数あるスポーツを抑えて第1位に「テニスで〈延命〉が証明された⁉」
身体を動かすことが、病気のリスクを下げ、健康長寿につながることは、もはや常識です。近年は、数ある運動種目の中で、何がもっとも「健康・延命効果」を期待できるかが検討されてきました。【テニスマガジン2019年5月号掲載】
文◎井出ゆきえ(医学ライター) イラスト◎サキ大地
2016年に英国のスポーツ医学専門誌に発表された英国在住の成人男女、約8万人(平均年齢52歳)を対象とした調査では、ランニング、ジョギングなど健康増進の王道とも言える「有酸素運動」を抑え、テニスやスカッシュ、バドミントンなどのラケット競技が、もっとも死亡リスクを抑えるスポーツであることが示されています。
さらに詳しく見ると、テニスなどのラケット競技は、まったく運動しない人より、心筋梗塞などで死亡するリスクを56%も減らすことが判明したのです。
昨年、米国の医学専門誌に掲載された「コペンハーゲン心血管研究」からは、運動種目の「延命効果」が報告されています。同研究では、1991年10月〜94年9月に登録した中高年の男女、8577人の25年分の健康データから、余暇に楽しんでいる運動と寿命との関係が検討されました。
対象種目は①ジムでのフィットネス(トレッドミルなど器具を使った運動など)、②自重による筋トレや体操──いわゆる徒手体操、③ジョギング、④水泳、⑤サイクリング、⑥サッカー、⑦バドミントン、そして⑧テニスの8種目でした。
その結果、テニスをしていた人の平均寿命は「運動不足」の人よりも、平均9.7年間長いことがわかったのです。
テニスに次いで延命効果が高かったのはバドミントンで、平均6.2年、次いでサッカーが4.7年と続きました。意外なことにジョギングは3.2年、もっとも延命効果が低かったのはフィットネスで、1.5年にとどまりました。
研究者は「上位に入った種目はいずれも、2人以上のプレーヤーと楽しむものでした。仲間に属しているという社会的幸福感や精神的な安定感が延命に寄与したのでは」と考察しています。
もう一つ、テニスなどのラケット競技には、高強度のパフォーマンスと不完全休息を交互にとる「高強度インターバルトレーニング(HIT)」の要素がある点もポイントです。
HITには、血液を全身へ送り出す心臓の機能や最大酸素摂取量、つまり持久力の改善に効果があることが知られています。近年は、ゆったりペースの有酸素運動に変わって、心臓手術後や慢性心不全患者のリハビリテーションに取り入れられ、社会復帰に一役買っています。
このほか、血糖をコントロールする「インスリン」の働きを改善する効果も知られています。
もちろん、私たちがテニスを選ぶ理由は何よりも「楽しい」から。おまけにもっとも健康にいい種目というお墨付きがついたのですから、鬼に金棒(鬼にラケット?)ではないでしょうか。
加齢とともに心疾患リスクが高まるシニア層にとって、テニスは楽しくて頼りになるベストスポーツといえそうです。
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