ミルマンがパンデミック中の裏庭テニスを経て練習に復帰
1月にオーストラリアン・オープンでロジャー・フェデラー(スイス)に対する5セットマッチを落としたわずか4試合後、ジョン・ミルマン(オーストラリア)は練習コートを探すためにあの手この手を尽くさなければならなかった。
彼が突然オーストラリアのファンに知られない存在となったという訳ではない。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで世界中のアスリートが創意工夫をしなければならない中、心地よい場所を見つけることは難しいことだったのだ。
男子と女子のプロテニスツアーはパンデミックにより3月途中から休止されている。ブリスベン国際の会場でもあるクイーンズランド・テニスセンターという彼の通常の練習場は、人と人との間に距離を置く厳格な制限のためにロックダウン中は閉鎖されていた。
そんな訳でミルマンは、ときには初対面の人も含めて個人宅の裏庭にあるテニスコートでプレーするという道を選んだのだ。
「素晴らしかったよ。本当に楽しかった」と彼は振り返った。「僕を歓迎してくれ、僕が調子を維持するためにプレーすることを許してくれた親切な家族がいくつかあった。本当に素敵だった。もちろんソーシャルディスタンス(人と人との間に〇mの距離を置くというパンデミック中の規則)を保ちながらだよ。規則はすべて守った」。
クイーンズランド州のナショナルアカデミーのマネージャーであるクリス・マホニー氏は、ミルマンを含めた12人のプロ選手のためにフィットネス用の器具を彼らの自宅に送るよう手配し、デジタル会議のような形でトレーナーたちと連絡を維持することができるようにした。彼はまた選手たちが練習できるよう、アカデミーのネットワーク内にいる人々が所有するコートを6面ほど準備した。
それからミルマンは自分のファンをベースに、そのネットワークを広げたのだった。
「ジョニー(ミルマン)は新聞記事の中で何か話し、人々が彼に連絡をとってきて自分の家にコートで練習していいと提案してきたのだったと思います」とマホニー氏は話した。
オーストラリア当局はウイルスの拡散を防ぐことに成功し、国のロックダウンは徐々に緩和されつつある。おかげでいくつかのスポーツ施設は、練習のためにふたたびオープンされた。
そんなこんなで月曜日、ミルマンと仲間たちはパット・ラフター・アリーナのすぐ横で仕事に戻った。
30歳のミルマンは、プロテニスの世界で高みとどん底を経験してきた。彼は2018年USオープンで世界ランク2位だったフェデラーを倒して準々決勝に進出し、その勢いに乗って40位に浮上した。一方で手術から戻ったときには、1ラウンド数百ドルの賞金のためにツアー下部大会でプレーしたこともあった。
2020年シーズンのミルマンはここまで12試合しか公式戦でプレーしておらず、その中には1月のオーストラリアン・オープン3回戦のフェデラーに対する4時間に渡った惜敗もあった。
ツアー再開について、彼は選手およびスタッフやオフィシャルにとって安全になるまで急ぐ必要はないと思っている。その代りに彼は海外渡航ができない期間に選手にやることを与え、地元ファンたちにオーストラリアの才能ある選手たちを観る機会を提供するため、オーストラリア国内でチームイベントを開催することを提案している。
何年も前からされるべきだったと言いながらも、43位のミルマンは現在テニスサーキットでプレーヤーの補償に関する話し合いが優先事項とされていることをうれしく思っている。一部のスポーツ選手たちは、パンデミックのために大幅な給料削減を強いられることになった。
近年グランドスラム大会の予選や早いラウンドで賞金を上げる努力がなされたとはいえ、ミルマンはテニス界における格差問題をパンデミックより深刻にとらえている。
「コロナウイルスがあろうとなかろうと、100位以下の選手たちは1年を通して悪戦苦闘し続けている」とミルマンはオーストラリアのAP通信に語った。「ATP、WTA、ITFは、より適切に運営管理をすべきだ」と彼は訴えた。
「もしかしたら、これはその点に関して議論する出発点になるかもしれない。でも、それほど期待はしていないけどね」(APライター◎ジョン・パイ/構成◎テニスマガジン)
※写真はデビスカップ予選ラウンドでのジョン・ミルマン(オーストラリア)(Getty Images)
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