テニス界未来のスター候補、チチパスとズベレフが決勝行きの切符をかけて激突 [フレンチ・オープン]

写真はステファノス・チチパス(ギリシャ/左)とアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)(Getty Images)

今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月30日~6月13日/クレーコート)の大会10日目は、ボトムハーフ(ドローの下半分)の男女シングルス準々決勝各2試合などが行われた。

 ステファノス・チチパス(ギリシャ)とアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)はともに、テニス界の未来のスターと見なされてきた。そしてその双方が、グランドスラム大会のタイトルに近づいてきた。

 20代前半のふたりはそれぞれの準々決勝にストレートで勝ったあと、ロラン・ギャロス決勝進出をかけて対決することになる。これは2008年にラファエル・ナダル(スペイン)とノバク・ジョコビッチ(セルビア)が対決したとき以来、同大会の同種目でもっとも若い準決勝の顔合わせだ。

 第5シードのチチパスは第2シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)を6-3 7-6(3) 7-5で倒して自身4度目、グランドスラム3大会となるベスト4進出を決めた。

「自分がその立場にいることを光栄に思っているし、言うまでもなく自分自身が日々多くのハードワークを積んできたことがここにいることのカギとなる要因だったのだと感じている。でも僕は欲張りだから、まだ満足していないよ」とチチパスは話した。

 グランドスラム大会で2度決勝に進出した実績を持つメドベージェフを相手にチチパスは第2セット4-5からセットポイントを2本凌いだが、それを除けばズベレフが世界ランク46位のアレハンドロ・ダビドビッチ フォキナ(スペイン)を6-4 6-1 6-1で下した試合で要求されたよりも少し余計に労力が必要だっただけだった。この勝利でズベレフはグランドスラム大会では3度目、フレンチ・オープンでは初の準決勝に駒を進めることになった。

 22歳のチチパスがギリシャ人で、24歳のズベレフはドイツ人だ。この2人ともが今年、クレーコートのATPマスターズ1000の大会で優勝を果たした。そして2人はともにテニス界最大の4大会のひとつで勝つことを目指しており、周りからの期待を集めている。

「言うまでもなく、グランドスラム大会は僕たちがもっとも勝ちたいと思っている大会だ。僕は以前、多分ここ2年くらいの間は自分にプレッシャーをかけ過ぎていたんだ。メドベージェフとチチパスが台頭してくる前、僕は突然テニス界を引き継ぐ男と見なされていたからね」とズベレフは語った。

「僕は自分自身にもプレッシャーをかけていたんだ。僕は自分に対してあまり辛抱強くなかったね。今は我慢強くなったと感じているよ。今の僕は多分、状況によりよく対処する方法を学んだのだと思う」

 準々決勝でのズベレフは、カギとなる瞬間にその能力を示して見せた。第4ゲームでダビドビッチ フォキナがショットをオンラインで決めてブレークポイントをセーブしたとき、ズベレフはそれを信じたくないない様子だった。

 ズベレフはレッドクレーについたボールの跡の近くで屈み、繰り返し「いいや!」「どうやって?」などと言いながら主審のアリソン・ヒューズ氏と少し議論した。判定をテレビで放送されたオフィシャルビデオで裏付けたヒューズ氏は意見を変えず、ズベレフは間もなくそのゲームを落とし、その次のゲームも取られた彼は少しの間だけ劣勢に立たされた。

 以前の彼ならば、それは崩壊の始まりになっていてもおかしくはなかったのかもしれない。反対にズベレフは迅速に立ち直ると、残る19ゲームのうち16ゲームを取って試合を支配した。

「恐らく僕は、こういう大会でより落着きを保てるようになっている。でも最終目標は変わっていないよ」

 ダビドビッチ フォキナに対してズベレフは第1セットで3度ブレークされたが、そのあとは一度しかブレークポイントに直面しなかった。

 この大会を予選勝者のオスカー・オッテ(ドイツ)に対して2セットダウンという最悪の形で始めたズベレフは、それ以来セットを落とさず15セットを連取している。

「1回戦のあと、とてもスムーズに進み始めたよ。それについては満足している」とズベレフはコメントした。

 グランドスラム大会準決勝で0勝3敗のチチパスにとって、カギとなる瞬間は第2セット後半に訪れた。今年までフレンチ・オープンで0勝4敗の戦績だったメドベージェフは突然クレーコートでの戦い方を見つけ出し、ある意味でスイッチが入って試合を面白いものにした。実際に彼は非常に進歩し、5-4からの相手のサービスゲームでいくつかセットポイントを握りさえした。
 
 しかしメドベージェフはセカンドサーブに対してお粗末なリターンをしてしまい、続いてフォアハンドをしくじってチチパスが苦境から抜け出すことを助けてしまった。

 スコアは間もなく5-5となり、その15分後にはチチパスがフォアハンドのドライブボレーを叩き込んでセットをものにすると過去6敗を喫しているメドベージェフに対するキャリア2度目の勝利に向けて突き進んでいた。

「正直なところ、最大の違いはサーフェスだ。でもこうは言っても、今回は『僕はクレーコートじゃプレーできない! 何てこった!』なんて言わないよ。ただ彼のショットのほうがクレーコートでは優れていたんだ」とメドベージェフは自己分析した。

 第3セットではメドベージェフが1つブレークして少しの間リードしていたがチチパスは追いつき、それから最後のゲームで一時40-0とされながらブレークした。彼はマッチポイントでメドベージェフがアンダーサーブからネットに出てきたところをパッシングショットで抜き去り、ストレートセットで勝利を決めた。

 メドベージェフは最後の奇策について「まったく効果がなかったね」と言い、チチパスはそれを「非常にミレニアル世代的なショットだった」と呼んだ。(APライター◎サミュエル・ペトレキン/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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