堀内昌一先生_第56回テニマガ・テニス部 部活レポート_教えて!サービスのトスアップ【本誌連動記事&動画】
第56回テニマガ・テニス部(2019年4月20日開催)のレポートです。講師は堀内昌一先生(亜細亜大学教授 / テニス部監督)が務め、サービスの正しいボディワークとラケットワークを4時間(講義1時間、オンコートレッスン3時間)にわたり指導しました。その指導の中で参加者がもっとも変わった点が「トスアップ」。そこでテニスマガジン2019年7月号(別冊青嵐号)では部活レポートとして「教えて!サービスのトスアップ」(2019年)と題し、トスアップの重要ポイントを記事にして掲載しました。以下に、その記事とダイジェスト動画を掲載しますので、合わせてご覧ください。動画13分59秒。
概要◎第56回テニマガ・テニス部 部活「テキストは書籍『丸ごと一冊サービス』基礎講座〜たっぷり練習編」/4月20日(土) 講義1時間、オンコートレッスン3時間 /亜細亜大学日の出テニスコート
講師◎堀内昌一
ほりうち・しょういち◎1960年2月1日、東京都生まれ。亜細亜大学教授、テニス部監督。選手時代に83年ユニバーシアード出場。85、86年ジャパンオープン出場も果たした。現在は、学生の育成・強化はもちろんのこと、テニス界全体の普及・強化にも尽力。日本テニス協会公認マスターコーチとして指導者養成に携わる。主な著書は『テニス丸ごと一冊サービス』(書籍)、『テニス丸ごとサービスDVD』のほか、テニスマガジンで連載中の『テニスの戦略と戦術がよくわかるレッスン』をまとめた書籍『テニス丸ごと一冊戦略と戦術(1)~戦術を考えるために必要な基礎知識』『同(2)~サービスキープは勝つための絶対条件』『同(3)~ゲームの最終局面、ポイント獲得!』が好評発売中(ベースボール・マガジン社刊)
写真◎川口洋邦 取材協力◎亜細亜大学テニス部
教えて!
サービスのトスアップ
今回、このサービスの部活に参加されたみなさんは、ボディワークの重要性や正しいラケットワークに注目してくれ、改善しようと努力してくれました。その中で、私がもっとも課題だと感じ、また、指導後に大きく変わったと感じたのが「トスアップ」でした。そこで、ここに紹介するレポートで「トスアップ」を復習しましょう。参加できなかったプレーヤーのみなさんもきっと参考になるはずです。
今回参加した部員のみなさんの課題はこれです!
最初はラケットを持っている手(右手)と、そうでないほうの腕(左手)の連動性がなく、ラケットワークばかりに気がいっていました。レッスン前に書いていただいたアンケートには、トスが正しく上げられない、インパクトが安定しないといった記述が多かったのですが、それも動作の連動に課題があったのだと思います。
トスアップに関して、私が行った主なアドバイスは次のようなものでした。
◉ボールの持ち方が違う
◉身体の向きが違う
◉トスアップの方向が違う
◉トスが高すぎる
◉インパクトを正しく理解していない
などです。
CHECK 1
トスアップの腕を
ネット方向へ上げる
それは間違い!
Before
腕を前から振り上げている
多くの方がトスの腕をネット方向へ振って上げていました。そうすると体幹が使えないためパワーがつくれず、ボールは放り投げるためトスが高くなり、落下の際に加速して、インパクトが難しくなっていました。
After
腕は横方向から
斜め前へ上げる
正しい構えから始めると、身体の捻転に合わせて両肩、両腕が同期し、トスアップの腕は横方向から斜め前方向へ上がるのが自然です。
トスアップの方向を間違えると、
負の連鎖が始まる
多くの方が、トスの腕をネット方向へ振って上げていました。ボールを放り投げるのでトスが高くなり、ボールが加速してインパクトが難しくなります。何より、トスの腕を前から上げると身体のひねりがつくれず、前向きのサービスになってしまいます。前向きのサービスは、グリップもそれに合う形で厚めのグリップになり、そうするとボールの真後ろを打つことになってスピン(自然な回転/基本のナチュラルスピンサービス)がかかりません。
このような負の連鎖にならないためにも、トスアップを修正します。まず構えです。❶コンチネンタルグリップで握り、❷クローズドスタンスで立ち、❸ボールとラケットを揃えて構えます。そのとき❹ラケットヘッドは(右利きの場合)左のネットポールを指すようにしましょう。
クローズドスタンスで構えると身体は横を向くのですが、あえて胸が打球方向を向くようにします。これによって身体がひねられます。力まないように適度なリラックスを心がけます。手首はインパクトの形“くの字”を保ちましょう。余計に曲げたり折ったりせず、まっすぐに伸ばしたりする必要もありません。
この構えを〈スイッチをつくる〉と表現しましょう。そして「スイッチON!」で身体のひねりを戻して、両肩、両腕が同期すると、トスアップの腕は横方向から上がり、斜め前へと上がります。正しいトスアップは、最初の〈正しい構え〉から始まります。
覚えておこう!
「スイッチON!」
正しい構えが〈スイッチ〉となる
“構え”は硬くなりがちなので、リラックス!
やるべきことがいろいろあるため力んでしまい、動作が硬くなったり、ぎこちなくなるのはわからなくはありませんが、トスアップを始める前から硬くなっていては動作を始めづらいです。そこで、ボールを地面に突いたり、深呼吸をしたり、肩の力を抜いたり、相手を見たり、リラックスを心がけましょう。
ラケットの先端は運動連鎖の最後に、一番効率よく大きなエネルギーを生み出してほしいもの。そのためには身体から伸びている腕がゆるゆるの状態が理想で、ムチ運動ができるようにします。手首はほとんど使いません。動作中は、インパクトの形の“くの字”を適度な力加減で保ちます。
CHECK 2
トスアップの
ボールの持ち方
Before
手のひらを上向きにして
ボールを持っている人が多かった
多くの方が手のひらを上に向けてボールをのせていました。そっとボールを置いている人もいれば、ギュッと強く握っている人もいました。手のひらにボールをのせると(手の甲が下を向いて)手首を使ってボールを上げることになります。そうすると放り投げることになり、ボールは乱れて安定しません。いろいろな方向に飛び出してしまいます。
After
手のひら(甲)を横向きにして、ボールを持つように変えた
手のひら(手の甲)を横向きにして、コップを持つようにボールを持ちます。少し斜めに握る感じで、薬指と小指を空けて、カップホルダーのようにしてボールを持ちましょう。おすすめの練習方法はボールを2個持ち、下側のボールは使わずにいつも上側のボールだけを使います。この方法なら、ボールをまっすぐ上に持ち上げられ、ボールがいろいろな方向に飛び出しません。
CHECK 3
トスは空中に
「放る」のではなく
「置く」
Before
みんなトスを
高く上げようとしていた!
トスが安定しないプレーヤーの多くは、ボールの持ち方の間違いのほか、ボールを持つ左手とラケットを持つ右手が身体の捻転に同期していないと言えます。体幹を使わずに腕や手首を使ってトスアップすると、ボールを放り投げることになって、ボールが加速し、高く上がりやすいです。その上、高く上げようとしていたら乱れてしまいます。
トスを高く上げるとあちこちに散らばるばかりか、高く上げたことによってボールが落ちてくるときに加速してエネルギーが大きくなり、そのボールにラケットをコンタクトさせるのはとても難しいです。
After
トスは低くて十分、
ボールを空中に置く
まず言葉遣いとして、トスは空中に「上げる」「投げる」より、「置く」と言ったほうがふさわしいです。サービスは打点を高くしなければいけない=だからトスを高く上げるは勘違い。ボールを「置く」ようにすれば、ボールを離す位置が高くなり、ボールが加速しないので正確に行えます。その場合、ボールは高く上がらず、低くて十分です。
トスの高さは、インパクト点よりやや上くらいに上がれば十分打てます。トスは低いほうがラケットをコンタクトさせやすいです。身体の捻転に合わせて両肩、両腕を同期させて、ゆっくりと低く上げましょう。
CHECK 4
トスで手首や肘は
使わない
Before
手の甲、肘が下向きは、
手首や肘の関節を使いやすい
CHECK2のボールの持ち方のところにも関連しますが、手のひらにボールをのせる人は、手の甲、肘が下を向き、そうすると手首や肘を曲げて、ボールを放り上げる傾向があります。身体の捻転を使わずに、腕を振ります。このトスは加速しやすく、あちこちに散らばりやすいです。
After
手の甲、肘を横向きにすると
手首や肘が曲がらず、
まっすぐトスアップできる
CHECK2のボールの持ち方のところにも関連しますが、手の甲を横に向けると、肘も横を向きます。そうすると関節がちょっと“ロック”した感じになり、腕を体幹のひねり戻しに合わせて、ゆっくりと安定して上げることができます。(右利きの場合)左腕は(身体のひねりに合わせて)横方向から、斜め前方向へ上がります。身体の捻転に同期していれば、腕はリラックス状態が保て、最後に加速させることができます。
CHECK 5
クローズドスタンスで
ラケットヘッドを
斜めに向けて
〈スイッチ〉をつくる
Before
クローズドスタンスの
身体の向き(斜め向き)
では不十分
順調にサービスを覚えてきたと思われた最後に、ここでミスをおかしやすいです。コンチネンタルグリップで握り、クローズドスタンスで構え、身体をリラックスした状態にしたときに、クローズドスタンスに合わせた横向きになります。その横向きのままでは、身体にひねりがなく、多くの方が身体の捻転なしで、体幹を使わずに腕のスイングだけでトスアップをしようとします。腕のスイングで上げるトスアップは安定しませんし、身体にひねりがないと手打ちになり、スピンもかからず、一番いいエネルギーが発揮できません。
After
クローズドスタンスで
身体を正面に向けて
そこからひねる
そこでクローズドスタンスで構えたら、(右利きの場合)ラケットヘッドをネットポールのある左端のほうへ向けるように構えます。そうすると胸が打球方向を向き、身体にひねりを感じるはずです。これを〈スイッチ〉と呼びましょう。そして「スイッチON!」で、ひねりを戻します。体幹の動き(ひねり戻し)に両肩、両腕が連動すると、トスアップとテークバックがスムーズに行われます。このような「スイッチON!」の動きはプロも行っていることで、ぜひみなさんに真似てほしいです。
参加部員 Interview
「イースタンからコンチネンタルへグリップチェンジしました。そうしたら、振れば振るほどサーブが入るんです!」
Q 自己紹介と参加のきっかけを教えてください。
A テニスを始めて4、5年になります。以前に軟式テニスをずっとやっていました。軟式から硬式に転向して、勉強していくうちに、軟式に取り入れられる技術があるなと思っていました。サービスに関しては難しくて、軟式と同じ打ち方をすると入らない。それで先生の本を読みました。今回の部活はテニマガ・テニス部のメルマガを見て参加しようと思いました。
Q 練習の成果はいかがでしたか?
A 参加して最高に良かったです。本で読んだだけではわからなかったことがわかって本当に良かった。一番勉強になったのはコンチネンタルグリップです。私がコンチネンタルだと思っていたグリップはイースタンでした。
それを今回教わって、もっとバックのほうにグリップを回して練習したのですが、練習の最後のほうで行った、正面を向いて(オープンスタンスで)打つとボールが左下へいって(写真)、次に向きを変えて(クローズドスタンスで)打つとボールが正面下にいって、最後に向きを変えて、上を向いて打つとスピンサービスになるという練習がありましたが、あれをやって腑に落ちました。振れば振るほどサーブが入るんです。これが言われていたことか、そういうことか! になりました。
「いろいろな練習をやっていく中で、あるとき動きがしっくりきました」
Q 練習の後半になって成果を感じている様子が見られましたね。
A テニスを始めて3年目、スクールに通っていますが、サービスの身体の使い方に違和感を感じていました。身体の使い方、特に関節の動きがぎくしゃくしていて、自分にしっくりきていなかったのです。それが今回参加して、時間をかけていろいろな練習をしていったら、運動連鎖が感じられました。ラケットが走るようになった気がします。しっくりきたという感じです。
試合に出るのが楽しくて、ただ、出れば出るほど優勝したいなと思うようになりました。優勝を100点とすると、自分はまだ5点か10点で、入り口にいるくらいです。サービスの完成度はまだまだですが、サービス練習をする楽しさは感じています。(4時間のレッスンでしたが)あと1時間くらい練習したい気持ちです。
「(打法は一つでよく)、ちょっと当て方を変えれば回転もコースも変わると教えてもらいました」
Q どういうことを学びましたか?
A 自分で課題のひとつだと思っていたのがトスで、トスが上手に上げられないなと思っていました。トスをよくするための具体的な方法を教わってよかったです。ボールの持ち方を変えるなど、ちょっとしたところの修正で大きく変わるということを実感しました。
迷ったのはトスの高さで、トスを低くしたほうがいいということは、わからなくはないですが、タイミングがわからず、今は忙しい感じがします。でも、低くしたほうが無駄な動きを省けるという感じはわかります。
いつもはスピン気味のサービスを打っていて、スライスサービスをマスターしたいと思っているのですが、先生が、ちょっと当て方を変えるだけで打てる、別のサービスじゃない(一つのサービスでよい)と言われて、それがとても勉強になりました。
今の打ち方をベースに、ちょっと当て方を変えれば回転もコースも変わるということはわかりました。本当はもっと滑らせたい(スライスを打ちたい)のですが、それはまだこれからの課題です。ただ、タイミングがズバッと合ったときに、ボールが切れていくことが2、3球あって、この感じがほしいと思いました。
参加部員のみなさん
お疲れさまでした!
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