韓国発のRising Star!_イ・ダクヒ_インタビュー
韓国の男子はチョン・ヒョンなど、若手の実力者が揃う。その中でチョンと人気を二分するのが、18歳のイ・ダクヒだ。先天性の聴覚障害を持つ彼は、14歳からプロの世界に身を置き、いまや世界ランク135位(2017年3月時点)、韓国の2番手に位置する成長株である。韓国発のライジングスターを慶應チャレンジャーで直撃した。【2017年5月号掲載】
インタビュー&写真◎中野恵太 取材協力◎韓成民(慶應義塾大学硬式庭球部)
Profile
イ・ダクヒ◎1998年5月29日生まれ、韓国・堤川市出身。7歳のときにテニスを始め、14歳でプロ転向。すでにフューチャーズ10大会で優勝し、現在は主にチャレンジャー大会、ツアー大会予選に挑戦。2016年には韓国のデビスカップ代表に選出される。グランドスラムは予選に4度挑戦していまだ突破ならず。ATP世界ランク単135位、複709位(2017年3月6日現在)
関心を持ってもらえるのはとてもありがたいこと
――これまで何度も来日していますが、初めて日本に来たときのことを憶えていますか?
「おそらく13歳で出場した兵庫県のジュニア大会だったかと思います(兵庫国際ジュニアトーナメントⅡ)。よく憶えている大会は14歳で出場した茨城県のトーナメント(筑波大フューチャーズ)。この大会で初めてシニアの試合に勝利してATPポイントを獲得しました。よい思い出です」
――全世界から注目を集める環境にも慣れましたか?
「そうですね。僕は耳が聞こえないこともあり、小さい頃から多くの人に関心を持たれる立場だと理解しています。それが嫌だと思いませんし、人から注目されることはよいことです。常に多くの人から期待され、その支えが僕の力となっています。人々に関心を持ってもらえることに対して感謝の気持ちでいっぱいです」
――日本でプレーする際も応援は感じますか?
「日本の大会は日本人との対戦も多くなるので、そのときはさすがに感じませんが、仕方がないことだと思います(笑)。ただ、注目されている実感はあります」
――聴覚障害についてですが、プレーへの影響はありますか?
「ないとは言い切れません。特に、試合では不便に感じることがあります。イン・アウト、レットの判定の声が聞こえないので、判断が遅れることもあります。ただ、プロになると決めたときに覚悟したことなので、今は気にしていません。トップを目指すためにその問題は、自分の力で乗り越えるつもりです。プレー中は“それ以外”の部分に集中しています」
――“それ以外”とは?
「相手の動きや打球に対してです。とはいえ、動体視力がすぐれていると思いませんし、ほかの選手たちと変わりません。音が聞こえないからこそ、視界に入るものによりフォーカスし、試合に集中できるのではないかと思っています」
今シーズンから本格的に世界へ
――改めて、プレースタイルを教えてください。
「基本的に攻撃的なプレーが長所で、その中でもフォアハンドが武器のひとつだと思っています。7歳からテニスを始めたのですが、当初から得意だったわけではなく、シニアの大会に勝ちながら経験を積み重ねた結果、自分のフォアハンドが強みであることに気づきました。今は、フォアハンドを軸にプレーしています」
――これまでアジアを中心に活動してきましたが、今年からハンガリーやフランスの大会にも出場しています。
「ヨーロッパはアジアよりも強い選手が集まるので、今年からさらに高みを目指してトライしています。ただ、これまでどおりアジアの大会にも出ます。出場できる大会には、どの国でも出るつもりです」
――ヨーロッパの選手と戦う機会も増え、戦術面での変化は?
「やはり身長が高く、力強いサービスで試合を進める選手が多いので、以前よりも自分のサービスに集中するようになりました。ブレークのチャンスも減るので、自分のサービスをキープすることが重要だと身をもって感じています。あとは、とにかくリターンを返すことです。そうすれば得意のラリー戦に持ち込めますし、ヨーロッパの選手が相手であろうと打ち勝つ自信と手応えはあります」
――プロ転向から4年が経ち、世界ランキングも135位に到達しました(2017年3月6日付)。この結果に満足していますか?
「プロ転向から目標にするトップ100に届いていないので満足はしていませんが、焦りもありません。このまま努力を続ければ、(トップ100入りは)達成できると思っています」
――トップ100入りが今年の目標になりますか?
「一番の目標はそうです。ただ、最終的にはもっと上。トップ20、トップ10に入って、錦織圭選手のように有名な選手になりたいと思っています」
――今後、錦織選手との対戦もあると思いますが、試合に勝つイメージはありますか?
「正直にいうと、今の実力では難しいと思います。一方で選手として負けたくない気持ちもあるので、もし対戦できるのであれば、普段どおりに試合に集中し、後悔のないプレーを心がけて試合に入るでしょう。自分らしさが出るような、攻撃的なプレーで錦織選手と真っ向勝負がしたいです」
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