厳しい条件に賛否、USオープンを取り巻く問題とは?

ノバク・ジョコビッチ(セルビア)はUSオープンが提案している選手のスタッフたちに課せられる厳しい制限と他の極端な変更について思い悩んでおり、開催された場合でも出場しないかしれないと話している。

 ディフェンディング・チャンピオンのラファエル・ナダル(スペイン)もまた、現時点ではフラッシングメドウに来たいとは考えていないようだ。

 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの中でUSオープンを開催するか否かに関する全米テニス協会(USTA)の決断(早ければ来週に下されるかもしれない)をテニス界が待っている間、大会の周辺には多くの疑問が逆巻いている。

 その問題のいくつかをここで見ていこう。

プレーヤーは出場するのか?

 世界ランクのトップ2で過去8つのグランドスラム大会を制した1位のジョコビッチと2位のナダルが、ふたりとも参戦に躊躇を見せている。ジョコビッチはセルビアの国営テレビ「RTS」に、自分が話したほとんどのプレーヤーがUSオープン出場について「かなりネガティブ」だったと話し、彼自身の考えとしては「現状のままでは9月初頭からクレーコートでシーズンを続けることになる可能性が高い」と発言した。

 ハードコートのUSオープン本戦は、8月31日から始まる予定になっている。一方でクレーコートのフレンチ・オープン開催は、パンデミックにより5月から9月後半へと変更された。

「USオープンをプレーする間に我々が遵守しなければならないはずのルールを主催者が伝えてきたが、それらは本当に極端なものだ」とジョコビッチは前述のテレビ番組のインタビューの中でコメントした。「現時点の気持ちでは、僕は『ノー』と言うよ。数ヵ月のうちにどう感じるかはわからないけどね」。

観客の観戦は許されるのか?

 主催者の言葉を聞く限り、今ところ観客が会場に赴くことができるとは想像しにくい。USTAのプロテニス部門の最高責任者であるステイシー・アラスター氏は、彼女のチームが「バーチャルな方法で楽しませて観客を引き込む方法」を考案しようしてきたと説明した。

 昨年の大会では、予選から本戦の3週間の間に85万人のファンたちが会場を訪れた。

選手のスタッフ、取り巻きたちは?

「選手ひとりが5~8人のスタッフや側近たちを従えてくるという形は予定に入っていません」とアラスター氏はAP通信に話した。ジョコビッチはそのポリシーについて、「シンプルに言って、考えられないことだ」と苦言を呈した。「選手にはコーチ、フィットネストレーナー、フィジオセラピストなど優秀なチームのスタッフが必要なんだ」。

 もっとも世界ランク28位のダニエル・エバンズ(イギリス)はこれに同意しておらず、彼は選手に付き添いはひとりだけという制限は「大した問題ではない」と主張した。

「ノバクが言うように、皆がフィットネストレーナーやフィジオを引き連れて旅している訳ではないよ」とエバンズはBBC(英国放送協会)に語った。「だから彼の言い分は、ドローの他の選手たちにとっても当てはまるとは限らないんだ」。

そこで健康はどのようにして守られるのか?

 USTAが手配するチャーター便で旅する前に、プレーヤーはまずウイルス検査で陰性であることを証明する必要がある。おそらく健康状態と体温のチェックが毎日あり、ときには鼻の粘膜や唾液を調べたり抗体検査も行われるはずだ。

 ジョコビッチは週に2、3回テストがあると伝えられたと明かし、プレーヤーはマンハッタンに行くことが許されないなど移動の制限についても言及した。アラスター氏は移動を最小限に抑えるため、会場周辺に選手の宿泊施設を集中させる計画について話している。

フォーマットに変更はあるか?

 ここまでに開催されたいくつかの非公式のエキシビション大会では4ゲーム先取などの短い試合方法が採用されていたが、USTAにはスコアのシステムを変えるつもりはない。そして選手たち自身が望まない限り、男子シングルスを3セットマッチにするつもりはないという。

 しかし通常は予選、ダブルス、ジュニア、車いすテニスなどがある種目の総数が減らされる可能性はあるという。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※写真は昨年のUSオープン男子シングルス準決勝が行われたアーサー・アッシュ・スタジアムの様子(Getty Images)

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