「若い選手が“ビッグ3”に追いつけない理由を教えよう」ジョコビッチのコーチを務めるイバニセビッチ [オーストラリアン・オープン]

ATPカップのセルビア対カナダ戦を見守るイバニセビッチ

今年最初のグランドスラム大会となる「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・ビクトリア州メルボルン/本戦2月8~21日/ハードコート)の男子シングルス決勝で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第4シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)を7-5 6-2 6-2で下し、2度目の3連覇と自身の最多記録を更新する9度目の優勝を果たした。試合時間は1時間53分。

 2019年6月よりジョコビッチのコーチを務めるゴラン・イバニセビッチ(クロアチア)が決勝戦を振り返るとともに、ジョコビッチの置かれていた状況について、またメドベージェフら若い選手たちがビッグ3に追いつけない理由を語った。

「ダニールは20連勝中で、おそらく今大会に出場している選手の中で最高のプレーを見せていた。それに対してノバクは落ち着いて戦術的によく戦った。特にカギとなるサービス、リターンが非常によかった。彼のサービスはアグレッシブで、その素晴らしい戦いぶりにダニールは第2セットで自分を見失った。どこかへ行ってしまったんだ」

 大会を勝ち上がる中でポイントになった試合を2つ挙げた。

「今大会を勝ち抜くポイントになった試合は、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)戦とアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)戦だ。その後どんどんよくなり、決勝はマスターピース。信じられないほど素晴らしいパフォーマンスだった。このコートで一度も負けなかった」


ジョコビッチ陣営。左からマリアン・バイダコーチ、フィジオテラピストのウリセス・バイド、ゴラン・イバニセビッチコーチ

 昨年のUSオープンで怒りに任せて線審の首元にボールを打って失格となってから、厳しい批判にさらされ続けてきたという。

「ノバクはこの優勝が絶対に必要だった。多くのメディアや人々からの批判にさらされ、あまりに不公平な状況だった。昨年のUSオープンでの失格に続き、ロラン・ギャロスの決勝も悪かった。この大会でも42日間隔離された生活を送り、簡単ではなかった。そして選手たちのためによりよい環境でプレーできるように提言したのに、またもや批判を浴びることになった。ほかに攻撃する相手がいないからか、皆がノバクを批判する空気になっている」

 ケガを乗り越えるのも大変だったが、ケガを疑う声もあったことに少なからずショックを受けた。

「腹部のケガのことを最初に聞いたとき、私も不安になった。だが、“このケガは本当なのか?”と疑う人までいた。この痛みに耐えられない選手もいるが、ノバクは耐えられたんだ。批判とケガによる苦しい状況を抜け出すのは簡単ではなかった」

 ラファエル・ナダル(スペイン)とロジャー・フェデラー(スイス)の持つグランドスラム優勝20回に追いつくのに重要な勝利だったという。

「今大会の決勝のような試合のために彼は日々練習している。これでグランドスラム18度目の優勝だ。ラファやロジャーの20回に追いつき、追い越すには優勝する必要があった。テニス選手としての偉大さを世界に証明した。ラファがフレンチオープンなら、ノバクはオーストラリアン・オープンだ。ラファは間違いなく、あと1度、あるいは2度フレンチオープンを獲るだろう。ノバクはウインブルドンとUSオープンの優勝候補となって、勝ち続けないといけない」

 ビッグ3がなぜ年齢を重ねても成長し続け、若手の追随を許さないのか、独自の見解を語った。

「ノバク、ロジャー、ラファはお互いに刺激し合い、助け合って成長している。自分のテニスに何か新しいものを加えることを恐れない。新しいことを学び、練習で新しいことを試し続けている。若い選手は自分たちが何でも知っていると勘違いしている。彼らはまだ何も知らないし、3人から学ばなければならない。

 フェデラーの記録をナダルとジョコビッチが追い抜くことは確信している。

「3人の競争がどこまで続くかは、まだ分からない。彼らは毎回、より進化したテニスを見せてくれる。有望な若手が出てきているのは確かだが、この3人のほうが今も優れている。もしかしたら、マーガレット・コート(オーストラリア)のグランドスラム24回優勝、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の23回優勝を追い抜くかもしれない。今はロジャーが復帰するのを楽しみに待っている。フレンチオープン、ウインブルドンで何が起きるのか。競争はまだ続くだろう。ラファとノバクがロジャーを追い抜くと数年前に言ったが、今もそうなると信じているよ」


優勝を決めたジョコビッチを称えるイバニセビッチコーチ

 ジョコビッチの今後のスケジュールはまだ何も決まっていないという。

「これから次にどの大会に出場するか話し合う。今はあまり先を見ていない。フレンチ・オープンに出場するのは間違いないが、彼はその前にもプレーする必要がある。可能な限り、ファンがいるスタジアムが望ましい」

 メルボルンのロックダウンで無観客になったスタジアムを「葬式のようだった」と表現したイバニセビッチ。現役時代ファンに愛された彼自身も、やはり観客のいるスタジアムでジョコビッチがプレーすることを望んでいる。(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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