デビッド・マクファーソンInterviewこぼれ話「ブライアン兄弟との11年間」【本誌連動記事】
テニスマガジン2019年8月号(6月21日発売)「ダブルス特集」ブライアン兄弟、フェデラー&ワウリンカを頂点に導いたダブルスの名コーチにデビッド・マクファーソンにインタビュー「より良いダブルスをプレーする方法を教えよう! [後編] 」記事のこぼれ話です。本誌記事の続きで、ブライアン兄弟との11年間について語っています。(テニスマガジン編集部)
テーマ19|ブライアン兄弟との11年間
「彼らは私からベストを引き出した。彼らが私に多くを教えてくれ、よりよいコーチになることができた。
Q ボブとマイクのブライアン兄弟は、あなたがコーチをしているときに多くを学び、大いに上達しました。彼らを11年教えたことから、あなたは何を学びましたか?
A 彼らは私からベストを引き出した。彼らの真剣さ、献身、プロ精神、そして窮地の中でさえ何がなんでも勝とうとする意欲と、勝ちをもぎ取る能力は、私に多くを教えてくれたよ。私はよいプレーヤーだったと思うが、偉大なプレーヤーではなかった。しかし彼らとともに働いたおかげで、よりよいコーチになることができた。
ダブルスは、こうも戦術的であり、同時に相手の戦術を挫くことを要求されるゲームだ。彼らは、私がそれを別のレベルに高める手助けをしてくれた。私は、彼らの対戦相手がどこにサービスを打ってくるかを予測しようと努めなければならなかった。例えば、どのような確率で、相手が左利きのボブのフォア側を狙いセンターにサービスを打ってくるか、どれくらいの確率でバックハンドを狙いワイドに振ってくるか? そして、相手がバック側を狙って彼をワイドに振ったとき、相手のネットプレーヤーはライン際をカバーするのか? それともロブを警戒するのか? 右利きのマイクがバックハンドを打つとき、相手はどれだけ頻繁にポーチしてくるのか?
対戦相手がブライアン兄弟のテニスを混乱させ、妨害しようと努めるために何をやってくるかについて、予想すべきことは山のようにある。私はゲームプランをつくり、選手たちとそのことについて話すんだ。それからひとたび試合が始まったら、彼らはそれらの情報を使い、かみ砕いて、もし完璧に機能していなかったら、ときに調整し適合させるという作業を行う。そこは彼ら次第なんだ。
Q ゲームプランを練り上げるのに、統計(スタッツ)を使いますか?
A 私はより自分の目と勘を信頼している。対戦相手が出ている以前の試合のビデオをたくさん見ているよ。私は相手が重要なポイントでどのようなプレーをしているかを見る。
統計も少しは参考にしているよ。全米テニス協会(USTA)は今、多くの統計(スタッツ)を提供してくれ、援助してくれている。私はコーチとしてのキャリアの大部分で、そういったものを手にしていなかった。でもここ数年、私がジョン(・イズナー)のコーチをしていた期間に状況は変わった。
USTAの提供する情報は、選手がフォア側にサービスを打った%、バック側、ボディへの%、などといったことを教えてくれる。それもあって、かつてよりもそういったデータを使っているよ。過去には、私はただ観客席に行って、ブライアン兄弟の対戦相手を観察しメモを取って、それから試合展開と、勝つためには何が必要かをイメージし、視覚化して予想しようと努めていた。
Q ボブとマイクは41歳になりました。彼らはふたたびグランドスラム・タイトルを獲る力があるでしょうか。
A 私は心からそう信じている。彼らはマイアミのマスターズで、多くの素晴らしいチームを倒してタイトルを獲り、ふたたびベストのテニスをプレーし始めたところだ。
ダブルスは本当に楽しい!
Qもちろん、皆が勝ちたいと思っていますが、シングルスと違い、ダブルスは勝とうが負けようが、概して非常に楽しいものです。ダブルスをこうも楽しいものにしている要素は何だと思いますか。
A ダブルスでは仲間、パートナーがいる。選手は好きな誰かといっしょにプレーしており、そこにある相互作用、ふれ合いを楽しむ。シングルスは孤独なスポーツだ。選手はコートの上にたったひとりでいて、話し合ったり、励ましてくれたりする者はいない。もちろん、あまり気の合わない誰かと組んでプレーしていたり、互いに責め合ったりして、ポジティブなエネルギーを与え合っていなければ、悲惨な経験ともなり得る。でもいいエネルギーをお互いに与え合い、支え合い、友情とコミュニケーション、チームワークを楽しめば、ダブルスは本当に楽しいものとなるんだよ。
よくプレーされたダブルスでは、シングルスよりも多くの面白く壮観なポイントが目にされる。4人のプレーヤーが非常にスピーディーなラリーの応酬をしているんだからね。ブライアン兄弟の一連のポイントのハイライトは、実に壮観で見ごたえがあるよ。男子テニスではサービスが強烈になりすぎたとき、ポイントが短くなるすぎる傾向がある。でも非常によくプレーされたダブルスの試合ほどエキサイティングで魅力的なものは、そうそうないんだよ。
David Macpherson
デビッド・マクファーソン◎1967年7月3日生まれ、オーストラリア・タスマニア出身。アメリカ・フロリダ在住。プロ転向は1985年。2004年現役引退。ATPダブルス最高11位(1992年11月)。インディアンウェルズ優勝を含め、キャリア通算16勝。2005年以来、ボブ&マイクのブライン兄弟を指導。16のグランドスラム・ダブルス・タイトルのうち15回の優勝に貢献、五輪金メダル、マスターズ優勝39回、総じて10シーズンの年末ダブルス・ランキング1位の座に導いた。また2014年にはデビスカップ優勝を果たしたスイスのロジャー・フェデラーとスタン・ワウリンカのコーチも務めた。その年、ワールドチーム・テニスの最優秀コーチに選ばれている
※テニスマガジン2019年7月号[前編]、8月号[後編]にデビッド・マクファーソンのロングInterview掲載。ダブルスの名コーチがダブルスを大いに語っています。
※写真◎小山真司、Getty Images
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