「どんなときも勝ちたい」3回戦でスビトリーナと激突する15歳のコスチュク [オーストラリアン・オープン]
「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月15~28日/ハードコート)の女子シングルス2回戦を突破した15歳のマルタ・コスチュク(ウクライナ)が、自身について語った。
テニスを始めたばかりの頃は、極端な完璧主義者でひとつのミスをしただけで、怒りを爆発させていたという。その頃、テニスはあまり楽しくなかったそうだ。「どんなときも私はとにかく勝ちたいの。もし負けたら、それは悲劇よ。“もう二度とプレーしたくない”となってしまっていたから」とコスチュク。
オリビア・ロゴウスカ(オーストラリア)を6-3 7-5で退けたことで、この20年のオーストラリアン・オープンで3回戦に進出したもっとも若い選手となった。15歳にして、テニスという競技のアップダウンにも慣れてきたようだ。「今はテニスを楽しんでいる。ようやく、ね」と笑顔を見せた。
コスチュクのメルボルンでのパフォーマンスは素晴らしく、短い時間で急成長を見せている。今大会はグランドスラム初出場だけでなく、WTAレベルのツアー本戦に出場すること自体が初めてなのだ。
彼女のランキングは? 521位。通算獲得賞金額は? 7000㌦以下。
それでも、注目の的となっているコスチュクのプレーは、この大会を戦うのに十分なレベルに達しているように見える。昨年のオーストラリアン・オープン・ジュニアを制したことで、今年は今大会の予選ワイルドカード(主催者推薦枠)を獲得。予選3試合を勝ち抜いて本戦出場を決めた。さらに、本戦1回戦で第25シードのペン・シューアイ(中国)を倒す番狂わせを起こした。
しかも、2回戦ではより厳しい戦いを乗り越えた。ワイルドカードで出場の地元オーストラリアのロゴウスカに対し、マーガレット・コート・アリーナの満員の観衆の前で倒してみせたのだ。
しかし、スタッツを見ると、あまり芳しくない。45本のアンフォーストエラーに対し、ウィナーはわずかに22本。それでも、プレッシャーに負けなかった。パワーに頼る選手はミスが多いが、彼女はミスをしても、自分のパワーショットを打ち続けた。
そして、たくさんのミスショットを連発した。サービング・フォー・ザ・マッチのとき、彼女はサービスのときにフレームでボールを叩いてしまい、もう少しでボールが観客に直撃するところだった。
コスチュクは「太陽が目に入った」と弁明した。「実際は、トスを上げたけど、太陽を打ってしまったの」とも言っていた。
彼女はアクロバットの才能にも恵まれており、ウクライナの全国選手権では、子供ながら4位という成績を残した。しかし、元テニス選手で、現在はコーチでもある母とコートの上で過ごす時間を優先して、11歳でアクロバットをやめてテニス一本に絞った。
昨年、オーストラリアン・オープン・ジュニアを制してからプロの世界に飛び込んだ。彼女の代理人を務めるのは元世界3位のイバン・ルビチッチ(クロアチア)だ。現在、ロジャー・フェデラー(スイス)のコーチを務めており、彼女のプレーに多大な影響を及ぼしている。
「イバンは私と会ったときはいつも助けてくれる。ロジャーとは2度お話ししたわ。ただ、“調子はどうだい?”と挨拶するだけじゃなく、本当にいろんなことを話した。素晴らしい経験だったわ」
コスチュクはメルボルンで3回戦に進んだが、これは1996年に15歳で準々決勝に勝ち進んだマルチナ・ヒンギス(スイス)以来の最年少記録である。
これにより、注目度は一気に高まった。しかし、それは過去に若い選手たちを苦しめてきた種類のものだ。ヒンギスのような若い選手がブレークするケースが減っているのは、WTAが10代選手が出場できる大会数を制限して、彼女たちを守ろうとしているからだ。コスチュクは15歳で出場できる大会は、10大会に制限されている。
それでも「若い選手は舞い上がってしまうもの」と主張するのは、17歳でUSオープンのベスト8に勝ち進んだスイスの天才、ベリンダ・ベンチッチは言う。
「1、2試合勝っただけでみんなに注目されちゃうの。突然、自分は勝たなければいけない“側”に立たされる。そんなことは、本当はあってはならないの」と、今大会1回戦でビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)を倒した番狂わせのあとに2回戦で敗退したベンチッチは言う。
「すべてを楽しんで、初めてのグランドスラムでの気持ち、興奮を忘れず、順調に育ってほしいと思う」とベンチッチはコスチュクにメッセージを送った。
コスチュクの次の相手は、1、2回戦とは比べ物にならないくらい厳しい。第4シードで同国のエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)に決まった。スビトリーナはメルボルンでプレーできるか微妙な状況だったが、今大会への出場を決断。万全ではないとは言え、この一戦での圧倒的優位は変わらない。
「彼女は何も失うものがない。だからこそ、目の前の一戦にすべてを懸けられる。パニックというか、今の状況を冷静に理解できていないと思う」とスビトリーナは自国の後輩について語った。
コスチュクは、自分が試合を重ねるごとに強くなっていると信じている。「楽しみたいと思う。自分の最高のテニスをするだけよ」。(C)AP(テニスマガジン)
※トップ写真はロゴウスカを倒し、笑顔のコスチュク
MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 17: Marta Kostyuk of Ukraine celebrates winning match point in her second round match against Olivia Rogowska of Australia on day three of the 2018 Australian Open at Melbourne Park on January 17, 2018 in Melbourne, Australia. (Photo by Cameron Spencer/Getty Images)
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