があると言いはした。しかし彼は、違う数字について話すことのほうに、より興味を持っていた。
「より重要なのは、彼が獲得したグランドスラム・タイトルの総数が15に至ったということだ。信じられないような数字だよ」とバイダはコメントした。
「しかし、20はまだ遠い。多くのことが起こりえるからね。現時点でのノバクは、たぶんもうひとつのグランドスラム大会で優勝に至るということについて、すごくいい手応えを得ている」
あとひとつだけ?
「ああ、あとひとつだ」と彼は健全な笑い声とともに言い、その声のトーンは次第に上がっていった。
「そして、それが済んだらまたもうひとつ。それから、またもうひとつだ! ひとつ、またひとつさ。間違いなく、長期のゴールはラファの数字に追いつくことであり、もし可能なら――彼の年齢を考えれば可能だと思うが――ロジャーの数字にも。できない理由はないさ」
右肘に手術を受けてから1年、ジョコビッチはもはや何の痛みも感じておらず、世界ランク1位で、おそらくこれまでになく調子がいい。
最後の2試合に勝った際の彼の完璧に近い調子を――準決勝と決勝で合わせて58本のウィナーを決め、アンフォーストエラーは14本にとどめた――ジョコビッチは“うれしい驚き”と表現し、ナダルは「可能な限り最高に高いレべル」と見なした。
1回戦から大会を通して1セットも落とさず、一度もサービスゲームをブレークされていなかったナダルと対峙した決勝で、ジョコビッチは5度のブレークに成功した。彼はまた、自分のサービスから始まった最初の26ポイントのうち25本を取った。
「試合全体を通し、ノバクは非常に研ぎ澄まされていた」というのがバイダの評価だった。
「彼にはとても多くの『アップ』の局面があったが、『ダウン』はまったくなかった」
そんな訳で、いま現在すべてがジョコビッチにとってよい形で機能しているようなのだ。
2015年から16年にかけて彼が一度成し遂げているグランドスラム4大会連続制覇という離れ業も、できない理由がどこにあるだろうか? 1969年のロッド・レーバー(オーストラリア)以来、どの男子選手もなしえていない、1年の間に4大大会すべてを制す『真のグランドスラム』も、ナダルとフェデラーに追いつき、最終的に追い越すことも。
ジョコビッチの子供時代のアイドルだったピート・サンプラス(アメリカ)が、2002年USオープン決勝でもっとも偉大なライバルのアンドレ・アガシ(アメリカ)を倒して優勝したとき、彼のグランドスラム・タイトルの総数は「14」に至った。当時、グランドスラム大会を12回以上制した男は、彼以外にひとりもいなかったのである。
フェデラー、ナダル、ジョコビッチは、その当時まだ一度もグランドスラム大会で優勝したことがなかった。今、この3人がどこに立っているかを見てみるといい。
サンプラスは当時ちょうど31歳になったところで、その後、ツアーで二度と試合をプレーしなかった。
フェデラーが今37歳で、ナダルが32歳、そしてジョコビッチは31歳だ。これは、別の時代なのである。バイダが言ったように、「ロジャーは、われわれ皆のお手本」なのだ。
そう、もしかするとフェデラーは、彼のタイトル総数にさらなるひとつを加えるかもしれない。ナダルは、特にフレンチ・オープンのレッドクレーで、間違いなくそれをやってのけるように思える。
ジョコビッチがどこに行きつくかを観るのは、非常に興味深い。
「僕は間違いなく、自分のテニスを向上させ続けること、来たる数年の間、このように高いレベルで戦うことができるよう、メンタル面、フィジカル面、感情的な面での、現在の自分の全体的な健康と幸福を保つことに、気持ちを集中させたいと思っている」とジョコビッチは語った。
「そして、最終的に、ロジャーの記録に近づいていくことを目指せるように」
(APライター◎ハワード・ヘンドリック)(テニスマガジン)
※写真はロッカールームで優勝カップを手にチームと喜びを分かち合うノバク・ジョコビッチ(セルビア)、右隣りはコーチのマリアン・バイダ
MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 27: Novak Djokovic of Serbia poses with the Norman Brookes Challenge Cup in the locker room with team following victory in his Men's Singles Final match against Rafael Nadal of Spain during day 14 of the 2019 Australian Open at Melbourne Park on January 27, 2019 in Melbourne, Australia. (Photo by Julian Finney/Getty Images)
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