ジョコビッチの“デジャブ”とふたつの再戦 [フレンチ・オープン]

今年最後のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦9月27日~10月11日/クレーコート)の男子シングルス4回戦で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第15シードのカレン・ハチャノフ(ロシア)を6-4 6-3 6-3で退けた。この試合はここ4試合でわずか25ゲームしか落としていないジョコビッチにとって、もっとも厳しい試合だったと言っていい。

 しかしより注意を引いたのは、ジョコビッチが「非常に気まずい“デジャブ”」と呼んだものだった。

 それは偶然以外の何物でもない完全なる事故だったのだが、ジョコビッチが相手のファーストサーブをリターンしようとダブルスアレーに体を伸ばした際にボールが彼のラケットのフレームに当たって跳ね、座っていた線審の頭にぶつかってしまったのである。

 それでもジョコビッチが失格処分を受けたUSオープンの思い出が彷彿されるその瞬間には、明確な違いがあった。パブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)とのUSオープン4回戦ので彼はボールを線審にぶつけてしまったため失格となったが、そのときの彼はベンチに向けて歩きながらややカッとなってボールを後方に打った。反対に今回のアクシデントは、プレーの最中に起きたものだった。

 月曜日の出来事は、感情とは無関係だった。ジョコビッチはすぐさまボールに当たった線審にケガはないか見にいき、線審はすぐに大丈夫だと親指を立てた。試合はそのまま進み、ジョコビッチはロラン・ギャロスで11年連続となる準々決勝進出を決めたのだった。

フレンチ・オープン2020|トーナメント表

「ニューヨークで起きたことがあるから、人々は騒ぎ立てるだろうね」とジョコビッチはコメントした。「僕がツアーでプレーしてきた過去15年に、それは僕にも他の選手にも起きていたことだ」。

 この勝利でジョコビッチは、47度目のグランドスラム8強入りを決めた。一方で第17シードのカレーニョ ブスタは予選から勝ち上がってきた世界ランク186位のダニエル・アルトマイアー(ドイツ)を6-2 7-5 6-2で下し、3年ぶりにベスト8進出を果たした。

 2016年のパリで栄冠に輝いたジョコビッチは、2度目のタイトルと18回目のグランドスラム制覇を目指している。男子では20勝のロジャー・フェデラー(スイス)と19勝のラファエル・ナダル(スペイン)のみが、彼よりも多くの優勝を遂げている。

 トップハーフのもうひとつの準々決勝は、ステファノス・チチパス(ギリシャ)とアンドレイ・ルブレフ(ロシア)の顔合わせとなった。ふたりはともに1回戦で最初の2セットを落とす苦境を経験したが、いずれもそのあと勝ち続けてベスト8に進出した。

 第5シードのチチパスが第18シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)を6-3 7-6(9) 6-2で退け、第13シードのルブレフはマートン・フチョビッチ(ハンガリー)に6-7(4) 7-5 6-4 7-6(3)で競り勝った。

 水曜日に行われる予定の準々決勝は、ともにある種の因縁の再戦となる。ジョコビッチが失格になったUSオープン4回戦は、カレーニョ ブスタに対するものだった。また開幕日の日曜日に行われたハンブルク決勝で、ルブレフはチチパスをフルセットの末に倒していた。

「今回はもっと激しく戦って、このチャンスを生かしたい。よりよい結果を出すということは僕にとってすごく重要なんだ」とチチパスは意気込みを語った。「彼が難しい相手であることは分かっているよ」。(APライター◎ハワード・フェンドリック&ジェローム・パグマイア/構成◎テニスマガジン)

※写真はノバク・ジョコビッチ(セルビア/奥)とカレン・ハチャノフ(ロシア)
PARIS, FRANCE - OCTOBER 05: Novak Djokovic of Serbia (top) meet Karen Khachanov of Russia at the net following victory in their Men's Singles fourth round match on day nine of the 2020 French Open at Roland Garros on October 05, 2020 in Paris, France. (Photo by Julian Finney/Getty Images)

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