ケニンが世界1位バーティを倒して決勝へ「私は決して諦めなかった」 [オーストラリアン・オープン]

今年最初のグランドスラム「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月20日~2月2日/ハードコート)の大会11日目、女子シングルス準決勝。
 
 彼女にとって初のグランドスラム大会準決勝で2度に渡って第1セット喪失まであと1ポイントと追い詰められても、第2セットを失うまでやはりあと1ポイントという劣勢に立たされても、ソフィア・ケニン(アメリカ)は決して尻込みしない。そして彼女は第1シードのアシュリー・バーティ(オーストラリア)を倒し、21歳にして初のグランドスラム大会決勝に進出した。

 第14シードのケニンはその非常に暑かった木曜日、総計4つのセットポイントをセーブして7-6(6) 7-5の勝利をもぎ取り、地元期待のバーティがオーストラリアに長く待ち望まれていたシングルスでの自国出身のチャンピオンになるという挑戦を阻止したのだった。

 ケニンは今、優勝杯をつかむために元世界ランク1位のガルビネ・ムグルッサ(スペイン)に勝たなければならない。

 ムグルッサは第1セットで4つのセットポイントを凌ぎ、第4シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)を7-6(8) 7-5で振りきった。これは、ともにウインブルドンとフレンチ・オープンで優勝した経験を持つが、オーストラリアン・オープンではそれを成し遂げていない者同士の対決だった。

「私は自分に、『私は自分の力を信じている。もしセットを落としたとしても、変わらず勝てると信じ続ける』と言い聞かせていた」とケニンは試合後に語った。彼女はこれまで、グランドスラム大会で一度も4回戦を超えて勝ち進んだことはなかった。

「ええ、私は本当に素晴らしい仕事をしたと思う。私は決して諦めなかった」

 昨年6月に勝ち上がる過程でケニンを倒した末にフレンチ・オープンで優勝していたバーティはこの木曜日、特にもっとも重要な瞬間にベストの調子には程遠かった。ともすると彼女は、母国のグランドスラム大会で決勝に進出した1980年以来のオーストラリア人女性になるという任務の重さに押しつぶされていたのかもしれない。

「不幸なことに、ラインを超えるには十分ではなかった」とバーティは振り返った。彼女は試合後の記者会見の間、姪っ子を膝の上に乗せていた。「ただ、もっとも重要なポイントで私はよいプレーができなかった。だから勝利をつかむことができなかったのよ」。

 反対にケニンは、2005年のリンゼイ・ダベンポート(アメリカ)以来となるオーストラリアン・オープン決勝に至ったウイリアムズ姉妹以外のアメリカ人女性となった。またケニンは今や、ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)をセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が倒した2002年ウインブルドン以来となるグランドスラム大会で世界1位に勝ったアメリカ人女性ともなった。

「彼女には適応能力がある」とバーティは相手を評価した。「彼女は今現在、非常に自信に満ちてもいるわ」。

 テニスに通じている者はそれを知っている。しかしケニンは、ここ数年の間に脚光を集めていた他の多くのアメリカ人女子プレーヤーの陰に隠れていたのだ。

「ええ、これまで人々が私にあまり注意を注いでいなかったのは知っているわ。私は自分の実力を確立させなければならなかった。そしてそれを今やったのよ」とケニンはコメントした。「もちろん、今は注目を浴びており、そういう状態は好きよ。嘘をつくつもりはないわ」。

 ロシアで生まれ赤ん坊のときにフロリダに移住したケニンは2019年のフレンチ・オープン3回戦でセレナを倒し、WTAツアーの3大会でシングルス優勝を遂げ、ランキングを52位から12位にまで引き上げてトップシーンに浮上した。

 彼女は木曜日まで一度もシード選手と対戦しなかったが、センセーションを巻き起こす15歳のコリ・ガウフ(アメリカ)の進撃を4回戦で止めていた。

準決勝は猛暑の中での戦いに…

 雲がなく太陽が輝く暑い午後、バーティとケニンはロッド・レーバー・アリーナに足を踏み入れた。第1セットでは気温は38度にまで上がった。これは、通常より比較的涼しかったそこまでの1週間半と比べると10度から15度は高い気温だった。

 コートチェンジの際に、バーティはアイスタオルを首の周りに巻いて気を引き締めた。

 プレーヤーとファンたちを心地悪くさせたことに加え、このコンディションがボールを勢いよく飛ばす原因となり、ボールをコントロールすることが非常に難しくなった。これにナーバスさも加わって、バーティとケニンの双方が第1セットにはベストの調子であるようには見えなかった。

 バーティの片手打ちスライスのバックハンドは通常ほど頼りにならず、ケニンの動きとグラウンドストロークは通常の活気を欠いているように見えた。

 1本のフォアハンドウイナーを決めるのに、ケニンは43分をも必要とした。彼女が取った最初の14ポイントのうち11本は、バーティのアンフォーストエラーによるものだったのである。

 あるポイントを失ったあと、ケニンは自分の腿を叩いた。次のポイントで彼女はハイボレーを打ち損ね、ラケットを地面に落とした。観客席では、コーチでもあるケニンの父アレクサンダーが両手を頭に当てた。

 しかしその数時間後に彼はこの大きな勝利を振り返り、次を楽しみにして微笑むことができるようになった。

「我々が決めた基本的プランに忠実に進め、それが機能したようだった」とケニンの父は娘のプレーぶりに満足感を示した。

 初のグランドスラム大会決勝を戦う娘の姿を観るのはどんな感じがすると思うかと尋ねられ、彼はこう答えた。

「そんな経験をしたことは一度もないから、分からないよ。どんなふうか見てみよう」

 第1セットを取るためのふたつのチャンスを手にしたバーティはそれをものにできず、同じことは第2セットでも起きた。

 この勝利でケニンは、WTAランキングで初めてトップ10入りすることを確実にした。そしてあと1勝を挙げれば、それ以上に意味深いことを成し遂げる。それは、自分をグランドスラム・チャンピオンと呼ぶ権利を手に入れるということだ。

「彼女は敬意に値する」と世界1位のバーティはケニンを称えた。「そして、認められるに値するわ」。

(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

※写真はソフィア・ケニン(アメリカ/左)とアシュリー・バーティ(オーストラリア/右)
撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU

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