1限目_鈴木貴男プロ&岩渕聡プロのダブルス強化練習会「センターセオリーが鉄則なんです!」

2015年7月18日(土) 開催の第30回テニマガ・テニス部「夏季特別集中レッスン|1限目」は、デビスカップ日本代表でダブルスペア歴代最多勝利を誇る鈴木貴男プロと岩渕聡プロ。日本最強ペアによるダブルスレッスンのテーマは「センターセオリー」。【2015年10月号掲載】

構成◎編集部 写真◎BBM 協力◎亜細亜大学テニス部

夏季特別集中レッスン|1限目|ダブルス強化練習会

講師◎鈴木貴男

すずき・たかお◎1976年9月30日、北海道生まれ。堀越高校を卒業後の95年4月にプロ転向。世界レベルのサーブ&ボレーを武器に活躍。全日本選手権を3度制し、ツアーでは98年ストックホルム、01、06年ジャパン・オープンでベスト8をマーク。99年全豪オープン、03年ウインブルドン2回戦進出。日本のデ杯単複歴代最多勝利を記録(41勝)。岩渕聡とのダブルスペアでも最多9勝を挙げた。世界ランク最高102位(98年11月23日付)

講師◎岩渕 聡

いわぶち・さとし◎1975年10月7日、神奈川県生まれ。柳川高校を卒業後の94年4月にプロ転向。強力なフォアハンドを持ったレフティー。全日本選手権を2度制し、ダブルスでは歴代トップの8度の優勝を果たす。09年11月に引退し、現在はルネサンスに所属し、ヨネックスのアドバイザリースタッフ、明治大学テニス部の強化コーチ。世界ランク最高223位(03年10月20日付)

LESSON 1|テリトリーを知ることから始めよう

テリトリーとは? ダブルスを始める前のベーシックな考え方を確認

岩渕 テリトリーとは、各々のプレーヤーがカバーすべき場所のことを言います。プレー中はポイントが途切れるまで、それぞれのプレーヤーがそれぞれのテリトリーをカバーし続けると考えてください。これが、今回のレッスンのスタートです。

 気をつけることは、「ボールがどこにあるか」。相手がボールを打つ場所からテリトリーはV字に広がり、狙えるコース(角度)が決まるということです。そのテリトリーの真ん中をカバーします。

 テリトリーの中を前進し、ネットに近づくほど、そのプレーヤーがカバーする範囲は狭くなり、角度がつく前にボールが打てます。反対にベースラインに下がるほど、カバーする範囲は広くなり、つまり、ボールに角度がつきやすくなります。

 ダブルスは決してコートの半分ずつを均等に守っているわけではありません。ボールの位置は刻一刻と変わり、それに合わせてプレーヤーはポジショニング(テリトリー)を調整し続けます。

相手に「センターに簡単に打たせない」
それぞれのプレーヤーの立ち位置をチェック

テリトリーの考え方は世界的に著名なルイ・カイエ氏(イラスト参照)が指導するもの。本誌でも定番の指導方法。テリトリーは後ろに下がるほど広くなり、ネットに近づくほど狭くなる(つまりボレーが簡単になる!)

Check! Point

4番目のプレーヤーも

鈴木 レシーバー側の前衛というのは、1番サーバー、2番レシーバー、3番サーバー前衛の次の4番目以降しかボールに触ることができない役割です。ボールに触らずポイントが終わることも少なくありません。

 しかし、この人にも大事な仕事があって、どこに立つかによって相手のプレーの選択に影響を与えることができます。その仕事は、サーバー側前衛が打球したときに備え、テリトリーをカバーすることです。

 ほとんどの場合、サービスボックスの真ん中ではなく、センター寄りとなります。そうするとレシーバーは、リターンをストレートへ打ってもカバーしてもらえるという安心感をもってプレーできます。また、相手前衛はボレーを打つ際に、センター付近に4番目のプレーヤーがいるため打ちづらくなり、レシーバーチームは予防線をはることができるのです。

岩渕 サーバー側前衛がボールに触らないと判断したら、レシーバー側前衛はテリトリーを調整(立ち位置を調整)してください。

相手プレーヤーが少しでもサイドに寄ると、ストレートを抜かれないようにとサイドに寄る前衛が多いが、そうすると写真を見ての通りセンターが空いてしまう。鈴木プロがいる場所と比べるとその差は歴然。テリトリーの真ん中をカバーすると、相手のプレーの選択肢を狭めることができるのだ

ダブルスは真ん中を守る、攻める

LESSON 2|ダブルスは真ん中を守る、攻める

「ダブルスはセンターセオリー」と言われる理由

岩渕 今回の大きなテーマはテリトリーを理解して、「2人の真ん中を守る」こと、そして「相手2人の真ん中にボールを集めてサイドを空ける」ことをします。すなわちセンターセオリーを徹底します。

 相手にアングル(ワイド)やストレートを狙われるとその印象が強く残って、それ以降はアングルやストレートを気にするようになり、サイドを固めるということをしてしまいがちです。それによって真ん中が空いてしまうということがよくあります。

 しかし、1ポイント抜かれたくらいで気にしないことです。それよりパートナーとともに絶対にカバーしなければならないのは、センター(2人の真ん中)。センターが手薄になることのほうが、1ポイントの失点では済まずダメージは大きいといえます。

鈴木 テリトリーをカバーしていれば、サイドのボールは必ず取れるんです。万一、抜かれることがあったとしてもそれは相手のスーパーショットのはず。何度も成功するようなものではないので、気にしないことです。

 サイドを抜かれると3ポイントくらい取られたような気持ちになるのかもしれませんが、ただの1ポイント。このメンタルがとても大切です。それより本来カバーすべきセンターを抜かれる、そのほうが問題です。テリトリーを意識して、センターをしっかり固めましょう。

岩渕 それぞれがテリトリーの真ん中をカバーすると、2人にとっての真ん中も守りが固くなります。そうすると相手は打つ場所がないと感じて、ボールを沈めようとしたり、無理にサイドやアングルを狙おうとするので、ミスを誘うことができます。

このセンターでバックハンドを打つプレーヤーに対する鈴木プロと岩渕プロのテリトリーを見てみよう。2人はセンターラインに近い陣形となる。サイドにボールがきても手を伸ばせば取れるという考えであり、相手の立場で両プロを見ると、打つところがないように見えるだろう

Q センターを固めていく中で出た質問

見るからに守りが固く見える2人に対して、対戦相手の立場になると打つところがないと怖さを感じて、サイドに逃げたり、ロブを上げてしまいそうです。

鈴木 一発でエースを取ろうと考えすぎだと思います。怖がらずに真ん中に打って、ミスをさせられる可能性を探ります。

岩渕 このような状況で僕がベースラインにいてバックハンドを打つなら、間違いなく真ん中に打ちます。ど真ん中か足元、または体にぶつけるとか、僕のような左利きが相手ならバックボレーを打たせたりして、それによってミスを誘うのです。

 なぜ真ん中に打つのかというと、サイドアウトのミスをしないで済むからです。そして、相手のボールが浮いてきたところを貴男が決める、という戦術を僕は選びます。センターが固いからサイドに打つというのは余裕があるときのみで、オプションにすぎません。

鈴木 ロブの話もしておきましょう。ロブが上がることは十分考えられます。ロブが上がったら頭上に上がったほうのプレーヤーが自分で対処することが基本です。

 サービスラインを越えるところまで素早く下がればほとんど取れます。ベースラインに落ちるようなロブだったら相手のスーパーショット! またはボールをバウンドさせて返せばいいんです。

 一番よくないのは「お願い!」と言ってサイドチェンジをし、パートナーにカバーしてもらうこと。男子ダブルスなら恥ずかしいと思ってほしいくらい(笑)。メンタル的には「自分のところにロブが上がってラッキー!」と思ってください。

 自分たちの陣形を簡単に崩さない(崩されない)ことです。ロブが上がって、パートナーはお願いされることがない、となれば、次のポジショニングに集中できます。

ダブルスのサービスについてアドバイス

LESSON 3|ダブルスのサービスについてアドバイス

ポジショニングをていねいにスピードよりもスピンを重視して

鈴木 ゲームをするための準備として、ダブルスのサービスについてアドバイスしたいことがあります。サービスは日頃の練習、試合前のウォーミンブアップのときから、常に「自分のサービスを知る」ことを心がけてください。何気なくボールを打って終わりにしないこと。おかしいと感じたことを修正することを心がけましょう。

 特に多いのがサービスラインばかり気にして、入ったか入らないか、それだけをチェックすることです。もっと周囲を感じてほしい。センターライン、サイドライン、ネットに、相手のいる風景も意識してほしいんです。

岩渕 デュースサイド、アドバンテージサイドとも練習し、構えるポジションももっとていねいに調整しながら練習します。レシーバーに、どこでどのように打たせるかを考えて打ち、結果がどうなったかまでチェックすること。それに対して次に修正を加えていくことを繰り返します。

鈴木 スピードよりもコントロールを重視してください。センター、ボディ、ワイドとコースを狙えるようにしていき、ここ!というときこそ狙うのです。相手をセンターに動かしてバックハンドリターンを打たせたいとき、そのためにはどのようなボール軌道が必要かをイメージしましょう。

 ネットのどのあたりを通せばセンターにボールが落ちて、相手を動かすように弾んで伸びるのかを考えるべきです。それを考えていくと、どこからサービスを打つべきか(ポジション)もていねいに考えるようになります。

 そのイメージを持たず、レシーバーのことも考えずにサービスを入れる(落とす場所)ことばかり考えているプレーヤーと比べると、サービス力の差は明らかだと思います。

サービスを打つときは、レシーバーにどこでどのように打たせるかを思い描いて、ポジショニングし、回転、速度を選ぶ

大前提としてサービスは相手に読まれないこと。だから各コースに打てるようにする。レシーバーにどこでどのように打たせたいかを考えて、そこにボールをコントロールするために必要なボール軌道をイメージしてポジショニングし、回転、速度をコントロールする

サービスはボールが落ちる場所よりレシーバーに対する効果を最優先すべき

岩渕 ワイドに打ちやすいことを理由に、ワイド寄りにポジショニングして打つサーバーがいます。意図的にレシーバーをワイドに動かしたいとき、雁行陣でクロスラリーに持ち込みたいときにそれをするならよしとしても、常にそれしかしなければ、①レシーバーにサービスのコースが読まれてしまう、②センターに打ちづらく、センターに打つとレシーバーのボディに近づいていくため大きく動かせない、③サーバーとパートナーの間(真ん中)が大きく空いてしまうなどのマイナス点が目立ちます。

 ゲームに勝つためには、サーバー側はレシーバーにどこでどのようなリターンを打たせてポイントを取るかを考えて実行に移すことが重要であり、レシーバーにサービスを読ませずミスを引き出すことは、最初に考えるべきことだと思います。

鈴木 サービスは大雑把ではいけません。細かい修正が必要なショットです。なぜならストロークはコート全面を使え、コントロールミスをしても許される範囲が広いですが、サービスはそれと比べると非常に狭い範囲にコントロールしなければなりません。だからていねいなポジショニングが必要ですし、スピードよりもスピンを重視してていねいに打つことが大切です。

ストレート、ワイドは思うほど抜けない

LESSON 4|ストレート、ワイドは思うほど抜けない

よいダブルスはシングルスコートでプレーしている!?

岩渕 ここまでレッスンを進めてきて、おそらく感じられることだと思いますが、よいダブルスほどシングルスコートでプレーしていると言ってもいいくらいで、サイドをあまり守りません。コートに2人もいて、その2人がよいポジションについたらサイドは非常に狭いエリアとなり、抜かれるわけがないのです。

 だから、サイドを抜かれるかも、という意識ではなく、抜けるものなら抜いてみろ!のメンタルを持ってほしいと思います。

鈴木 下の写真は相手後衛がサイドから打球するときの、前衛2人のポジショニングを説明しています。相手がサイド寄りから打球するときは、ストレート、またはアングルへ打ってくるかもしれないと気にする人もいるでしょうが、ここで僕らがやるべきは、それぞれがテリトリーの範囲をカバーし、真ん中を固めることです。

 もしも相手がサイドからストレートへ、またはワイドにボールを打ってきても、テリトリーの範囲で手を出せばほとんど取れます。特に、ワイドのボールは回転をかけてスピードを落とさない限り入らないので、(時間があるボールのため)頑張れば取れます。しかし、頑張っても取れないボールなら、それはテリトリーの外であり、相手のスーパーショットです。気にすることはありません。

 テリトリーを前進するとカバーすべき範囲が狭くなり、ボレーが簡単になることをここでもう一度思い出しましょう。その2人の真ん中が固まっていると、相手は打つところがないと感じて無理にストレートやワイドを狙い始め、ミスを誘うことにつながります。ところが、2人がコートの半面ずつをカバーするという考え方をもっていると、おかしなことになります。

ボールがサイドにいくと、プレーヤーもサイドに寄る傾向があるが、これをすると真ん中が空く。またサイドをケアしすぎるとセンターのボールに触れなくなる(ポーチに出られない)状況に陥る

それぞれのプレーヤーは、それぞれのテリトリーをカバーすればよい。その中で、たとえサイドに打たれることがあっても、そう簡単に抜けることはなく取れるもの。センターを固めるからこそ、相手はサイドに無理に打ってミスをする。一方で、センターにくるボールはテリトリーの範囲だから、確実にボレー(ポーチ)できるはずなのだ!

参加者のみなさん。当日はあいにくの雨模様で、中盤までは大きく動くことができず残念でした。終盤から晴れ間が見え、レッスンは延長。その間、鈴木プロと岩渕プロは自身の経験談や技術を披露し、様々なテニスのアプローチを試みてくれました(編集部)

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