ハレプが4度目の正直でグランドスラム初制覇「私は信じた、そして諦めなかった」 [フレンチ・オープン]

「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月27日~6月10日/クレーコート)の女子シングルス決勝。

 おそらく、グランドスラム決勝で敗れた多くの経験が、シモナ・ハレプ(ルーマニア)が今回それを勝ち獲る助けとなったのかもしれない。

 ハレプは、この土曜日にフレンチ・オープンのタイトルをかけてスローン・スティーブンス(アメリカ)と対戦する前、グランドスラム大会の決勝で3戦全敗だった。それゆえ、思い出すべきことは山のようにあったのだ。リードを奪われたとき、どんな気持ちがするものなのか。重大なミスを犯すこと、後悔を胸に歩き去ることが、どんな感じがするものなのか。

「私が敗れたあれら3つの決勝から得た経験のすべてが、ポジティブなものだった」とハレプは言った。

「そしてそれが、私に信じるためのパワーを少しばかり余計に与えてくれたの」

 多くの長いラリーと、重要な流れの転換があったその試合で、ハレプは第1セットを落とし、第2セットでも先にサービスゲームをブレークされながらも挽回した。こうして彼女は3-6 6-4 6-1でスティーブンスを倒し、世界1位の座に、初のグランドスラム優勝杯を加えたのである。

「それがもっとも重要なことだった。“コート上で集中し続ける”ということが」とハレプは言った。ルーマニア人がグランドスラム大会のタイトルを獲ったのは、彼女のマネージャーであるバージニア・ルジッチが1978年フレンチ・オープンで優勝したとき以来のことだ。

「私は信じた。そして決して諦めなかった」

 26歳のハレプは、この特別な試合をこう描写した。彼女は、彼女キャリアそのものについて話していたのかもしれない。

 これに先立ち2度、ハレプはロラン・ギャロス決勝で敗れていた。最初は、2014年にマリア・シャラポワ(ロシア)に、それから2017年には、1セットアップで第2セット3-0とリードしていたにも関わらず、エレナ・オスタペンコ(ラトビア)に。彼女の3度目の準優勝は、今年1月のオーストラリアン・オープンの、対カロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)戦で起きた。

「彼女がチャンスを得たとき、数回腹を蹴飛ばされたが…」とハレプのコーチ、ダレン・ケーヒル(オーストラリア)は言った。

「道が険しければ、そこにたどり着いたとき、行先の景色はより美しく見える、と人は言う。それが今日、彼女に起きたことだった」

 その蒸し暑い午後、ハレプはゆっくりと始め、昨年のUSオープンで初のグランドスラム・タイトルを獲得していた第10シードのスティーブンスに対処することができないでいた。

 双方がディフェンスに精通しており、スピード、強さ、技術、本能を通し、ほとんどすべてのボールをネットの向こうに返すための方法を見つけ出していた。彼女たちはやはり揃って、一瞬のうちに攻撃に切り替えることができる選手でもあった。

 それらの特色が、10、20ストローク、ときにはそれ以上のラリーに従事することに力を貸し、それは、息を飲んだり、もう決まったと思いこんで拍手を始めたりする観客たちによって、ときおり邪魔された。

 言っておくが、選手たちはループショットを交わし合っていたわけではない。つまり、ただボールをコート内に入れていたわけではないのだ。

 ほとんどの場合、彼女たちは力強くボールを叩き、ポイントを終わらせる意図を込めてショットを打っていた。ハレプがフォアハンドをネットにかけ、スティーブンスがブレークして3-1としたときには頻繁に、スティーブンスの側は楽々とやっているように見えていた。

 ハレプが14ショットのラリーをバックハンドのサイドアウトで終わらせたとき、スティーブンスは最初のセットを取った。彼女は、サッカーのアメリカ代表ジョジー・アルティドールもいる自分の身内のボックスシートの方を向き、こぶしを振った。

 その少しあと、スティーブンスは第2セットの出だしでブレークを果たし、それからキープして2-0とした。彼女は、ツアー決勝での戦績を7勝0敗に向上させるための道を、突き進んでいるように見えた。

 ところがそれから突然、すべてが変わったのだ。スティーブンスは、ミスし始めた。ダブルフォールトをおかし、フォアハンドをネットに引っかけ、バックハンドをサイドに外し、もう1本アウトする。ハレプは、18ポイントのうち15本を取り、4ゲームを連取した。

 ハレプとケーヒルの双方が、スティーブンスが少し酔っているように見えると考えたほどに。

 第2セット4-4から、ハレプは連続で7ゲームを取り、第2セットを奪った上に、第3セットで5-0とリードを広げた。

 カギのひとつは、ハレプがアグレッシブさを少し抑え、スティーブンスがミスを犯すのを待ちながら、ボールの下に少し余計に空間を入れ始めたことだった。それは機能した。スティーブンスは39本と、ハレプより13本多いアンフォーストエラーを犯すことになったのである。

 騒々しいファンたちは、「シモナ、シモナ」と試合を通して彼女の名を叫びながら、ハレプを後押しし続けた。

 試合が終わったとき、ハレプはベースラインでラケットを落とし、両手で顔を覆った。そしてすぐに、観客席に登り、コーチのケーヒルと抱擁を交わした。

 表彰式の間、先の9月にニューヨークで優勝しているぶん、この手のことではより経験あるスティーブンスは、ハレプが彼女の新しい銀のトロフィを何気なく抱えていることに気付いた。スティーブンスはハレプに、トロフィをより誇らし気に、頭の上に掲げるべきだと言った。

「あなたはずっとこれを待っていたのよ」とのちにスティーブンスは言った。

「だからあなたはそれを天に突き上げ、今日何を獲得したかを皆に見せるといいわ」

 ハレプはその言葉に耳を傾けた。今、彼女は、優勝杯を家に誇らしげに飾ることだろう。彼女は、自分のWTAランキングと調和するグランドスラム・タイトルを勝ち獲った。その過程でいくつかの過ちと失敗はあったが、彼女はついに、望んでいたものを手に入れたのだ。

「彼女の旅路は、厳しいものだった。それに彼女は昨年のここと、オーストラリアで、胸が張り裂けるような思いを味わった」とスティーブンスは言った。

「これはすばらしいストーリーであり、彼女にとって、素晴らしい瞬間なのよ」(C)AP(テニスマガジン)

※写真はフレンチ・オープンの優勝杯にキスをするシモナ・ハレプ(ルーマニア)(撮影◎毛受亮介)

続きを読むには、部員登録が必要です。

部員登録(無料/メール登録)すると、部員限定記事が無制限でお読みいただけます。

いますぐ登録

Pick up

Ranking of articles